結婚や妊娠、引っ越し、転職などの理由によって会社を辞めなければいけない場合、自己都合で退職しなければなりません。また、会社からの依頼にもかかわらず、自己都合退職として扱われてしまうようなトラブルも発生しています。今回は、自己都合退職についての説明やメリット・デメリット、申請方法などについて解説します。

  • 自己都合退職とは?

    自己都合退職について解説します

自己都合退職とは?

自己都合退職とは、結婚や転居、病気や介護など、個人的な理由によって退職をすることをいいます。自己都合退職というと馴染みのない人もいるかもしれませんが、一般的な退職と同義です。

自己都合退職のメリット

自己都合退職のメリットは、自分の生活環境を変えられることといえるでしょう。キャリアアップや、健康管理、家族との時間の確保などの理由での退職であれば、新しいことに挑戦したり、今まで以上に生活の質を上げたりすることができます。

その中で、次の転職先を探す際のメリットは、履歴書に「退職理由」の詳細を記載しなくてもいいことです。基本的には「一身上の都合」の記載で問題ありません。 また、極端に短い勤務期間で退職をされている場合を除いて、転職活動の際にも深く追及されることはまれです。

自己都合退職のデメリット

「自己都合で退職したのに、いったい何がデメリットになるの? 」と思う人もいるかもしれませんが、デメリットは存在します。

失業保険の給付期間が会社都合の退職に比べるとすぐには受け取れないこと、そして最大支給額が低いことです。

自己都合退職の場合、失業給付金の受け取りは最短で2ヶ月と7日後です。そのため、退職後の金銭的な不安がある場合には、一度金銭面での整理や、どのように生活していくかを考えてから、退職手続きをすることをおすすめします。

また、失業給付金の最大支給額は約124万で、会社都合の場合の約272万円に比べると約148万円ほど差があります。自分が実際にいくら受け取れるかを確認しておくほうがいいでしょう。

退職理由次第では転職活動時のイメージダウンになる?

転職活動の際には、企業からさまざまな質問を受けますが、その中でも「どうして前職を辞めたのですか? 」と質問を受けることは少なくありません。企業側として受け入れた際に同じ理由で辞めないか、どんな人物なのかを知りたいためです。

質問を受けた際に、「給料が低かった」「苦手な人がいた」など、ネガティブな理由を述べると、企業側から「同じ理由で辞めてしまうのでは」と不安に思われてしまうケースもあります。

もちろん嘘をつくのはよくありませんが、ポジティブな言い換えを行うなどの配慮が必要です。

  • 自己都合退職とは?

    個人的な理由での退職は自己都合退職に分類されます

会社都合退職との違いは?

自己都合退職のほかに「会社都合退職」があります。会社都合退職とは、言葉のとおり会社の都合による退職になりますが、一般的には下記のような理由で退職することを会社都合退職といいます。

  • 会社の倒産

  • リストラ

  • 会社でのいじめやパワハラ

  • 会社とのトラブル(賃金未払いや退職勧告など)

  • 労働契約の更新がされなかった

自分は会社で働くことを希望しているのにもかかわらず、社内のトラブルで退職を余儀なくされることや、会社の経営状況の理由で退職することになることを「会社都合」と表現します。

しかし、「懲戒処分」など、労働者が問題を起こして免職や解雇となった場合には雇用保険上は、「自己都合退職」の扱いです。

会社都合退職のメリット

会社都合にて退職する際のメリットは、失業給付金の内容や失業給付金の最短の支給開始日の早さ、国民保険料(税)などにあるといえます。

まず、失業給付金の内容ですが、最大支給額が272万円となります。会社都合退職の際に不安なことは新しい職の確保や生活費の確保であることが多いため、毎月ある程度の金額が受け取れることは大きなメリットです。

失業給付金の最短支給日は7日後で、自己都合退職の場合の2ヶ月と7日後より相当早く受け取れます。

国民保険については、事情によって最長2年間軽減される制度があります。自分が当てはまるかどうかはお住まいの市区町村に問い合わせてみるといいでしょう。

会社都合退職のデメリット

会社都合退職におけるデメリットは、仕事を続けられなくなることや、転職の際に質問を受ける可能性が高くなることです。

自己都合退職の場合、履歴書に書く退職理由を「一身上の都合」と表せますが、会社都合にて退職した場合は「会社都合」と書く必要があります。企業の採用担当からすると、「会社都合」だけではどんな理由で退職したのかが明確ではないため、質問が増える可能性が高まります。

会社の倒産や賃金未払いトラブルなど、自分に直接関わりのない部分であれば、質問にも答えやすいですが、いじめやパワハラなどあまり外部の人に話したくないことを質問されるケースもあります。

そのため、会社都合退職で転職活動を行う際の経歴書作成や質疑応答準備は、より慎重に行う必要があるでしょう。

  • 会社都合退職との違いは?

