すでに女優として十年選手となった鈴木だが、デビュー当時と今とで、仕事に向き合うスタンスの変化はないのだろうか。「小学生の頃は、目の前にあるお仕事にただただ一生懸命取り組んでいましたが、中学生になるとそこに部活や勉強との両立が加わったり、周りの友達から『将来こういう夢を目指している』といった話を聞いて、『自分はこのまま突き進むべきなのか』と少し悩んだりもしました。思春期だったせいもあると思いますが、この先、高校や大学に上がれば、その先にも転機があるだろうし、女優業は相当覚悟がないとできないお仕事だなとも思いました」
そんななか、仕事に対しての不安や迷いを吹き飛ばしてくれたのは、鈴木が中学3年生の時に出演した舞台『奇跡の人』だ。「初めての舞台だったので知らないことばかりでしたが、その時にお芝居に対する姿勢を改めて学べた気がします。やっていくなかで、自分は本当にお芝居が好きなんだなと実感できたし、この先大人になってからも、絶対にこの仕事を続けていきたいという覚悟を決めました」
リスペクトする先輩俳優についても「たくさんいます」と前置きをしたあとで、『奇跡の人』で共演した高畑充希の名前を挙げる。「アニー・サリバン先生役を演じた高畑さんの演技を見て、舞台と映像のお芝居では表現の仕方が違うんだなと、衝撃を受けました。それを、ヘレンとサリバン先生とのぶつかり合いを通して間近で体験できたことが本当に大きかったです」
現在16歳となった鈴木だが、子役から大人の女優へとスライドする過渡期について尋ねると「今、すごく感じてます」と言う。「小学生の頃まで『梨央ちゃん』と呼ばれていましたが、中学生や高校生に上がっていくにつれて、『鈴木さん』に変わっていきました。今では目上の方でも、敬語で接してくださるようになったのですが、自分としてはまだ慣れてない感じです。やっぱり女優としてはまだまだですし」
吉田羊とのポカリスエットのCMには毎回ほっこりするが「本当に楽しいです。小学校4年生の頃からずっとご一緒させていただいて本当に感謝しています。あのCMの中では、ずっと子どものままでいたいなと思う瞬間があります」と、屈託ない笑顔を見せる鈴木。
彼女のキャリアを見るかぎり、順風満帆な印象を受けるが、これまでやってきたなかで、壁にぶつかることも何度かあったそうだ。
「オーディションで立て続けに落ちてしまった時期はとても悔しくて、嫌な気持ちになったりもしました。でもそういう時、家族や周りの人が『きっと次はいけるよ。次こそ頑張ろう』と、背中を押してくれたからこそ、今の自分があると思います。自分が昔出ていた作品を観てもそう思いますし、そういう人たちへの感謝は、ずっと忘れずにいたいです」
今は女優業への情熱は揺るぎないものとなったが、新しいことにも挑戦していきたいと言う鈴木。「私は小さい頃から歌を歌うことも大好きで、ずっとギターをやっていますが、 最近は作詞作曲にも励んでいます。だからいつか自作の歌もお披露目できたらいいなと。とにかく、女優として、いろんな引き出しをたくさん作って、準備万全にしておきたいです」。
最後に『映画おしりたんてい スフーレ島のひみつ』について「ルルは、ある誘惑を受けて、道を踏み間違えそうになりますが、いろいろな人たちの助けや励ましを受けて、最終的には正しい道に進もうとしていきます。そういうルルの成長を見て、私自身も周りの人たちの支えがあったからこそ、自分の道を歩むことができているんだとつくづく感じています。そういった部分にも注目して、作品を楽しんでいただきたいです」とアピールした。
2005年2月10日生まれ、埼玉県出身。NHK大河ドラマ『八重の桜』(13)で綾瀬はるか扮する山本八重の幼少期を演じて注目される。以来、『Woman』(13)、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(15~16)、『精霊の守り人』シリーズ、『ひきこもり先生』(21)などのドラマや、映画『僕だけがいない街』(16)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、『最高の人生の見つけ方』(19)、『こどもしょくどう』(19)などに出演。アニメ『どろろ』(19/TOKYO MX他)では、“どろろ”の声を演じたほか、多数の日本語吹替版の声優も務める。秋には主演ドラマ『命のバトン~赤ちゃん縁組がつなぐ絆~』(NHK BS1)が放送される。
衣装:manana