「自暴自棄」は、日常生活で何気なく使う言葉ではありますが、正しい意味を答えられる方は意外と少ないです。
「仕事で失敗してしまい、自暴自棄になった」「自暴自棄になり、体調を崩した」「自暴自棄になり、やけ食いしてしまった」など、プライベートでもよく使用されるこの言葉を、ビジネスの場面ではどのように使用できるのでしょうか。
今回は、自暴自棄の意味や類語、英語表現などを紹介します。また、記事の後半では視点を変えて、自暴自棄になってしまう原因や、なりやすい人の特徴、立ち直り方なども紹介します。
自暴自棄の意味
自暴自棄(じぼうじき)とは、「希望を失い、自分などどうなってもいいと投げやりになること」という意味です。
「自暴」は「無茶をして、自分自身のからだを損なうこと」、「自棄」は「自分で自分を見捨てること」を表しています。
自暴自棄の由来
「自暴自棄」という言葉は、中国の戦国時代の儒学者である孟子の語った故事が由来です。
現代語訳すると孟子は、「自分自身を駄目にする人間とは、共に語れない。自分自身を捨てる人間とは、共に何もできない。礼儀をそしる者を自暴といい、仁義がない者を自棄という。」と説いています。
自暴自棄になる原因
自暴自棄になる原因は、自分自身に対する不満や失望といえるでしょう。仕事での失敗や失恋などの上手くいかない出来事が引き金となり、理知的な考え方ができずに希望を棄て、やみくもな行動をとってしまうと考えられます。
ビジネスシーンにおける自暴自棄の使い方と例文
ビジネスシーンで自暴自棄を使用するシチュエーションには、上司から注意を受けた時や、商談で失敗した時などが挙げられます。
<使用例>
- 上司から罵倒するような発言を受け、心理的に追い込まれたことで自暴自棄になった。
- 仕事の失敗による自暴自棄から立ち直るために通院した。
- 自暴自棄を防ぐためには、人との付き合い方を見直すことが大切だ。
自暴自棄はネガティブな印象を持つ言葉なので、ビジネスで使用する際は使い方を間違えないように注意しましょう。
自暴自棄の類語
自暴自棄の類語に共通する意味としては、「物事が思いどおりにならないことに腹を立てて、どうなってもいいと思うこと」です。ここからは、それぞれの細かいニュアンスや使い方について例文を交えて解説します。
投げやり
投げやりは、「物事をいいかげんに行うこと、成り行きまかせにすることや、そのさま」を表す言葉です。
<使用例>
- やるだけ無駄だ、と投げやりな態度をとった。
- 何事も上手くいかず、投げやりな言い方をしてしまった。
やけくそ
やけくそは、「やけ(自棄)を強めて言う語で、切羽詰まって投げやりな行動をとってしまうような心の状態」を意味します。
<使用例>
- やけくそにならず、もう一度挑戦してみよう。
- やけくそな気分になり、暴飲暴食した。
捨て鉢
捨て鉢は、「思うようにならずどうにでもなれという気持ちであること、また、そのさま」を表す言葉です。「すてばち」または「すてっぱち」という読み方があります。
古くから僧侶には、托鉢(たくはつ)といわれる、鉢を持ってお布施や食料などをいただいてまわる修行があり、辛くて修業を断念してしまう者もいたことから転じて「捨て鉢」といわれるようになりました。
<使用例>
- 何をしても失敗ばかりで、捨て鉢になる。
- 捨て鉢な態度をとる。
破れかぶれ
破れかぶれは、「後先を考えず、勢いで事を起こそうとするさま」を表す言葉です。
<使用例>
- 破れかぶれで一発勝負に出た。
- 破れかぶれな気持ちで旅に出た。
自暴自棄の対義語
自暴自棄の対義語には「自重自愛」があります。自重自愛の意味は、「自らを重んじて、自分を大切にすること」です。「自重」も「自愛」も似た言葉ではありますが、ニュアンスが少し異なります。
「自重」は自分の品性を保ち卑下しないこと、言動を慎んで軽はずみなことをしないこと、「自愛」は自分の健康状態に気を付けること、自分の利益を大事にすることを表す言葉です。
自暴自棄の英語表現
国際化が進む現代では、ビジネスシーンにおいても海外の方と交流する機会が増えています。もとは四字熟語の「自暴自棄」ですが、英語表現をいくつか覚えておくことで、スマートな印象を残せるでしょう。
