ソニーセミコンダクタソリューションズの社長兼CEOと会長を歴任した清水照士氏が、次世代セキュリティ半導体を手がけるAI Powerのセミコンダクター・エグゼクティブアドバイザーに2026年5月1日付で就任する。
AI Powerが開発中の次世代セキュリティ半導体「ATOM」は現在、初期ロット2,000台の試作量産を開始し、実環境における検証フェーズに入っている。同社は「清水氏の参画を得て、今後の開発・普及へとさらにはずみがつくことが期待される」としている。
次世代セキュリティ半導体ATOMとはなにか
AI Powerは、「人類社会が抱える課題の解決に寄り添うAI技術」の実現をミッションに掲げる日本企業。これまでに次世代固体電池や、光触媒を応用したエネルギー変換技術の改良のほか、自然界の物理現象を応用した“究極のセキュリティ半導体デバイス”「ATOM」の開発・普及などに取り組んでいる。
AIの普及に伴い、なりすましや不正アクセスの高度化が進んでおり、さらに量子コンピューターの発展で従来暗号への依存リスクも指摘されていることから、AI Powerは原子核の自然崩壊という物理現象に由来する乱数を活用するATOMを開発。
「高い予測困難性」、「ワンタイム認証による攻撃リスクの低減」、「既存システムと連携可能な設計」をうたい安全性を強化しており、ソフトウェア依存からの脱却やハードウェアベースの認証強化といった、“現実的かつ導入可能なセキュリティ対策の提供”をめざしているという。
なお、ATOMは既存の認証方式を置き換えるものではなく、現在のセキュリティを補強・強化するためのデバイスとして設計しており、幅広い応用が可能ともアピールしている。
同社では、ATOMの初期ロット2,000台を試作量産し、データセンター環境(100度)を想定した耐熱試験や、マイナス40度〜プラス80度の温度範囲における動作安定性試験を行い、サーバー認証用途に向けた動作検証も始めている。
前出の温度範囲における動作試験では、認証動作や乱数生成の安定性と、産業用途やデータセンター用途に求められる基本的な環境耐性を確認したとしており、100度環境下の耐熱試験において動作継続性よデバイス耐性の評価を進めているという。
清水照士氏の経歴とコメント
清水照士(しみずてるし)氏は、1980年にソニー(現・ソニーグループ)に入社し、半導体のプロセスエンジニアとして開発から量産現場を経験。1999年からソニー・コンピュータエンタテインメント(現・ソニー・インタラクティブエンタテインメント)で「PlayStation 2」や「PlayStation 3」の半導体開発や製造に関わった。
2010年からはCMOSイメージセンサ(CIS)事業拡大をリードし、2016年にソニーセミコンダクタソリューションズの初代社長に就任。その後、2025年にソニーセミコンの会長に就任し、翌2026年3月末をもって同社を退任した。
AI Powerは清水氏について、「10年間で売上高を3倍にする急成長を実現するなど、グループの中ではマイナーな存在だった半導体事業を『技術のソニー』の柱のひとつへと育てた中心的存在」と評し、半導体に関する幅広い知見と経験、人脈を持つ清水氏の参画が「世界展開も視野に入れたATOM事業に取って非常に大きな力となる」として就任を要請、実現に至ったとしている。
清水氏の参画後は、ATOM技術の迅速・確実な実用化をめざすとしており、データセンター・産業用途といった限定環境での実証導入から、量産化・用途拡張へと進むことにしている。
セミコンダクター・エグゼクティブアドバイザー 清水照士氏
半導体は設計から製造、信頼性試験まで一貫したクオリティが必要です。今回の取り組みは、試作から実装へ移行する重要な段階であり、これらをひとつずつ確実に整えていくことが重要です。実際に使われる製品として成立させることに注力していきます。
AI Power 代表取締役 松田慎司氏
ATOMはすでに製造と検証の段階に入っています。今回の2,000台の試作量産に加え、100度耐熱試験およびマイナス40度〜プラス80度の温度環境試験を実施し、実環境での評価を進めています。研究段階ではなく、“使えるかどうか”を判断するフェーズに入ったと考えています。今後は実際の導入を通じて、信頼性を積み上げていきます。