矢倉対雁木の将棋で、激しい攻め合いを制する

第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦(主催:地方新聞11社)の一回戦第三局、▲深浦康市九段-△糸谷哲郎八段戦が8月1日に福岡県「福岡国際センター」で行われました。結果は138手で糸谷八段が勝利。二回戦で永瀬拓矢王座と対戦します。


第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦のトーナメント表

前回大会優勝者(豊島将之JT杯覇者)とタイトル保持者(渡辺明名人、藤井聡太二冠、永瀬拓矢王座)、それに賞金ランキング上位者を合わせた上位12名の選抜された棋士によって争われる、将棋日本シリーズJTプロ公式戦。昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から全ての対局が無観客で行われましたが、今大会は一回戦第二局から地方会場にて公開対局で行われています。

福岡市で行われた一回戦第三局は、振り駒の結果深浦九段が先手番になりました。深浦九段は矢倉、糸谷八段は雁木に構えます。深浦九段が金銀3枚で玉をしっかりと囲ったのに対し、糸谷八段は玉を中央に配置するバランス重視の構えで対抗します。

両者飛車を1筋に転回し、仕掛け所を探る中盤戦から、先に仕掛けたのは糸谷八段でした。歩を次々と突き捨てた後、金を繰り出していきます。本来は守り駒であるはずの金を攻めに使うのは、力戦を得意とする糸谷八段らしい選択です。

金と交換した銀を敵陣に打ち込んで桂を入手し、その桂を△6六桂と金取りに打ったのが好手順で糸谷八段がリードを奪います。深浦九段も守りの薄い糸谷玉めがけて攻めていき、激しい攻め合いとなりました。

攻め合いの末、飛車角を奪い、その2枚で深浦玉に迫る糸谷八段。深浦九段は金銀を自陣に投入して粘ります。深浦玉が上部に逃げ出せるか、というところで、糸谷八段が自陣の角を切ったのが決め手でした。角を切って手に入れた金を打ち込み、深浦玉を丸裸にして、必至をかけます。最後は深浦九段の王手に冷静に対処し、勝利を収めました。

この勝利で糸谷八段は二回戦に進出。永瀬王座と9月20日に静岡県「ツインメッセ静岡 南館大展示場」で対局予定です。

4年ぶりの本棋戦出場となった糸谷八段(写真は第46期棋王戦第1局のもの。提供:日本将棋連盟)
4年ぶりの本棋戦出場となった糸谷八段(写真は第46期棋王戦第1局のもの。提供:日本将棋連盟)