毎日の夕食、何を食べていますか? 仕事終わりで帰りが遅くなったとき、自炊をする気にもなれず、外食をするにもお店は閉まっている……そんな状況で便利なのがコンビニです。
コンビニのご飯というと不健康な食事、という印象があるかもしれませんが、実はカロリーや栄養素が書かれているので、選び方を知れば健康的な食事もできるのです。例えば「唐揚げ弁当」ともう一品を夕食にしようと思ったとき、何をプラスすればよいでしょうか?
今回、コンビニご飯を健康的に取り入れる方法として昨年SNSで話題となった「深夜勤務者のための食生活ブック」を執筆し、働く方の栄養相談や食生活の調査研究・予防医療を行っている、東京労災病院 治療就労両立支援センターの平澤芳恵先生に「コンビニ食の選び方のコツ」を伺いました。
このコンビニ食、あなたなら何を足す?
まずは実際に、よくあるコンビニ食をもとに「何を差し替えれば栄養バランスが取れるか」を教えていただきます。
【1】ガッツリ食べたい! 唐揚げ弁当+菓子パン
――平澤先生、今日はよろしくおねがいします。最初はこちら、ある20代男性が選んだ夕食です。かなりお腹が空いていたようで、「唐揚げ弁当」と「菓子パン」のチョイスです。
■20代男性のコンビニ夕食
・唐揚げ弁当
・菓子パン
よろしくおねがいします。唐揚げ弁当、人気ですよね。でもこの組み合わせ、まずはカロリーの高さが気になります。ちょっと商品に書いてあるカロリーを見てみましょう。
カロリー
・唐揚げ弁当:817kcal
・菓子パン:273kcal 合計:1,090kcal
お弁当だけで817kcal、さらに菓子パンを食べると合計で1,090kcalとなります。また菓子パンは糖質・脂質も高いんです。唐揚げ弁当はそのままにして、菓子パンを別の商品に差し替えてみましょう。
例えば、いろんな野菜が入ったミックスサラダに置き換えてみました。カロリーが抑えられますし、野菜を摂ることでお弁当に不足しているビタミン・ミネラル・食物繊維を補うことができますよ。
コンビニで食事を選ぶときは「主食・主菜・副菜」を意識してください。「主食」はご飯や麺類といった炭水化物、「主菜」は肉や魚などのタンパク質、「副菜」は野菜やきのこ、海藻類などのビタミン・ミネラル・食物繊維です。
この3つを意識すると、栄養バランスの良い食事に繋がります。若い方だと炭水化物に偏りがちなので、1品でも野菜が入っている商品を選んだり、タンパク源である鶏肉やツナが入っているパスタを選んでみましょう。
▼選び方のコツ[1]
「主食(ご飯・麺類)・主菜(肉・魚)・副菜(野菜・きのこ・海藻)」を意識しよう
――唐揚げ弁当と菓子パンの場合、副菜に当てはまるものがないですね。
そうですね。唐揚げ弁当に「主食(ご飯)・主菜(唐揚げ)」が当てはまるので、副菜としてサラダを足しましょう。他にも「野菜スープ」や「海藻サラダ」もおすすめですね。
――この時に選ぶサラダは、チキンや卵が入っているものでも良いですか?
唐揚げにタンパク質が含まれるので、野菜だけのサラダを選んでください。唐揚げ弁当は「主菜(肉・魚)」が入っています、具の少ないパスタやうどんの場合は、鶏肉や卵と野菜のサラダを追加して「主食・主菜・副菜」のバランスを取りましょう。
【2】野菜を摂ってはいるけど……グラタン+コールスローサラダ
――次は20代女性の選んだ夕食です。「グラタン」「コールスローサラダ」なら、主食のパスタ・主菜の肉やエビ・副菜の野菜と3つの要素を満たしているように見えます。
■20代女子のコンビニ夕食
・グラタン
・コールスローサラダ
組み合わせとしては悪くないですね。グラタンは、脂質は多いもののタンパク質は最低限入っています。野菜をもっと摂るなら、緑黄色野菜が入っているグラタンやドリアもおすすめですよ。
この場合は脂質を抑えたいので、コールスローサラダから油を使っていない副菜に差し替えてみましょう。
「コールスロー」から「たことブロッコリーのサラダ」に変えてみました。野菜を摂ることが最初のステップですが、さらに野菜の中でも「色の濃い野菜のおかず」を選んでみてください。ブロッコリーやトマト、かぼちゃ、ほうれん草などですね。ビタミンA・C・Eといった抗酸化ビタミンが多く含まれています。
他にも「豆腐とひじきの煮物」「ほうれん草の胡麻和え」など和風の惣菜やサラダもおすすめです。ひじきやほうれん草で、女性に不足しがちな鉄も摂取できますよ。
▼選び方のコツ[2]
野菜を選ぶなら、色の濃い野菜のほうが栄養価が高い
積極的にプラスしたい「野菜」と「タンパク質」
――どちらのメニューも「副菜(野菜)」をプラスしていましたが、コンビニでも健康な夕食を食べるときに気をつけるポイントはありますか?
