大型台風の接近のたびに自宅や身近な建物は影響を受けないか心配になることがあるかもしれません。台風で窓が割れないように養生テープなどで補強する場合がありますが、本当に効果があるのか気になっている方もいるでしょう。
本記事では台風の際に養生テープを貼る理由や効果、正しい窓の補強方法、台風接近中の過ごし方について解説します。
台風で窓に養生テープを貼る理由
台風が近づいてくると、防災対策として窓ガラスに養生テープやガムテープ、プチプチなどを貼る人が多くみられます。なぜ養生テープなど貼るのか理由について紹介します。
強風だけでガラスが割れるケースは少ない
台風で窓ガラスがあおられるとガラスが割れてしまいそうで心配になります。しかし建物は建築基準法やJIS(日本産業規格)を守り作成されているため、そう簡単には壊れません。
窓ガラスの場合は、耐風性、水密性、気密性など10項目の規定があります。耐風圧性でみるとJISはS-1からS-7の等級があり、一番等級が低いS-1ランクの窓ガラスでも風速約36m/sに耐える仕様になっています。
つまり、窓ガラスもある程度の風には耐えられるよう設計されているため、風の力だけで割れる可能性は低いです。
窓ガラスが割れる主な原因は飛散物
窓の耐風圧性とは、窓ガラスに均一に力が加わった場合が想定されています。そのため、もし何かが1カ所にぶつかった場合は窓が割れてしまう可能性があるのです。
そこで、台風が近づいてきた場合や風が強い場合は、窓を保護してものがぶつからないようにするための対策が必要です。また、窓の破損防止対策には庭やベランダにあるものを屋内に取り込んだり片づけたりすることが重要です。
片づけておいた方がいいもの
- ゴミ箱
- 物干し竿
- 傘
- 庭ほうき、ちり取り
- 植木鉢
- ガーデンテーブル、チェア
- 自転車
どうしても屋内に入れられないものは紐などで固定したり支柱を立てたりする対策が有効です。
風の強さと吹き方 気象庁では風の強さをさまざまな表現で知らせています。一般的に風速20mを超えるとものが飛ぶことがあるため窓ガラスが割れる危険性が高くなり注意が必要です。
風の強さ (予報用語) |
平均風速 (m/s) |
人への影響 | 屋外・樹木の様子 | 建造物 |
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やや強い風 | 10~15 | ・風に向かって歩きにくくなる ・傘がさせない |
・樹木全体、電線が揺れはじめる | ・といが揺れはじめる |
強い風 | 15~20 | ・風に向かって歩けない ・転倒する人も出る ・高所での作業はきわめて危険 |
・電線が鳴りはじめる ・看板やトタン板が外れはじめる |
・屋根瓦・屋根葺材がはがれるものがある ・雨戸やシャッターが揺れる |
非常に強い風 | 20~25 | ・何かにつかまらないと立っていられない ・飛来物によって負傷するおそれ |
・細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れはじめる ・看板が落下・飛散する ・道路標識が傾く |
・屋根瓦、屋根葺材が飛散するものがある ・固定されていないプレハブ小屋が移動、転倒する ・ビニールハウスのフィルムが広範囲に破れる |
25~30 | ||||
・屋外での行動は極めて危険 | ・固定の不十分な金属屋根のふき材がめくれる ・養生の不十分な仮設足場が崩落する |
|||
猛烈な風 | 30~35 | |||
35~40 | ・多くの樹木が倒れる ・電柱や街灯で倒れるものがある ・ブロック壁で倒壊するものがある |
・外装材が広範囲にわたって飛散し、下地材が露出するものがある | ||
40~ | ・住家で倒壊するものがある ・鉄骨構造物で変形するものがある |
※引用:気象庁|風の強さと吹き方
台風から窓を守るために知っておきたいこと
台風で窓ガラスが割れる原因は風にあおられた飛散物がぶつかることが一般的です。ここでは、できるだけ被害を少なくするために、正しい養生テープの貼り方を紹介します。
養生テープは貼っても意味がない?
