止まらぬ永瀬玉の進軍。最後は入玉した玉も寄せに働く
渡辺明王将(名人・棋王)への挑戦権を争う、第70期王将戦挑戦者決定リーグ(主催:スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社)の▲佐藤天彦九段-△永瀬拓矢王座戦が10月11日に東京・将棋会館で行われました。結果は110手で永瀬王座の勝利。初参加の王将リーグ初戦で初白星をあげました。
先手の佐藤九段が矢倉模様に進める一方、永瀬王座は急戦狙いの駒組み。両者の玉が囲いに収まることなく、佐藤九段が仕掛けて戦いが始まりました。
佐藤九段は桂を犠牲に飛車交換を果たします。永瀬陣は金銀がバラバラで、薄い形。佐藤九段が良くなったかに思われましたが、意外と次の攻め筋が見えません。佐藤九段が飛車を打ち、桂を取って手駒を増やす間に、永瀬王座も飛車・角・桂で佐藤玉に迫っていきました。
佐藤九段が攻めあぐねるのとは対照的に、永瀬王座の攻めは的確に佐藤陣に刺さっていきます。一時は金銀4枚に守られていた佐藤玉はいつしか金2枚だけの守りに。永瀬王座の攻めがひと段落したタイミングで佐藤九段も反撃に出ますが、永瀬玉はまるでウナギを手づかみするがごとく、スルスルと上部へ逃げ出してつかまりません。6四~5五~4六~3七と斜めにどんどん逃げて、永瀬王座はついに入玉を果たしました。
持ち駒が歩だけになってしまった佐藤九段は馬を切って金を手に入れます。しかし、この瞬間が甘かった。このすきを見逃す永瀬王座ではなく、角打ちから佐藤玉を詰まし上げました。詰みには最前線に逃げ出した3七の玉も働く見事な手順でした。
今期が自身初の王将リーグ参加となっている永瀬王座。初陣を勝利で飾りました。一方の佐藤九段はこれで2連敗。残留に向け、もう負けるわけにはいきません。