山と溪谷社は9月20日、堅達京子 + NHK 取材班著『脱炭素革命への挑戦 世界の潮流と日本の課題』(1,760円)を発売する。
欧米では洋上風力発電や太陽光発電が普及し、再生可能エネルギーの電気代が大幅に安くなっている。一方、日本は「2050年脱炭素」に向けて舵が切られたものの、実際には世界の潮流から大きく取り残されているという。石炭に依存した日本の火力発電は、再生可能エネルギーの普及を妨げているばかりか、「RE100」(再エネ100%での事業運営)の実現や、カーボンニュートラルの達成を遅らせる要因にもなっている。
今後、気候危機の進行を食い止めるために、脱石炭への圧力がますます強まり、石炭火力発電所は価値が毀損して投資回収できなくなる「座礁資産」となることが想定されている。欧米ではすでに、石炭・石油からの投資撤退は始まっているという。
EUやバイデン政権に変わったアメリカでは、脱炭素に数百兆円規模を投じることが決定。再生可能エネルギーが最も安い電力となって市場に出回り、自動車のEV化促進政策として、数十万規模の充電ステーションの敷設、2030年代のガソリン車の実質販売禁止、再エネ普及に欠かせない送電網などインフラの整備が強化されている。
国連IPCCの最新の報告書では、このままでは、パリ協定の目標である1.5度に到達してしまう時期が早まるとの警告が出ているという。同書では、水害など温暖化による気候危機の影響が極めて大きい上に、世界の潮流から大幅に遅れている日本が、ピンチをチャンスに変えるために、いま何が必要なのかを解説している。
NHKの番組でも紹介した文明評論家のジェレミー・リフキン氏、アップル副社長のリサ・ジャクソン氏、前ユニリーバCEO ポール・ポールマン氏、慶應義塾大学の安宅和人教授へのロングインタビューに加え、『人新世の「資本論」』著者の斎藤幸平氏が問いかける資本主義のありようについても論考。脱炭素をめぐる世界の潮流と日本の課題を、わかりやすく解説した。
内容は、「なぜいま、グリーンリカバリーが必要か」「なぜ金融界は変わったのか カーボンバジェットのリアル」「深刻化する気候危機 迫り来るティッピングポイント」「日本は追いつけるのか? ビジネスの現場を追う」「重厚長大も変化 産業界が挑むカーボンニュートラル」「ファッション・食料システム・建築 〝衣食住〟の挑戦」など。