好きなことで食べていく。理想の働き方ではあるけれど、そう簡単にはいかないもの。でも、副業や複業が当たり前になりつつある今のこの世の中なら、好きなことを続けていくことは不可能ではないかも。むしろ、そういう生き方ってカッコイイ?!

パラレルワークは「意識高く」なくてもできる、そんな風に思わせてくれる、パラレルワーカーな4人組ロックバンド「ザ・クレーター」を紹介します。

  • 左から、ベースのOKDさん、ボーカルの菊永真介さん、ドラムでリーダーのシモセニアンさん、ギターのひらのともゆきさん 画像提供:ザ・クレーター 撮影協力:三軒茶屋ヘブンスドア

「意識高くない」複業の始まり

「ザ・クレーター」は、ボーカルの菊永真介さん、ドラムでリーダーのシモセニアンさん、ベースのOKDさん、ギターのひらのともゆきさんの4人で構成されるロックバンド。

毎年ライブツアーで全国各地を回るほか、2019年にはタイのバンコクで初開催された「Bangkok Music City 2019」に出演するなど、精力的に活動を行っています。ちなみに、メンバーは全員40代です。

一方で彼らは、シモセニアンさんが代表を務めるWEB制作会社カムストックで働くサラリーマンでもあります。言うなれば、「ザ・クレーター」は、バンドマンと会社員を掛け持ちするパラレルワーカー集団なのです。

でも、「パラレルワーカーなんて言葉自体知らなかったし、意識もしていない。会社は僕が勝手に始めたことで、みんなを自分の会社に入れようなんて、最初はまったく思ってなかったんですよ」とシモセニアンさん。

  • 自分たちを「パラレルワーカー」だと意識はしていないと話すシモセニアンさん

「こういう形になったのは、バンドをやりながらみんながちゃんと生きていくにはどうしたらいいかと考えた結果。言うなれば『なれの果ての姿』なんです。バンドだけで食べられたら他の仕事なんてしないですよ(笑)。僕にとってはそれが理想。だから、『パラレルワーカーだ』なんて誇れない。この上なく残念な奴らなんですよ。でも、そうまでしても、バンドはやめられないってことなんですよね」。

バンドも会社も本業

勤務先となるカムストックでは、街の医療クリニックなどを中心に、WEBサイトの制作や運用などを行っています。シモセニアンさんが社長、菊永さんが営業、OKDさんがデザインなどの制作、ひらのさんが営業補佐や庶務と、それぞれができる分野を担当。さらにもう二人、バンドメンバー以外の従業員もいるそうです。

  • 会社では営業補佐や庶務担当のひらのさん

バンドも会社も本業の彼ら。日頃どんな風に2つの仕事を両立させているのでしょうか。シモセニアンさんに聞きました。

「バンド活動は週に1、2回、全員でスタジオに入って音合わせ。ライブが近いともう少し増えます。コロナ禍では思うようにはバンド活動ができず、会社の仕事も不安定な時期がありましたが、今は落ち着きました。最近はテレワークが中心で、お互いのスケジュールはグーグルカレンダーでアバウトに共有、週1のオンラインミーティングで進捗を確認しています」。

バンドも仕事も全部を「なあなあ」で動かすと、ブラック企業のような働き方になるので、どちらもできるだけ業務時間内に入れるよう心掛けていると言います。

「働き方の基本方針は僕が作り、あとは、メンバーからの不満や要望を聞きつつ、話し合いで調整。互いに言いたいことはストレートに言うようにしているから、口論はありますよ。それでもダメなら、社外に相談できる人もいますし、だいたい折り合いはつく。そんな感じでやっています。一応経営者なんで、いろいろ考えているんですよ(笑)」。

そんな彼らが先ごろリリースしたのが、イクメン応援ソング『ラマーズ』です。この曲は、シモセニアンさんが「いつか作ってみたい」と密かに温めていた、NHKの「みんなのうた」のような世界観がテーマ。これまでの「ザ・クレーター」のイメージとは一線を画す、ユニークなナンバーに仕上がっています。

ザ・クレーター 『ラマーズ』/ The Crater ”Lamaze” / 英詞テロップ・バージョン English Sub Ver.

次回は、この異色のパラレルワーカーたちに、自身の働き方、生き方を尋ねたので紹介します。

取材協力:「ザ・クレーター」

歯ごたえのある演奏と、クセのある声で歌うポップなメロディが特徴の、 「泣いて、笑って、歌って、踊れる」歌モノロックバンド。