「佐々木さん」「諸々」などで使う「々」は、漢字を繰り返すときに使用する躍り字(おどりじ/踊り字)の一つで、漢字としての読み方はありません。
本記事では「々」の詳しい意味や読み方、呼び方や、人に説明するときに何と言えばいいかを解説。PCやスマホでの入力方法(変換方法)や、使い方の注意点、「々」を含む四字熟語もまとめました。
この記事を読めばもう、「々」を入力する際に、いったん「佐々木」と入力して、「佐」と「木」を削除する日々とはお別れです!
「々」の読み方や、呼び方とは
まずは読み方がわからないとパソコンで入力できなかったり、ほかの人に説明しにくかったりと不便なこともあります。ここでは「々」の読み方や基本的な情報をチェックしていきましょう。
「々」は繰り返しを意味する記号で、漢字としての読みはない
そもそも、「々」はズバリ漢字ではなく記号です。漢字であってもアルファベットであっても、「字」であるためには「音」を表す必要があります。つまりそれ単体で独自の読み方がなくては、字として成立しません。
「々」の躍り字は、例えば「其々」と書けば「ぞれ」、「人々」と書けば「びと」、「野々村」と書けば「の」と、その読み方は前の漢字によって変化し、「々」独自の音はありません。
「々」は音を表さないため、字ではない、つまり「漢字ではない」ということです。JIS漢字などの世界で「々」などの躍り字は、「繰り返し記号」と呼ばれています。つまり「々」は「記号」なのです。
「々」の呼び方は「ノマ」など
漢字ではなく記号である「々」に独自の読み方はありませんが、カタカナの「ノ」「マ」に見えることから「ノマ」「ノマ字点」と呼びます。そのほか、同じ漢字を繰り返すときに使うため「同の字点」という呼び方もあります。
参考までに「々」と同様に躍り字の「ゝ」は「一の字点」、「く」は「くの字点」と呼ばれています。
「々」を人に説明するには?
電話などで「々」を説明するときには、「『時々』『長々』の漢字の2つ目の、繰り返しを意味する躍り字」と伝えればいいでしょう。人によっては「躍り字」が何かわからない場合もあるので、躍り字とは言わず、シンプルに「繰り返しを意味する字です」と伝えることも可能です。
厳密には文字ではないので「字」とはいえませんが、人に説明するときには伝えることが優先です。細かいことにこだわる必要はありません。ただしビジネス上での説明や対面で説明する、あるいは細かいことを気にするタイプの人に説明するときには、「記号」「躍り字」という正しい名称を使用するように心がけましょう。
「々」の打ち方(出し方)とは
PCやスマホなどで「々」を入力するときにはまず、「時々」など「々」を使う言葉を入力して前の文字を消す、という方法があります。
また使用する端末やシステム辞書によっても異なりますが、「どう」「おなじ」「繰り返し」「のま」などで変換できるようです。
ちなみにiPhoneであれば、上記のうち「どう」「おなじ」で変換できることを確認しました。また、iPhoneでは「8」からのフリック入力でも入力が可能です。
「々」の意味とは
「々」は同じという意味で、もともと「同」という漢字の古字である「仝(どう)」という漢字がもとになっているといわれています。
「々」は「躍り字」の一つですが、「躍り字」はほかにも「繰り返し符号」「重ね字」「畳字(じょうじ)」とも呼ばれます。「、」「。」などと同様に補助記号の仲間です。
躍り字の使い方の注意点
同じ文字を繰り返すという意味で使われる「々」ですが、「々」に限らず「ゝ」「ヽ」など、躍り字には「一つの単語を繰り返すときに使う」というルールがあります。
例えば「営業部部長」は、「営業部」「部長」の2つの単語から成り立っていますので、「営業部々長」と表記することはできません。
また基本的にフォーマルな文書では使用を控えたほうがいいとされていますが、「代々木」「菜々子」などの固有名詞のように、「々」が正式名称として使われている場合は問題ありません。
ただし、「々」は記号のためパソコンなどの機種や使用している漢字変換文字などによっては、機種依存文字となってしまう可能性があります。あえて使う必要がないのであれば、デジタル文字の場合は使用を控えたほうが無難です。
漢和辞典に掲載されている理由
「々」は漢字ではないのに漢和辞典に収録されているケースもあります。
漢字ではないのに漢和辞典に掲載されていることは不思議ですが、ユーザーから「々」についての質問が多いため、要望に応える形で掲載しているという出版社側の判断のようです。漢和辞典では、「丿」の部首の部分に掲載されています。
「々」を使った四字熟語の一例
「々」を使った四字熟語はたくさんあります。知っておくと便利な四字熟語をご紹介しましょう。
威風堂々(いふうどうどう)
態度や雰囲気が立派で威厳のある様子で、「威風」は威厳に満ちあふれた雰囲気、「堂々」はたくましく威厳のある様子のこと。「威風堂堂」とも書く。
侃々諤々(かんかんがくがく)
相手に遠慮せず、激しく議論をする様子。また遠慮なく、自分の思いをはっきりと伝えること。「侃々」は信念を曲げず心が強い様子、「諤々」は思っていることをはっきりと伝える様子。省略して「侃諤(かんがく)」、「侃侃諤諤」とも書く。
気息奄々(きそくえんえん)
やっとのことで呼吸をしているような、瀕死(ひんし)の状態。または国や組織などが息も絶え絶えで、今にも滅びそうな苦しい様子。「気息」は呼吸、「奄々」は呼吸が止まりそうな、弱々しい状態のことを指す「気息奄奄」とも書く。
興味津々(きょうみしんしん)
尽きることなく物事をおもしろいと思う気持ちが湧いてくること。「興味」は物事にひかれておもしろいと思う気持ち、「津々」は沸き続けること。「興味津津」とも書く。
虚々実々(きょきょじつじつ)
お互いに戦略のすべてを出し切って、全力で戦うこと。または真実と嘘を巧みにあわせてお互いの腹の内を探り合う様子。「虚」は相手の弱いところ、「実」は相手の強いところ。「虚虚実実」とも書く。
喧々諤々(けんけんがくがく)
次から次へと意見を出して騒がしい議論の様子。「喧々」は騒がしい様子、「諤々」は遠慮せずに、思うことをしっかり主張する様子。「喧喧諤諤」とも書く。
喧々囂々(けんけんごうごう)
多くの人たちがそれぞれ好き勝手に話してやかましいこと。または多くの人たちが激しく騒ぎ立てて事態が収束しないこと。「喧喧囂囂」とも書く。
三々五々(さんさんごご)
「あっちに三、こっちに五」という意味から、少数の人たちが固まって行き来する様子や、人や物などがあちらこちらに散らばっている様子を指す。「三三五五」とも書く。
「々」の変換方法を覚えて実務に役立てよう
名字や四字熟語にもよく使われる「々」は、文字ではなく記号です。「同じ」という意味を持つ「々」には独自の音がないため固有の読み方はありませんが、意味や使い方のルールがあるので覚えておくと便利です。
文字ではないとはいえ、人に説明をするときは相手に伝わることが重要なので、正しい名称など細かいことにはこだわらずに説明しましょう。「どう」と入力して変換するなど、パソコンやスマホでの変換方法も覚えてしまえば楽なので、この記事を参考に実務に役立ててください。