都心回帰と言われ始めて、だいぶ年数が経ちました。それに伴い都心部にマンションが林立していきました。しかし戸建て住宅にも根強い人気があります。都心で住まいを購入するための選択ポイントとして、どのようなものが考えられるでしょうか。
「都心」と言われるエリアの概念は人それぞれですので、東京で言えば、山の手線駅から外側に2駅程度のイメージとして、戸建てとマンションを比較してみましょう。
都心に住む必要性を考える
戸建てかマンションかを考える際に、そもそも都心に住む意味が問われます。なぜ都心に住むのかで、戸建てが良いのかマンションが良いのかが多少変わってきます。子供の教育、仕事の都合、もともと都心が故郷、資産価値の維持など、いろいろなケースがあるでしょう。
また、ライフスタイルによっても違いが生まれます。住まいに何を求めるのか、子供が学童年齢になったら転居するのか、子供が巣立ったらどうするのか、老後もそのまま住み続けるのか、配偶者が亡くなり身の回りのことが不自由になったら……など長期のライフスタイルで考える必要があります。それによって戸建てが良いのかマンションが良いのかも違ってくるでしょう。
さらに一口に都心と言っても都心の範囲やエリアによっても異なります。個人的には住まいは環境の良いところに在来工法の戸建平屋住宅をしっかりとした構造で建てるのがベストだと思っています。しかしそれは、人里離れた山間地でない限り、実現は難しいでしょう。便利なところに住むためには2階・3建て住宅、低層・中層マンション、超高層マンションと上へ伸びいかざるを得ないのです。都心に住む以上、環境に適した建物にならざるを得ません。
「都心に住む」と考える意味を振り返ってみるとともに、住みたい場所の環境を照らし合わせてみれば、戸建てかマンションかがおのずと決まってくるのではないかと思います。
住まいの最大の役目は家族と財産の安全を守ること
住まいの役割の第一は、風雨をしのぐことはもちろん、犯罪や災害から家族と財産を守ることにあります。それは太古の洞穴暮らしから変わらぬ住まいの大切な役割です。その上で、家族が心身ともに健やかに暮らせ、子供を育てる場となります。さらに、そこでより楽しく豊かな人生を育む場でもあるでしょう。
何はともあれ住まいの第一の役割を最初に考えてみることが何よりも大切です。一言に「都心」と言っても、環境は様々です。
海抜の低い地域であれば、マンションの3~4階以上の方が無難です。あまりの密集地であれば、戸建て住宅は、たとえ耐火建築物であっても不安が残ります。反対に高台の住宅地で敷地にも余裕があれば、戸建て住宅でも安心でしょう。都心でも戸建住宅に適した環境のところがないわけではありません。ただし、おおむねそれらは高級住宅地と言われているところでしょう。
何よりも安全第一で考えることが大切です。東京は治水が進み、地下の貯水池の整備もあり、さほど洪水災害を聞かなくなりました。それでも高齢者は洪水経験をしている方が少なくありません。東日本多大震災の経験でもわかるように、自然の力に人工物は勝てません。想定外のことが起きるのが自然災害なのです。リスクの高いエリアやその地域にふさわしくない構造の建物は避けるべきなのです。
住まいと子育て環境について
子育てに居住環境は極めて重要です。赤ちゃんは常に親から話しかけられて刺激を受け続けることが大切です。赤ちゃんでなくても子供の健全な育成には、常に五感への刺激を受け続けることが必要なのです。それも均一な刺激ではなく、五感を刺激するためにはランダムな揺らぎの刺激が大切です。
大理石の床を素足で歩くのと木の床から受けるランダムな刺激とでは違いがあります。床板の下地があるところは固く、何もないところは歩く重みでわずかにたわみます。節の部分があれば、わずかな感覚の違いを感じ取れます。目や耳に入る刺激も同じです。風が起こす木々のざわめきや様々な音、木漏れ日の柔らかな色合いの変化、人々の暮らしのざわめきなどが五感を刺激していくのです。
マンションであれば、著しくこの要素は失われます。特に高層階の窓が開かない、IHで火の揺らぎがない、空調で均一の環境、外界のざわめきから閉ざされた環境等は、必ずしも子供の健全な成長には良い環境とは言えません。
マンションの高層階で子育てをする場合は、キャンプ等の非日常などで積極的に補うことが必要となります。戸建てであっても、敷地いっぱいに建物が建てられ、周囲も緑のない環境であれば、それに近いことが言えるでしょう。近くの公園や池や川、緑地などの環境も影響するでしょう。戸建て、マンションに限らず、子育てのためには五感を刺激する工夫と環境をチェックしておきましょう。
子育て世代であれば、戸建て住宅かマンションであっても緑豊かな地域の低層マンションか低層階を選択するのが良いと思います。
資産価値を考えてみよう
住まいは高額です。気軽に即金で買える方はごくまれでしょう。ほとんどは多額の住宅ローンを借り入れて数10年に渡って返済し続けなければなりません。したがって、住まいは万一の場合に換金できる資産でなければなりません。たとえその予定がなくても、より有利に換金したり貸し出したりできることが望ましいのです。資産価値が下がり、売却しても住宅ローンが残るようでは問題です。
戸建てでもマンションでも、資産として価値を長く維持できるものでなければなりません。
一般に戸建て住宅の方が土地の面積比率が高く資産価値は高くなる傾向にあります。都心であれば、特別な再開発等でない限り、マンションの敷地も余裕をもって建てられることはないでしょう。したがって一住戸当たりの所有敷地面積はごく僅かなのが一般的です。ただし戸建て住宅であっても、あまりに狭い敷地で無理な間取りで一般向けのものでなければ、当然資産価値は低くなります。駅近のひろびろとしたマンションの方が、資産価値が高いことも普通に考えられます。23区でも狭小空き家が社会問題になっているのです。
エリアや住まいの形態を問わず、住まいの購入に大切なことは安全と資産価値、暮らしの目的成就です。都心部で現実に考えれば、マンションという選択にならざるを得ないのが一般的かもしれません。大人の都合で都心に住む必要があったら、子供はそれに従わざるを得ません。
それでもそのメリット・デメリットを把握して、周辺の自然環境を活用したり、インテリアの工夫をしたり、自然に触れる休みの過ごし方の工夫をしたりして、子供の健全な育成環境を総合的に考えてみてください。