狂言師の野村太一郎、落語家の桂文珍が30日、東京・銀座の二十五世観世左近記念観世能楽堂で行われた『狂宴御芸~狂言お笑い共宴~』公演に出演し、公演後に報道陣向けの取材に応じた。
吉本興業がサポートすることになった若手狂言師・野村太一郎のお披露目イベントとなった同公演。野村以外には落語界の重鎮・桂文珍、漫才界からは中川家、ミルクボーイ、ミキが格式高き能楽堂の舞台で初の漫才を披露した。
公演が終了した後に報道陣向けの会見が行われ、桂たちと同じ舞台に立った野村は「笑いの成り立ちや形態が違うんだなと感じましたね。普遍的なものを取り入れる落語、漫才はタイムリーでお客さんに寄り添っているところが狂言と違うなと」と狂言との違いを発見したそうで、「今回の催しの特徴である話芸というところでは繋がっていると思いました。色んな芸能が競い合っていくことを"立ち会い"と言いますが、話芸の立ち会いと思いながら務めました」と感想を語った。
一方の桂も「私もこういう場所で異なるジャンルの方とお仕事が出来るという緊張感、どうなるんだろうという期待が入り混ざりましたが、面白い色合いが出たというか化学反応が起こる感じでした。コロナ禍で人と会ってはいけない、喋ってもよろしくないという寂しい時代ですが、そうではなくて本当の豊かさはそういう楽しい会話だったり掛け合いの面白さだったり、そういう豊かさを共有できたのではないかと思います」と手応えもを掴んだ様子。狂言師という異なる芸能の野村が吉本のサポートを受けることについては「吉本の扉はいつも開いてます。あらゆる世界において開いてますから、ウエルカムです。出ていく者もおりますが」と笑いを誘いつつも、「孫みたいなものですよ。お若いから羨ましいです。その世代の人たちが芸を支えますから、皆さんに応援していただけるような狂言が新しく生まれることを祈ります」と野村にエールを送った。
野村の師匠は映画やドラマでも活躍している野村萬斎。自身の決断を萬斎がどう思っているのかという質問に野村は「さらなる自分の芸を極めるためにとご了承をいただいたと思っております。良い方向に転がっていくことを望んでいると仰っていたので、悪い印象は持ていないと思いますし、今後どういう展開になるのか期待していると思います」と明かしつつ、「今日の公演と同じように落語や漫才の方たちのお力を借りつつ、狂言の魅力を発信しながら、若い世代のファンを増やしていきたいと思っています」と意欲を見せていた。