窓ガラスはある程度の風圧に耐える強度を備えています。「養生テープを貼れば窓の強さが補強できて、窓は割れない」と思われることがあります。
しかし養生テープを貼りさえすれば、台風から窓ガラスが守られるという認識は誤りです。アメリカの国立ハリケーンセンターの所長は、全国ハリケーン会議で窓へテープ類を貼る行為に対して「誤った安心感につながる」「やめなさい」と呼びかけています。
同所長は、養生テープを貼るだけで安全対策ができたと過信するのではなく、そもそもガラスにものがぶつからないように周囲を片づけたり雨戸を閉めたりする準備が必要だと訴えているのです。
養生テープを窓に貼ると飛散防止になる
養生テープを窓に貼り付けておくと、何も対策しない場合と比較してガラスは強度が上がります。万一強い衝撃でものがぶつかった場合には、ガラスが飛び散りにくくなる効果が期待できます。
たとえば人が木片を窓に投げつけると、窓ガラスは簡単に割れます。しかし、木片が養生テープと重なる部分にぶつかった場合は窓ガラスが割れにくくなるのです。
もちろん養生テープで窓全体を補強しているわけではないため、養生テープがついていない部分に木片などが当たった場合は窓が割れる可能性がありますし、風の勢いが強く、ぶつかった衝撃で養生テープが切れてしまうような場合も窓ガラスが割れてしまう恐れがあるでしょう。
養生テープの正しい貼り方
台風対策として窓ガラスに養生テープを貼ると一定の効果が期待できます。はがしやすさを考えると、ガムテープより養生テープが便利です。
【窓ガラスへの養生テープの貼り方】
(1)窓の全体に対して養生テープを縦、横、斜めの米印に貼る
(2)口のようにガラスの外側を囲うような形に貼る
ただしある実験では、養生テープなどを貼った窓に飛散物がぶつかり窓が割れてしまった場合、何も対策をしなかったときに比べるとガラスの破片が鋭く大きくなる傾向があるとわかりました。細かな破片は飛散しにくくなりますが、破片そのものは大きくなる可能性がある点に留意しましょう。
窓の内側と外側にも工夫を
上記の実験も踏まえ、台風対策としてガラスに養生テープを貼ることに加え、窓の外側と内側の枠にプラベニヤか段ボールなどを貼るとさらに安心です。台風に伴う雨で段ボールが濡れてしまうと効果が低くなるため、屋外側の補強にはプラベニヤがおすすめです。
台風時の簡単な窓対策
すでに台風の影響で雨や風が強まっている場合は、無理に外の片づけや屋外の窓の補強などを行うのは危険です。窓の補強以外に家の中からできる台風対策を紹介します。
ブラインド、雨戸、カーテンを閉める
雨戸やシャッターがある場合は、ものがぶつかっても窓ガラスが割れるリスクを大きく下げられます。また、ブラインド、カーテンを閉めておくと万一窓ガラスが割れた場合に、室内に破片が飛び散るリスクを減らせます。
台風接近中は窓を開けない
台風で停電した場合、蒸し暑くて窓を開けたくなるという場合があります。しかし窓を開けてしまうと、窓の風に対する強度が弱くなってしまいます。台風が近づいている際は、窓を開けないようにしましょう。
万一窓が割れた場合は近づかない
窓ガラスが割れて室内に飛び散ってしまった場合は、台風が過ぎ去るまで近づかないように努めましょう。慌てて片づけをしたくなりますが、窓がさらに割れて破片が吹き込んできたり、別のものが窓から飛び込んできたりするかもしれません。
養生テープの代用品におすすめのアイテム
養生テープのほかに窓の補強に役立つアイテムは以下のようなものがあります。
発泡スチロール
発泡スチロールはすき間を埋めるのに活躍します。板状のものは段ボールやプラベニヤのように窓の補強に使えます。
また、窓が壊れていて建てつけが悪くなっている場合やすき間が空いている場合には、発泡スチロール板をほどよい大きさにカットして、窓にはめこみ隙間を作らないようにすると窓のがたつきが抑えられます。
防犯フィルム・飛散防止フィルム
フィルム類を窓ガラスに貼り付けるとガラス自体の強度が高まります。価格の相場は数千円程度。美観を損ねず貼り付けたままにできるほか、窓を割って侵入する空き巣などの被害が軽減できます。
強化ガラスへの変更やシャッターの設置
強化ガラスへの交換は数万円程度、シャッターの追加設定は十数万円程度から取り扱われています。窓の大きさなどにより価格は異なりますが、シャッターを閉めて台風から簡単に窓ガラスが守れます。
台風対策の養生テープ補強は他の対策と組み合わせて行おう
台風の際に養生テープを貼るのは窓ガラスの破損防止よりも飛散防止の目的が大きいです。窓に養生テープを貼り付ける場合には、窓全体に対して米型や口型に貼り、プラベニヤや段ボールなどと組み合わせるのがおすすめです。発泡スチロールなどでの代用も可能なため、状況に応じて準備を整えましょう。