●かわいさも美しさも、”逢田梨香子の色”を持たせて表現
――かと思えば、M3「退屈が大好き」ではオシャレなサウンドから少し飄々とした歌声まで、またガラリと雰囲気の違う曲になっています。
この曲も、また今までにやったことのないようなもののひとつとして、ウィスパーボイスで歌うようなかわいい雰囲気の楽曲を目指しまして。「やくしまるえつこさんみたいな、キュートさとサウンドのカッコよさが共存した雰囲気の楽曲でお願いします」というリクエストをしました。そこをカジヒデキさんに素敵に拾い上げていただいて、ちょっとオシャレで懐かしさを感じる曲が生まれたんです。一周回って、逆に新しさも感じますよね。
――ただ、そういった楽曲だと歌う際の力の入れ具合は、従来とかなり変わりそうですね。
はい。逆に”抜いて歌う”というのが、すごく難しくて。かわいい曲なんですけどそのままかわいく歌うのではなく、ちょっとけだるそうで毒っ気のある感じで歌っていきました。
――となると、起伏をつけるのも難しいのでは?
そうなんです。あえて感情を乗せないようにぶっきらぼうな感じにして、あまりあざとくなりすぎないように歌おうとなったんですけど、完全に無感情だと今度は聴いていて面白くなくなっちゃうじゃないですか?なので部分部分で、「ここはちょっと語尾をかわいく」みたいに調整しながら、形にしていきました。
――完成後、御自身で聴いてお気に入りのポイントは増えましたか?
レコーディング中はあまりにも新境地の楽曲すぎて、最終形態が全然想像がつかなかったんですよ。なので完成してから聴いたときに初めて、「思ったよりもまとまりのある曲になっていたな」と安心しました
――こういった曲だと、ライブでの演出がどうなるのかも楽しみです。
いやー、そうですね!全く想像つかない……何でもできる気がしますし、どんな演出でも意表を突く感じになりそう(笑)。私の中では、オープンカーで海辺を走っているようなイメージのある曲なので、そういう演出ができたら面白いなぁと思っています。
――そしてラストを飾るM4「花筵」は、美しいバラードになりました。
まず“花筵”をテーマにした、このEPのエンドロール的な曲を作りたいというイメージがありまして。なので、だんだんだんだん曲が盛り上がっていって、最後少し余韻が残るような終わり方の楽曲をお願いしました。
――この曲でも、逢田さんが作詞を担当されています。
最初から、曲名になぞらえて桜の花が散っている情景だったりと、自然的な風景や景色を描きたいなと思っていました。でも、アレンジも加わった状態の曲を何度も聴くうちに、それよりもう少し馴染みのある言葉を入れたくなってきて。そこからは選ぶ言葉が、少し身近なものになっていきました。
――そうやって紡ぐことで、手紙のような歌詞に仕上がっています。
はい。過去のことを思い出しながら想いを綴っている主人公が、いろんなことを経験して少しずつ大人になっていって、ひとりで歩き出すという……少しありきたりなストーリーかもしれないですけど、一本の映画のような雰囲気を出したかったんです。
――楽曲に目を向けると、メロディのキーが若干低めな点も印象的でした。
それも実は自分の曲の中では珍しい部類なので、曲の盛り上がりなどを考えると「これで成立するのかな?」という不安もあったんです。でも、低音部分でいかに表現するかを突き詰めるのもいい挑戦になるように思いましたし、逆にサビでは少し感情的になって気持ちを伝えるようなイメージで歌ったりと、場所ごとに様々なことを意識して歌いました。
――あと、序盤で使っていたフレーズを終盤で回収してくるところに「やられた!」と思いまして。
わー、ありがとうございます(笑)。どれだけ成長して大人になっても、結局戻る場所は心の中にある……というイメージから、あえて最後は1行目と似たような文で締めくくりました。でも、歌い出しでは受け身だった主人公が、最後の行では自分から相手にアクションを起こしているんですよ。そういう部分からも、主人公の変化を感じていただけたら嬉しいです。
●4曲での”修行”を経て、さらなる新たな挑戦へ
――ちなみに、御自身の作詞曲はこれで4曲になります。作品を重ねられるなかで、できるようになってきたと感じていることはありますか?
言葉のハメ方や、比喩を交えた表現ですね。私、割と思ったままを歌詞にしてしまいがちなんですけど、そうじゃなくて何かに例えて感情を表現するというところにも作詞の楽しさを感じるようになってきたんです。
――そういう部分は、今回の2曲でも意識しましたか?
はい。自分の感情を優先というよりも、情景を思い浮かべてほしくて。その情景を交えたうえで、自分の感情を込められるように書いていきました。
――お話を聞いていると、今回のEPはなんだか修行の1枚のようにも見えてきました。しかも、曲ごとに挑戦されたポイントは違っていて。
あはは(笑)。そうかもしれないですね……今までの曲ももちろん素敵なんですけど、私、「また新しいことやりたいな」と思いがちで。皆さんをあっと驚かせることがすごく好きなんですよ。逆に、みんなの予想の範疇のことだけをやっていくのはすごくつまらないなと思っているので……。
――ということは、また新しくやりたいことも湧いてきたり?
そうですね……かっこいいロック調の曲は、いつかやってみたいです。それも、結構ギターが目立つような曲で……基本的に私はバラードが好きなほうなので、ロックバラードってかっこいいなぁと思うんですよ。そこに逢田梨香子らしさも入ったような曲を、歌えたらいいなぁ……。ただ、先日スタッフさんと「次、どういう曲にする?」という話をしたときには全然想像がつかなかったんですけど(笑)。
――それはきっと、ひとつのことだけをやっていなかったからかもしれませんね。
そうですね。なのでファンの皆さんには、アルバムを経て今回この4曲を受け取っていただいたうえで、「これからどんな曲を聴けるんだろう?」とワクワクしながら待っていていただけたら嬉しいです。