(2)個人のニーズに合うプログラムを準備

2つ目のポイントは、従業員の根本的なニーズ(潜在的なニーズと合わせる・困っていること)を分析して、興味を後押しするブランド力のあるコンテンツを探すことです。

シトリックスでは、コロナ禍で社員の健康を守るため、テレワークへの切り替えを早期かつ全社的に実施しました。暮らす場所が働く場所となり、生活が大きく変化した中、個人のニーズに切り込んだ施策が効果的です。

企業、規模の差は大きいと思いますので、規模が大きければテレワークアンケートの実施、規模が比較的小さければヒアリングで十分です。日本生産本部のテレワーク調査において、上位に挙がる課題はいつもテレワークの環境です。そこで、テレワークに効くインテリアとして、家族全員の環境を整えることができる企画を模索しました。具体的には、インテリアコーディネーターを講師に招き、色の整え方、ゾーニングの仕方、視覚の錯覚をふんだんに使ったワークショップを設計しました。

  • テレワークを始めて、自宅にいる時間が長くなると、自宅のインテリアも気になってしまうものだ

重要なポイントは、従業員が抱えているニーズを把握した上で、ニーズに合ったテーマを切り取ることです。専門性の高いものではなく、誰もがわかるものを題材にして、その中に、SDGsの要素を入れることがうまくいくコツです。日々の生活にどう生かすことができるのか、環境を考慮した暮らし方ができるような提案もしてもらい、誰でもマネができるような内容にすることで、個人の関心と連携させ、暮らし方にプラスとなる要素に焦点を当てました。

このように、長引く在宅勤務を少しでも快適にするための企画を企業側が準備することで、従業員は「会社は自分たちを理解して努力してくれている」というメッセージを感じやすく、よりエンゲージメントを高める内容になります。このような活動が、ビジネス戦略の一部であり、自社の最終損益にメリットをもたらすものだと認識した上で、従業員の関心や活動を後押しする内容に落とし込むことが重要です。

6月には、国際環境デーに合わせ、フードロスを啓蒙するための企画「ロジカルクッキング」を開催しました。これは、SDGsの「気候変動」「陸の豊さ」につながるテーマです。

長期化するリモートワークの中、フードロスや環境に配慮した暮らし方、料理の仕方、買い物の仕方など、個人の関心にフィットするコンテンツをピックアップしました。自宅がオフィスとなり、働くことと暮らすことの境界線がなくなっているからこそ、テレワークにあった暮らし方という個人的に興味があると思われるコンテンツに絞ることで、参加率が向上しただけでなく、実際に調理した従業員たちがお互いの料理を共有するなど、業務外でのコミュニケーションが活性化されます。

ぜひ、自社に適したトピックを見つけて講師が決まったら、そのトピックがどのように日々の生活に役立つのか、自社がターゲットとしている社会性のあるテーマとつながるのかを講師と話してください。3回くらい打ち合わせをするとすり合わせができるようになります。

(3)普段できない特別な体験を提供する

3つ目のポイントは、希少価値があり、特別感のあるイベントを通して、従業員が自分の所属する企業にブランド価値を感じてもらうことです。このことは従業員エンゲージメントの向上に大きく貢献します。

例えば、「国際環境デー」をテーマにした豊洲市場の魚に注目したワークショップでは、豊洲市場の仲卸人にナビゲーターとなってもらい、豊洲市場の加工パッケージ棟から中継しながら、バーチャルで社会見学をしているような内容に仕上げました。干物加工の魚を参加者に送付し、豊洲のプロから作り方を教えてもらうなど、質感や身体性のある内容が目の前にあるからこそ、魚の乱獲問題、漁獲高の低下というピンチを乗り越えたトランスフォーメーションなどの概念的な説明も、より浸透します。

  • 豊洲市場の仲卸人をナビゲーターに招き、参加者には干物加工の魚を送付することで、オンラインの壁も越えられた

社内広告としての位置づけも意識する

もう一つアドバイスがあります。実際に行った活動の意義や内容を、内外に提供することです。人は、知らないことには参加しないので、実際に参加していない人にも伝えることがポイントです。

例えば、オンラインで行うラジオ体操やフィットネス企画をした場合であれば、健康の維持という明確な目的があり、みんなの顔を見ながらできるというメリットもあります。そして、このような活動を社内的に行うことで、企業側は「健康的な働き方の啓蒙」という社内広告の効果が可能となります。

したがって、実際のイベントには参加ができない従業員も、デスクから少し離れて、体を動かすことは会社から認められていると感じることが重要です。相手の顔が見えないからこそ、自分がどのように評価されているかわからず、不安になり、常にオンの状態になることがメンタルヘルスに悪影響になるからです。

対外的なコミュニケーションという点では、テレワークデイズ協会と連携するとよいでしょう。総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府では、東京都および関係団体と連携し、柔軟な働き方を実現するテレワークの全国的な推進をしています。テレワークデイズ協会の新しいポスターが届きましたが、「働き方の新しいスタイル」としてテレワークが定義されており、2020年からは、ウェルビーイングが追加されていました。

ぜひ、自社の取り組みをテレワークデイズ協会にご紹介ください。対外的に情報を開示することで、自社の活動がブランド化されますし、社員にとっても励みになります。昨年、テレワークデイズ協会の取材に対応をした際のWebサイトはこちらとなります。

最後になりますが、これまで以上にチームが分散して多様な働き方が広がる現在、従業員が同じ体験を通して同じ組織に所属している意識を高めることはより重要になってきます。ハイブリッドな環境では、全員が在宅勤務の時よりも、コミュニケーションのアンバランスが生じやすく、チーム全体でのルール作りやフェアな体制が重要になります。それに加えて、業務の壁を超えた組織間でのコミュニケーションの活性化のための取り組みやイベントが必要になってきます。人材がより流動的になってきている環境において、企業はこれまで以上に優秀な人材に働きつづけてもらい、生産性高く、イノベーションにつながる働き方を実現することが、成長の要となります。

著者

シトリックス・システムズ・ジャパン

従業員エンゲージメント企画実行委員会