こうしたリニューアルの思い踏まえ、タイトルはこれまで英語だった『it!』を、カタカナの『イット!』に変更し、番組ロゴを刷新。「まさにこれも、キー特性の話をデザイナーさんにして、作ってもらいました」。
「!」は、ダイヤモンドを模したデザイン。ここに込めたのは、主要ターゲットであるF2層にとって魅力的なアイテムであるのとともに、「自分はキー特性というのを“時代の空気”と置き換えています。その上で、ダイヤモンドは多面体で光の当たる角度で見え方が変わるのですが、今の世の中で、ニュースに対してみんながいろんな考え方を持っている状況を、まさに体現していると思うんです。最近ではダイバシティー(多様性)と言われますが、答えが1つでなくてもいいんだという意味もあります」と明かした。
世の中の人たちが「ニュースに対して、いろんな考え方を持っている」ということは、このコロナ禍での報道を通じて特に痛感したという。
「例えば、Go To トラベルにしても、東京だけが除外されて地方と対立の構造にされて、立場によって全く価値観が変わってしまい、“この指とまれ”みたいな考え方がなくなってきているということがあります。そうした中で、我々が伝えていくニュースって何だろうと問いながら、答えは簡単には見つかっていませんが、とにかくその日を一緒に生きている方々が何かを受け取って、また明日も1日頑張ろうと思ってくれるような番組にしたい。それこそが、大変なこの時代を生きるキー特性の皆さんを意識した番組作りだと思っています」
■キーワードは“優しさ”
外出自粛で、日用品や食料品の“買いだめ”が発生した中、テレビの報道・情報番組は当初、空の商品棚を映し、品薄の現状を伝えていたが、同番組では、在庫が豊富にあることがビジュアルで分かるという取材方針をいち早く打ち出し、加藤が毎日「“買いだめ”をあおりません」と宣言した。また最近では、有名人の自殺を報道する際、センセーショナルに扱わず、最後に必ず相談窓口を紹介するという取り組みを、各局が行うようになっている。
「テレビニュースの歴史には、センセーショナルにドギツさを煽って報じたほうが数字が獲れるという時代が間違いなくあったと思うんです。でも、今の時代にそんなことは当然受け入れられないし、東日本大震災や今回のコロナで社会が大きく変わった中でのキーワードは、“優しさ”ではないかと思っています」という上田平CP。
「自殺のニュースがあれば、見ている方が同じような行動に走らないための大切な情報をお伝えすることが大事。さらに、大坂なおみ選手が全米オープンで優勝するとともに、マスクで人種差別に抗議する姿に多くの人の心を打つというのも、キー特性(=時代の空気)を考える中で、1つの象徴的な流れなのかもしれないと思いました」と、社会の変化を捉えて番組制作に臨んでいる。
●上田平吉弘
1968年生まれ、茨城県出身。東京大学を卒業後、92年にフジテレビジョン入社。『ニュースJAPAN』『スーパーニュース』などを担当し、『Live News イット!』チーフプロデューサー(現任)。