米国商務省のレイモンド長官は5月20日(米国時間)、世界規模での半導体不足に対応するための半導体サプライチェーン強化および透明化の協議に向け、半導体業界、自動車業界、ハイテク業界の経営幹部とオンラインで会議を開いたと複数の海外メディアが報じている。

同長官は、会議に先立ち、4月から5月にかけてTSMCなど海外ファウンドリに対し、米自動車メーカーへの半導体供給を優先するよう働き掛けを行っており、今回の会議にもTSMCやSamsung Electronics、GLOBALFOUNDRIESといったファウンドリ勢が含まれている。そのほかの参加者としてはQualcomm、Apple、Google、Ford Motor、General Motors、AT&A、Cisco Systems、Verizon Communicationsなど、半導体やそれを利用するユーザー企業といった具合となっている。

同長官は、「現在サプライチェーンでの透明性が不足している。私たちは、情報の共有を強化するために、政府が行うべき役割を探している」と述べたという。現在、世界中の半導体ファウンドリはフル稼働状態にあり、仮に車載半導体を優先しようとすると、それ以外の用途の半導体の出荷が遅れをきたすこととなることから、商務省も他の産業を無視して自動車産業だけを優遇するわけにもいかないため、短期的かつ簡単な解決策は見いだせずにいるようである。そもそも車載半導体不足は、トヨタ自動車発祥の「在庫を極端まで減らす生産方式(Just-in-Time)」が主流の自動車業界各社が昨年初めに新型コロナウイルス蔓延の兆しが見えた段階で車載半導体に対する注文をキャンセルしたことに端を発しており、サプライチェーン全体における在庫の確保や見える化などが今後協議されるであろう。

TSMCが2022年に車載半導体を2021年比6割増産へ

TSMCは、この会議の直後の5月21日(台湾時間)、2021年に車載用半導体の生産量を2021年比で6割増やすと発表した。新型コロナウイルスが発生する前の2019年に比べても3割増に相当するという。ただし、増産場所やタイムスケジュールや増産手法などの詳細については一切明らかにしていない。

なお、TSMCは4月22日に開催した取締役会にて車載半導体の増産に向けて、28.87億ドルを投資することを承認しており、中国南京市にある同社の南京工場(Fab16)で車載用28nmプロセス品の生産能力を拡張する見込みであるが、実際に増産が実現するのは2022年後半から2023年とみられており、今回の発表と南京工場ライン増設との関連は明らかにはなっていない、

4月業績も好調で大増員計画を打ち出すTSMC

またTSMCは、2021年4月度の売上高が、前年同月比16%増の1111.32億NTドルに達したとも発表している。

これにより2021年1~4月の累計売上高は前年同期比16.5%増の4737.3億ドルに達し、2021年に入っても業績が順調に伸びていることがうかがえる。こうした好調な業績もあり同社は、台湾での半導体増産および米国の先端半導体ファブ新設にともない製造関連の技術者の募集を大々的に開始している。日本でも、日本顧客のLSI設計を支援したり、独自IP開発に向け、横浜のみなとみらいにあるTSMC Japan Design Center(JDC)でメモリやSoC関連の設計者や回路IP開発者を募集している。