国土交通省は9日、リニア中央新幹線の静岡県内の工事について、大井川の水資源や自然環境への影響が軽微であると認められる範囲内で速やかにトンネル掘削前の準備工事を進める案を静岡県とJR東海に提示した。

  • 山梨リニア実験線のL0系

中央新幹線については、おもにトンネル掘削で生じる大井川の水資源への影響をめぐって静岡県とJR東海の主張が衝突しており、これを受けて国土交通省が事態の解決に向けて両者の仲立ちに入っていた。

この日、文書の形で公開された「提案」で同省は、流域市町にとって「大井川の水は死活的に重要」と静岡県の立場に理解を示し、有識者会議で結論が出るなど必要な手続きが行われるまで、「トンネル掘削工事に着手されることがあってはならない」とした。

その一方で、リニア中央新幹線の整備は「極めて大きな社会的・経済的意義を有するもの」だとも述べ、「とりわけ災害のリスクを考えた時、一刻も早い整備が望まれる」と早期の着工・完成を望む姿勢も見せた。

この2つの課題を両立させるため、同省は有識者会議などトンネル掘削工事に必要な検討や手続きと並行して、「坑口等整備(=準備工事)」を勧めることを両者に提案した。具体的には、濁水処理施設、坑口の整備などトンネル掘削の前段階の工事を指す。この準備工事には数カ月かかる見込みであるため、掘削工事前に着手しておくことで全体の工程を前倒しできるメリットがあるとした。

静岡県に対しては、準備工事は基本的に地上の表面で行うことから水資源などに大きな影響を与えるとは考えにくいとして理解を求め、「なし崩し的」にトンネル掘削工事につながることはないとも説明。JR東海には、「国の有識者会議における議論等、必要な検討・手続きが終わるまで、トンネル掘削工事に着手しない」こと、静岡県には、「坑口等整備の速やかな実施を容認するものとし、7月の早い時期を目途に、必要な手続きを進める」ことをそれぞれ提案した。