JR中央線の武蔵境駅から多摩川のほうへと進んでいく西武鉄道の路線、多摩川線の多磨駅は、もともと西口に駅舎があり、東口からの利用者は地下通路を利用して西口に行き、そこから駅を利用するという形になっていた。駅構内に構内踏切があり、下り列車を利用する際にはそこを渡らなければならなかった。
一方、東口は調布・飛田給方面へ向かうバスの発着所があるだけでなく、東京外国語大学が2000年にこの地に移転し、駅の利用者も増えていった。イトーヨーカドーを核とした大規模商業施設「アリオ」のオープンも予定されている。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の会場周辺駅としても位置づけられ、多くの利用者が予想されていたという。
大会が延期になった関係で、工期の見直しが行われ、12月23日に多磨駅の東西自由通路と橋上駅舎が供用開始されることになった。これを前に、12月22日、府中市と西武鉄道が開業記念式典と内覧会を行った。
■新駅舎は「自由通路が明るくて気持ちがいい」
この事業は東京都府中市が主として計画を進め、西武鉄道が協力するという形で進められた。それゆえ、式典の最初に挨拶に立ったのは府中市長の高野律雄氏だった。
多磨駅を「本市東部の核となる駅です」と紹介した高野市長は、多磨霊園の桜の木についても触れ、「桜が美しい未来を感じさせる地域であり、その地域に愛着と希望をもってほしいと思っています」と語った。
続いて挨拶した西武鉄道代表取締役社長 社長執行役員の喜多村樹美男氏は、「これまでの駅舎では、構内踏切がネックとなっていました」と過去の問題点を述べた一方で、「新しい駅舎は自由通路が明るくて気持ちがいい」と新駅舎の感想を語っている。
■自由通路から改札内まで「桜」があしらわれた駅に
新駅舎は鉄骨造りの2階建てとなっている。東側から外観を見ると、ガラスの内側に鉄骨が渡され、力強いイメージが感じられた。その一方で緑もあしらわれ、多摩地域の自然の豊かさも感じられるものとなっている。
自由通路は、東西に上りのエスカレーターが設置され、エレベーターも東西それぞれに設けられた。東西それぞれの階段やエスカレーターを上った先には、地域の人々が作った「桜の花びら」を集めて作り上げた「桜」を用いたメモリアルアートが設置されている。
改札口を通ると、行先案内の上にも桜があしらわれている。改札内の壁にもメモリアルアートが設置され、その場所から電車の走る姿を見ることができる。
ホームは1面1線で、内覧会の際にはまだ新駅舎からホームに降りることができなかった。階段の先には、工事で使用された足場などをまとめたものが見える。西武鉄道の担当者によれば、「22日終電後に片付けます」とのこと。なお、ホーム自体は10月24日から使用開始されている。
トイレは男子用・女子用の他に、「だれでもトイレ」が用意された。男子用トイレは個室にウォシュレットが設置されており、ベビーシートも設けられている。
もともとの多磨駅は、地下通路を通らないと東口から西口へ行くことができず、かつバリアフリーなども考慮されていないような状況だった。多磨駅周辺の発展にともない、駅自体を改め、多くの人に利用しやすい駅にしなければならなくなった。そういった状況の中で、駅が整備され、多くの人に利用しやすい駅となった。
いままで使用されてきた地下通路など、今後は利用できなくなるものの、これからはエレベーター・エスカレーターを備えた自由通路を多くの人が利用できるようになる。これまでの不便さが解消されることだろう。