東京都・渋谷交差点の地下商店街「しぶちか」に7月1日、未来型AIカフェ「AZLM CONNECTED CAFE 渋谷地下街店」がオープンした。日本全国から商品を展示・マーケティングできる場となっている。利用者にとっては、バリスタ監修のスペシャリティコーヒーが破格の99円で楽しめるのも魅力だ。
商品との出会いをつくる、リアル店舗の新形態
AZLM CONNECTED CAFEは、リアルとデジタルを融合した実店舗運営等を行う、コネクテッドコマースの中村武治代表取締役社長が考案した新しいスタイルのカフェ。店名の「AZLM」は「From AtoZ, Live Marketing」の頭文字をとったもので、あらゆるもの(AtoZ)を展示し、マーケティングできる場所を意味する。
「以前からこういった場所の創設を思い描いていましたが、コロナ禍によって非接触やキャッシュレスといった需要がより浮き彫りになりました。この店は、お客様が毎日来るような場所で、素晴らしいモノ・コト・ヒトと出会う新しい商空間です」(中村社長)
店内にある約300点の展示スペースには、月額3万3,000円で出店可能。家賃等がネックで首都圏に出店できずにいる事業者にとっては、少ない投資で渋谷の売場に商品を置くことができる、マーケティング調査や商品化前の製品のテスト販売等の場となる。各商品にはQRコードがついており、購入はECサイトで行う仕組み。動画やWeb通話による接客もできる。
展示スペース全体がスタンディングカウンターになっており、来店者は気になる商品を手にとったり商品説明の動画を見たりして楽しめる。ドリンクを片手にパソコン作業をすることもでき、移動中のちょっとしたビジネス利用にも重宝されそうだ。
ICT技術で、効果的なテストマーケティングの場を創出
店内には、NTT東日本のICT技術が導入されている。天井にはAIカメラが設置されており、入り口で来店者のデータを取得する。
展示スペース上にあるカメラでは、各商品の前に立ち止まった人数や手に取った人の閲覧時間等を感知する。
それぞれのカメラでは、来店者の年代や性別のほか、商品への興味・関心、タブレットを利用したオンライン接客でのコミュニケーション感度までデータ化される。Web通話では、販売員がどんな説明をしたときに利用客がポジティブな感情になったかなどを音声認識により分析。これまで事業者が把握しきれなかった販売の詳細まで可視化できる。これらのデータはすべて匿名化した上で解析され、各出展者へとフィードバックされる。
システムの実証実験から携わり、当事業を担当するNTT東日本の田中恵士氏は「NTTは地方の事業者様のサポートをする機会も多いのですが、こういった首都圏の店舗で実際に売るところまでの支援は自社だけでは難しいところでした。このお店には、多くの事業者様のニーズに応えられる大きな可能性を感じています。どういったデータが喜ばれるかなど、サービスを見極めていきたい」と話す。
店頭ではパーソナルロボットの「temi」が呼び込みや利用方法の案内を行うほか、日本酒のパーソナル診断も実施している。音声案内にしたがって、自分のライフスタイルや好みを選択するとおすすめの日本酒が表示され、該当する日本酒の展示スペースが点灯する。
展示スペースにあるタブレットからWeb通話で蔵元と会話しながらオンラインショップで商品を購入することもできる。今後はワインや焼酎などに幅を広げて展開予定だそう。
バリスタ監修のスペシャリティコーヒーが99円
もうひとつの目玉が、バリスタが監修したスペシャリティコーヒー。ブラジル豆をメインとしたオリジナルブレンドのコーヒー(99円)や、ラ・マルゾッコ社の最新・最上級エスプレッソマシン「KB90」で淹れるカフェラテ(111円)を提供している。
中村氏は「何度も訪れたくなるクオリティと、気軽に立ち寄りやすい価格を追求しました。お客様に新しい日常を提供できればと思っています」と話す。商品購入・カフェともに、店内の会計はすべて事前会員登録のAmazon Payによる完全キャッシュレス。ドリンクは店内・テイクアウトどちらにも対応している。
この店舗を皮切りに、直営・フランチャイズの展開を含め、全国2,000店の出店を目指す。ICTを取り入れた小売の新たな形態に、今後も注目を集まりそうだ。