育児休暇を取得するにあたって気になるのが、育児休暇中の給料の処遇です。福利厚生の充実や働き方改革の一環として育児休暇の制度を設ける会社も増えてきているため、育児休暇中の給料の有無や育児休業との違いなどをわかりやすくご紹介します。
育児休暇とは
育児休暇とは「育児をするために休暇を取得する」「休暇期間中に育児をする」ことを意味します。育児休暇は改正育児・介護休業法に盛り込まれており、事業主には「小学校就学に達するまでの子を養育する労働者が育児に関する目的で利用できる休暇制度」を設ける努力義務が課されました。ただ、企業ごとにその導入の有無は異なり、会社の規定に定めがなければ利用できません。また、名称も会社によって異なるようです。
育児休暇中に給料は支給される?
育児休暇をこれから取得する人にとって最も気になる問題は、育児休暇中に勤めている会社から給料がもらえるのかどうかではないでしょうか。
結論から言うと、有給、無給は会社の定めによりますが、育児休暇中は会社からの給料は発生しないケースが多いようです。「給料」とは「労働の対価として得られる報酬」のことです。そもそも労働をしていなければ対価である報酬も受け取れないというのが一般的な解釈です。
育児休暇と育児休業の違いとは
育児休暇と似た言葉に「育児休業」があります。こちらは育児・介護休業法の第2条に基づく制度であり、「育休」と略した言葉を用いる際はこの育児休業を指すのが一般的です。
育児休暇とは企業別の社内制度のようなものであり、子どもの入園式や卒業式に伴う休みといったような「一時的な休暇」に対して使われる言葉です。それに比べ、育児休業とは子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる「中長期的な休暇」のことであり、就業先に関係なく取得できる公的制度です。
そのため、育児休業を取得する場合は、会社から「給料」という形ではなく、「育児休業給付金」という形で雇用保険から手当てが支給されるようになっています。このように、「公的な制度か否か」と「支払われる手当の有無」が育児休暇と育児休業における違いと言えます。
育児休業給付金給付の条件
育児休業給付金の給付を受けるための主な条件は、以下の通りです。
(1)1歳未満の子どもがいる
(2)育児休業を取得後、会社に復帰する意思がある
(3)育児休業を取得する直近2年間で、11日以上働いた月が12カ月以上ある
(4)育休中の給料が、育休手当が支給される前の給料の80%未満である
(5)育休中の労働は月10日以内である
ただし、(3)の要件を満たしていなくても、この2年間のうちに第1子の育児休業を取得していた人や本人に疾病などがある場合には、例外として育児休業給付金の受給を認められるケースもあります。
さらに、契約期間に定めのある「有期雇用労働者」と契約期間に定めのない「無期雇用労働者」でも受給要件が変わってきます。
「無期雇用労働者」は上記の要件だけ満たしていれば受給可能であるのに対し、「有期雇用労働者」の方は、上記の要件に加えて、育児休業が開始される時点で、同じ雇用主のもとで1年以上雇用されていることと、出産した子どもが1歳半になるまでに雇用主との間で労働契約の更新がなされないことが明確でないことが必要です。
育児休業給付金は男性ももらえるのか
男性が育児休業を取得した場合であっても、上記で説明した条件さえ満たしていれば女性と同様に育児休業給付金を受給できます。
女性は、産後8週目までは産休の扱いになるため、男性は女性の場合と受給期間が異なります。原則として、妻が子どもを出産した当日から子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの1年間が支給対象となっています。
もちろん、子どもが1歳の誕生日を迎える前に育児休業を終えて職場に復帰した場合は、職場復帰日の前日までが「育児休業給付金」の支給対象期間となります。
育児休業給付金の申請先
育児休業給付金は、本人が希望する場合を除き、原則事業主が育児休業を開始するタイミングで、事業所の所在地を管轄しているハローワークに対して「育児休業給付金支給申請書」と「育児休業給付受給資格確認票」という2種類の書類を提出することにより、申請が可能です。
育児休業の期間中、継続的に育児休業給付金の支給を受けるためには、2カ月に1回、事業主を介して指定された期間中に支給申請をし続ける必要があります。しかし、初回の手続きと同様、育児休業給付金の申請は、基本的には事業主が従業員の代わりに行う申請となります。従業員は、育児休業の期間を事業主と相談して決めることのみとなります。
育児休業給付金の給付額
続いて、多くの人が気になっているであろう、育児休業給付金の金額についてみていきましょう。以下の計算式を用いることで、実際に育児休業給付金としていくら受給できるのかをあらかじめ確認できます。
「育児休業開始前6カ月間の給料の総額÷180日×支給日数×67%(育児休業取得後6カ月目から50%)」
ざっと考えると、育児休業の開始後5カ月目までは普段もらっている給料の約7割が、開始後6カ月目以降は半額が支給されるということになります。
育児休業給付金が支給されるタイミング
申請に必要な要件を押さえ、大体どのくらいの手当てを受給できるのかがわかったところで気になるのが、実際にこの「育児休業給付金」がいつ自分の手元に入ってくるのかということでしょう。
受給できるとわかっていても、受給のタイミングがあまりにも遅いとなると生活に支障が出てしまい不便ですよね。実際に育児休業給付金が初めてもらえるのは現状、育児休業が始まってから2カ月から3カ月後となっています。以後、2カ月ごとに申請し、2カ月ごとに指定した振り込み先に入金される形が一般的です。
育休を延長した場合の対処法
育児休業給付金の延長が認められるのは「子どもが1歳又は1歳6カ月になる前までに保育所に入所する申し込みを行っており、かつ復職の意思がある」ケースです。延長は保育所への入所を希望し応募しているにも関わらず、入所先が見つからず、子どもを家で保育するしかないという状況にいる方のみ認められています。
育児休業や育児休業給付金の期間延長については、事業主ではなく当事者が直接ハローワークに行き、市区町村が発行した保育所への入所保留通知書など、保育所に入所できない事実が証明できる書類を提出する必要があります。市区町村によっては、手続きが完了するまでに1カ月以上かかる場合もあるので、早めに準備しておくといいでしょう。
育休中の社会保険料
育休期間中には、社会保険料が免除されます。免除される具体的な期間としては、育児休業取得の「開始月」から「終了前月」までとなっています。
この社会保険料の免除は自動的になされるものではありません。事業主が年金事務所に必要書類を提出して初めて適用されます。従業員側は、勤めている企業から受け取った必要書類に記入し提出するだけで、あとは事業主の方で対応してもらえます。
育児休暇中は給料が発生しないことが一般的
育児休暇中は、原則企業からの給料は発生しないことが一般的です。一方で、育児休業中は育児休業給付金という形で、通常の給料の一定分の手当を雇用保険からもらうことが可能です。
育児休暇と育児休業、どちらも「育休」と略せてしまうため混同しがちですが、その内容は全く異なります。「育児休暇給付金」という言葉は存在せず、「育児休業給付金」が正しいと覚えておきましょう。