desperation
desperationは、日本語で「自暴自棄」「やけ」「捨て鉢」「死に物狂い」にあたる英単語です。
<使用例>
- to be driven to desperation(必死になる)
- with desperation(死に物狂いで)
despair
despairは、日本語で「絶望」「絶望させるもの」にあたる英単語です。
<使用例>
- drive a person to despair(人を絶望に追い込む)
- alternate hope and despair(一喜一憂)
self-abandonment
self-abandonmentは、selfが「自己」、abandonmentが「放棄」を表しています。2つの組み合わせで「自暴自棄」として成り立つ表現です。
自暴自棄になってしまう原因
人はどのようなときに自暴自棄になってしまうのでしょうか。ここでは自暴自棄になってしまう原因としてよくある例を紹介します。
立て続けに悪いことが起きたとき
例えば、「仕事で大きなミスをしてしまい、ただでさえ落ち込んでいるというときに、財布を落としてしまいカードも不正使用されてしまった」というように、悪いことが立て続けに起こると自暴自棄になってしまう人は多くいます。
人に裏切られたとき
親しい友人や恋人など、信頼していた人に裏切られたときも、自暴自棄になってしまいやすいでしょう。特に相手との付き合いが長い場合、相当なショックを受けるもの。「もはや誰も信じることができない」とまで思ってしまうこともあります。
自暴自棄になりやすい人の特徴とは
ここでは自暴自棄になりやすい人の特徴を紹介します。
我慢強くない人
ちょっとでも自分に都合の悪いことが起きると不機嫌になったり、激怒したりするような我慢がきかないタイプの人は自暴自棄になりやすいといえます。「世の中は自分の思い通りにはいかないのだから多少悪いことが起きても耐えよう」という考え方ができないと、あらゆる出来事を悪く捉えてしまいます。そうなると、「自分にばかり悪いことが起こる!」と悲観的になり、自暴自棄になってしまうでしょう。
ストレスを上手く発散できない人
現代はストレス社会と言われるほど、普通に生きていても日々それなりのストレスがかかってしまう環境です。多くの人は趣味などでそのストレスを発散しますが、なかには上手く発散できないという人もいるでしょう。上手く発散できないとストレスを過剰に溜め込み、自分を追い詰めてしまいます。そしてとうとう抱えきれなくなってしまったときに自暴自棄になってしまうことがあるのです。
自暴自棄からの立ち直り方
自暴自棄になってしまったら、どのようにして立ち直ればいいのでしょうか。ここでは立ち直る方法を紹介します。
心と体を休める
自暴自棄になってしまったときは、心と体の両方を休めることが大切です。休みの日に家で好きな音楽を聴いたり映画を見たり本を読んでみたり、あるいは何も考えずにボーっと過ごすのでもいいかもしれません。家にいるのが性に合わないという人であれば、海や山など景色の良い場所や楽しく遊べる場所に行くのもいいでしょう。できるだけ原因となったことを思い浮かべないようにするのがポイントです。
誰かに話を聞いてもらう
自分のなかだけで抱え込んでしまうと、どうしても気持ちが切り替えられないということがあります。このような場合、誰かに話を聞いてもらうだけでも心が軽くなるものです。第三者の意見を聞くことで、悩んでいたことが馬鹿らしく思えることもあるかもしれません。
自暴自棄と言う言葉を正しく理解しよう
自暴自棄の意味や由来をはじめ、類語、対義語、英語表現まで解説しました。一つの言葉だけではなく、似たよう言葉や言い換えを学び語彙力を増やすことで、表現の幅が広がります。自暴自棄という言葉はネガティブな印象を持つ言葉のため、ビジネスシーンで使用する際は、前向きな言葉も添えて使用すると好印象でしょう。
また、自暴自棄になってしまう原因や立ち直り方も紹介しました。自暴自棄にならないためにも今回お伝えした点を心に留めておいてください。