山崎八段は久保利明九段に敗れるも、競争相手の郷田真隆九段も敗れて昇級決定

第79期順位戦B級1組(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の12回戦が2月4日に東西の将棋会館で一斉に行われました。首位を走る山崎隆之八段は久保利明九段に敗れたものの、競争相手の郷田真隆九段が松尾歩八段に敗れたため、A級への昇級を決めました。13期連続で在籍したB級1組についに別れを告げ、最上級クラスのA級に挑みます。


12回戦終了時のリーグ表。山崎八段の昇級と丸山九段の降級が決まった

12回戦の対戦カードと結果は以下の通りでした(左が勝者)。屋敷伸之九段は抜け番です。

久保利明九段(5勝6敗)-山崎隆之八段(9勝2敗)
永瀬拓矢王座(8勝3敗)-行方尚史九段(3勝8敗)
松尾 歩八段(5勝6敗)-郷田真隆九段(7勝4敗)
木村一基九段(7勝4敗)-千田翔太七段(5勝6敗)
近藤誠也七段(7勝4敗)-阿久津主税八段(4勝7敗)
深浦康市九段(3勝8敗)-丸山忠久九段(4勝8敗)

▲山崎八段-△久保九段戦は初手から▲9六歩△9四歩という異例の出だし。その後も山崎八段は独特な駒組みを進め、未知の局面へといざないます。中盤、山崎八段は金を四段目、玉を三段目に配置し、玉自らで相手の攻撃陣を受け止めにかかりました。

しかし、久保九段がうまく戦機を捉えます。銀冠の堅陣を生かして、強く駒交換を挑んで山崎玉を薄くしていきます。粘る山崎八段でしたが、久保九段の寄せは正確。最後は必死をかけられた局面で、山崎八段の投了となりました。

この日山崎八段が昇級する条件は、①自身の勝利②競争相手の永瀬王座か郷田九段の敗北、というものでした。山崎八段が投了する約1時間前に永瀬王座は勝利しており、山崎ファンの注目は▲松尾八段-△郷田九段戦に集まります。

そのころの局面は松尾八段が劣勢。しかしながら、自陣で長いこと眠っていた飛車の活用がようやく叶い、逆転への光がさしているという場面でした。

そして、郷田九段は132手目に失着を指してしまいました。この手を境に形勢逆転。松尾玉を縛り付けていた桂を銀で除去した手が、郷田玉への詰めろとなったのです。郷田九段は急遽詰めろを受けましたが、流れを変えることはできませんでした。最後は松尾八段が郷田玉を詰まして勝利。この瞬間、山崎八段の昇級が決まりました。

残る昇級枠は1つ。昇級の可能性があるのは、8勝3敗の永瀬王座と、7勝4敗の木村九段の2人です。郷田九段、近藤七段は順位が悪いため、昇級はなくなりました。最終戦で永瀬王座は自身が勝つか、木村九段が敗れれば昇級。木村九段は自身が勝った上で永瀬王座が敗れれば昇級となります。

一方の残留争いですが、最終戦抜け番の丸山九段の降級は決まってしまったため、降級枠は残り2つ。降級の可能性があるのは、危ない順に深浦九段、行方九段、阿久津八段の3人です。それぞれの残留条件は以下の通りです。

阿久津八段:自身が勝利するか、行方九段・深浦九段が共に敗れる
行方九段:阿久津八段が敗れた上で、自身が勝利する
深浦九段:阿久津八段と行方九段が敗れた上で、自身が勝利する

最終戦の13回戦は3月11日に行われます。昇級・降級のゆくえと、来期の順位を懸けた棋士の熱い対局から目が離せません。

棋戦優勝8回を誇る実力者の山崎八段がついに来期からA級に参戦。写真は2017年のJT杯で優勝した際のもの
棋戦優勝8回を誇る実力者の山崎八段がついに来期からA級に参戦。写真は2017年のJT杯で優勝した際のもの