    会社都合退職は会社の理由によって退職させられることをいいます

自己都合退職の際に準備すること

自己都合退職をする際は、転職や新生活など、将来のことに注力してしまいがちですが、しっかりと目の前の退職の準備を整えながら新しい生活に備えましょう。ここからは、自己都合退職をする場合に準備することをご紹介していきます。

就業規則を確認してから退職を申し出る

一般的な正社員の場合、法律上労働者はいつでも退職を申し出ることができます。 たとえ会社の承認がなかったとしても、民法の規定により退職の申し出をした日から起算して、14日を経過したら退職となります。ただ、就業規則上は、1か月前までとなっていることが多いので、退職時のトラブルを避けるため、事前に就業規則を確認の上、期日までに申し出るようにしましょう。

なお、契約社員など労働期間の定めがある場合は、期間中はやむを得ない場合を除いて原則退職はできないため、注意が必要です。

退職前の有給休暇取得は早めに申請しましょう

有給休暇は、退職前に取得できます。しかし、退職が直近になってしまうと業務が滞ったり、人員不足になったりして、有給休暇の取得が難しいケースもあります。

有休消化がたくさん残っていて、かつ消化してから退職したい人は、しっかりと前もってスケジュールを組み立てておくといいでしょう。

退職届・退職願は書面で提出

退職届や退職願は書面で提出する会社が一般的です。会社によっては提出する必要がないケースもあるため、早めに自社の就業規則を確認するようにした方が安心です。

退職届や退職願のフォーマットのなかには退職日を入力する部分があるため、いつ退職したいのかをあらかじめ上司に相談しておくとスムーズに進められます。

健康保険・年金の手続き

退職した後に、健康保険や年金の手続きをしなければいけないケースがあります。

企業から企業に転職する場合は簡単に済ませられることもありますが、企業に転職しない場合は健康保険や年金の手続きを必ず行わなければなりません。事前にどんな準備をしなければいけないのかを確認しておくと、退職後に困ることも少ないでしょう。

  • 自己都合退職の際に準備すること

    準備をしっかり行ってから退職しましょう

会社都合退職なのに自己都合退職を求められたら

自己都合退職と会社都合退職についてご紹介しましたが、会社都合に当てはまるような退職事項ではありながら、会社側から「自己都合退職として退職してほしい」といわれてしまうことがあります。

なぜ会社側が「自己都合退職」を勧めるのかというと、会社都合退職になると会社側が背負うリスクがあるためです️。

会社側が抱えるリスクとしては、国からの助成金がもらえなくなる、労働者から民事訴訟を起こされると会社側の立場が弱くなる、などがあります。もしも会社から自己都合での退職を勧められ、納得ができないのならはっきりと伝えるようにしましょう。

自己都合退職に納得できない場合は会社都合退職へ変更できる場合もある

会社から自己都合での退職として処理されてしまい、納得できない場合には、離職票の具体的事情記載欄に経緯を記載しましょう。

自己都合にされてしまったことを証明するものと一緒にハローワークに提出すれば、ハローワークで「会社都合退職」に修正してもらうことも可能です。

  • 会社都合退職なのに自己都合退職を求められたら

    トラブルを防ぐためにも納得できる形で退職するようにしましょう

自己都合退職を正しく理解し、後悔ない選択を

今回は、自己都合退職について解説しました。自己都合退職は、転居・結婚・介護・病気療養など、自分が望む仕事内容・待遇などを求めて退職するケースのことをいいます。自己都合退職と会社都合退職では社会的な保障に差が出ることもあるため、あらかじめ自分の退職方法に応じた準備や対応が必要です。もしも、会社から「自己都合退職」を勧められたとしても簡単に受け入れず、自分の望む退職方法を選ぶようにしましょう。


参考文献
厚生労働省「知って役立つ労働法
厚生労働省「「給付制限期間」が2か月に短縮されます