やはり、「野菜」を意識してほしいですね。食費を押さえて安く簡単に食べようとすると、カップ麺+おにぎりといった組み合わせになりがちです。野菜はコストもかかるし、なかなか選択肢にあがらないんです。
――確かに、野菜のおかずって、ちょっと高いですよね。
ただ長い目で見ると、体重が増えやすくなるし将来的に健康も害してしまうので、できれば毎食、せめて1日1回は野菜を食べるよう目標にしてください。
――野菜以外に意識して選ぶものはありますか?
肉や魚など、タンパク質も意識しましょう。また、女性だとおにぎりとサラダという組み合わせをする方もいるでしょう。これはヘルシーだけど、カロリーもタンパク質も足りない食事です。タンパク質は筋肉などの体を作る重要な成分です。さらに貧血予防になりますし、美しい肌や髪を保つためにも必要なんですよ。
タンパク質を摂るなら、サラダチキンを取り入れたり、カップ麺+ツナ、ざるそば+温泉卵のように、肉や魚をプラスしてもいいですね。それからヨーグルトを足しても。ただ1カップでは必要な量には足りないので注意してください。
それから、パスタサラダは1品で炭水化物・野菜・タンパク質が全部取れますね。
「摂り過ぎ」に注意したい2つの栄養素
――商品の容器にカロリーやタンパク質が書いてありますが、これは見たほうがいいですか? また、何に注目すればいいですか?
できれば見てください。様々な項目がありますが、注目したいのは「カロリーと塩分」です。
まずカロリーですが、「自分が何kcal食べたか」の把握を始めましょう。コンビニの食事は栄養成分表示が書かれているので、カロリーも計算しやすいですよ。
職種や年齢、体型、座り仕事か動く仕事かなど環境によって必要なカロリーは異なりますが、カロリー表示を見て、低い方の商品を選んでみるなど、意識してほしいですね。
塩分の摂り過ぎも課題になっています。厚生労働省による2020年の「日本人の食事摂取基準」では、1日のナトリウム(食塩相当量)は男性が7.5g未満、女性が6.5g未満としています。これを守るのは実はけっこう大変ですが、「1食3g」を目安にしましょう。
塩分を取りやすいのは、麺類の汁やドレッシングですね。麺を食べたら汁は残す、ドレッシングは半分だけ使う、コロッケは下味が付いているからソースを付けずに食べるなど、塩分を減らすよう意識してみましょう。
――味の濃いものが好きな人だと、あっという間に超えそうです。
濃い味を食べたいときは、組み合わせを考えましょう。塩分を排泄する役割のあるカリウムや食物繊維を摂取するのも良いですね。
朝食・昼食・夕食の選び方
――朝食や昼食だと、また選び方のポイントは変わりますか?
基本の「主食・主菜・副菜」を選ぶということは同じです。もし気をつけるなら、それぞれこんなポイントを意識してみてください。
■朝食:タンパク質を意識しよう
朝食で忘れがちなのはタンパク質です。おにぎりならツナ・鮭・肉系の具を。もち麦や大麦のおにぎりなら食物繊維も確保できますよ。また具ありの味噌汁や、牛乳を取り入れてもいいですね。
なお、菓子パンは血糖の値が急に高くなり精神的にも負担がかかるので、それよりも食物繊維・ビタミン・ミネラルも摂取できるバナナなどのフルーツもおすすめします
■昼食:炭水化物はほどほどに!
活発に活動する時間帯ですが、デスクワークの人は意外とカロリーオーバーになってしまうケースも。お弁当はご飯(米)の量が多いので、食べすぎには気をつけてください。炭水化物を摂ることで眠気も助長されてしまいます。でも、だからといってご飯を食べないのはNGですよ!
■夕食:脂質に注意、汁物は満足感が高くて◎
夕食を食べたあとは寝るだけなので、脂質の摂り過ぎに注意しましょう。また、お酒を飲むからオツマミで済ます方もいると思いますが、野菜や副菜をしっかりとってくださいね。お酒に合うオツマミは加工物が多く、塩分や脂質が高いので要注意。
冬のおすすめは、一人用の鶏団子鍋。野菜やタンパク質を摂れる上に胃腸にも優しいメニューです。暖かい料理や汁物は、たくさん食べた感が得られます。おでんも良いですね。夏場だと、冷奴ともずくの組み合わせや、納豆も良いでしょう。
――栄養素を意識すると、コンビニでの選び方も変わってきそうですね。
そうですね。体は食べたものでできています。今あなたが食べているものは「10年後の健康につながる」という意識を持ってみましょう。栄養バランスの良い食事は、健康への投資ですよ。ぜひ、野菜やタンパク質を意識して摂り入れてください。
――平澤先生、ありがとうございました!