米国テキサス州オースティン市営の電力会社Austin Energyが、記録的な降雪を伴う厳しい寒波の影響により、大規模に電力が不足する事態が発生したことを受け、大量に電気を消費している地元半導体企業であるSamsung Austin Semiconductor(Samsung Electronics子会社)、NXP Semiconductors(旧Freescale Semiconductor)、Infineon Technologiesの現地工場に対して稼動を中断することを命令した後、送電停止措置をとったと地元紙であるAustin American-Statesmanをはじめとする複数のメディアが2月16日付け(米国時間)で報じたほか、これら半導体工場の本社所在国である韓国およびEUのメディアも17日付で報じている。

SamsungのAustin工場のシャットダウン時刻は2月16日午後4時とされているが、同社が現地の電力不足を理由にシャットダウン命令を受けたのは今回が初めてだという。

半導体の製造は、一時的な地震や停電の発生でも多額の損害をこうむるが、今回のシャットダウンについては、事前に当局から連絡があったことから、仕掛ロット全数不良といった最悪の事態は避けられているという。

工場の通電遮断措置は、約20万戸のオースティンの家庭に電力を供給されないままであり、住民たちは36時間以上にわたって暖房が使えず、生命が危険な状態に陥る可能性がある中、なぜ半導体工場をはじめとする大企業や中心街の高層ビルだけ明かりが点いているのか、といった苦情が市に殺到したためだという。

Austin市は、これほどまでの悪天候を踏まえた事前の対応はできておらず、同市のスマートグリッドも効果を発揮しなかったという。現地は、停電の上、水道管の凍結や破裂などで水も手に入らぬ中で、ボランティアが市民に食料を配給するなど大変な混乱状況だという。また、テキサス州に設置された風力発電の半数は、タービンが凍り付いて使いものにならなくなっているという話もあり、Austinだけではなく、テキサス州全体に電力不足の問題が広がってきているという。

新型コロナウイルス感染症に伴う外出制限時中も、米国における半導体製造は、州政府からも必要不可欠のエッセンシャルワークと認定され、操業を継続してきたのだが、荒天候による送電停止という思ってもいなかった形で操業停止に追い込まれることとなってしまった。