筋肉体操ブームだが、必要以上の筋トレはアウターマッスルとインナーマッスルのバランスを崩してしまい、腰痛などの原因になりがちだ。『肩甲骨は閉じない、寄せない 開いて使う!』の著者であり、ストレッチの本も数多く出版する柴雅仁先生自身の体験から生まれた新しいトレーニング法と、筋トレとの違いや共通点に迫った。
筋トレ熱中後の不調を改善しようと、体の構造を学ぶ
Q:このトレーニングの始まりは、先生ご自身の体験からだとか?
A:中学・高校でサッカー部に所属していましたが、小さくて細い体格がコンプレックスで筋トレにハマりました(笑)。ただ重いものを持って黙々とやっていて、やればやるほど見た目が変わりましたが、その後、ケガや痛みに悩むようになりました。とくに不調だった肩を改善しようと本気で勉強し、ケガのない機能的な体にするための理論に行き着いた後、今に至っています。
Q:スポーツにはケガや故障が付きものです。
A:スポーツをする上では防ぎきれないケガもありますし、もともと体質的に故障しやすい人もいます。また、故障しても、仕方ないと思っている人も多いですね。例えば、肩が痛いとか、腰が張ってるとか、走っていたら肉離れになった時、「スポーツだから、仕方ない」で終わらせないほうがいいでしょう。
私の場合はなぜだろう?と原因を追究し、いろいろ学んでいくうちに、体の構造的な面を教えてくれる先生と出会うことができました。この分野を突き詰めることが面白くなって、独自のストレッチやトレーニングの方法論にたどり着きました。
インナーマッスルがバランスよく連動できれば、動ける体になる
Q:筋トレとの共通点でいえば、インナーマッスル*が大事ということですか?
A:そのとおり。内側の筋肉の使い方を理解したうえで筋トレしている人のほうが筋肉を活かすことができます。マッチョなのに動きがいい人っていますよね。ただがむしゃらに鍛えればいいのではなく、内外の筋肉のバランスを考えることが必要です。
やたらに重いものを挙げれば、パフォーマンスが上がる訳ではありません。野球で言えば鍛えることで筋肉がつくことよりも、球速が上がるか、飛距離が伸びるかということが大事です。 *身体の表面に位置しているアウターマッスル(表層筋)に対して、身体の奥(深層部)に位置している筋肉の総称として用いられる。
Q:このトレーニング法は、筋肉と関節の構造的な関係に注目しながら作られたとも言えますか?
A:そうです。筋肉と関節の関係をしっかり理解して、両方を使ったトレーニングがしっかりとできるようにしました。小さくても、華奢でも、パフォーマンスが発揮できるように設計しました。元々もち合わせた個々人の特性もありますが、筋肉や関節をしなやかに使える人のほうが、フィジカルは明らかに強くなることを知らせたかったのです。
筋肉に負荷はかけない、刺激して機能的に使えるようにする
Q:先生がトレーナーとして教えていらっしゃるのは主にどんな方でしょう?
A:私が発信していることに関心をもち、やってみたら体に変化があったという方や、体のどこかを痛めて相談に来られる方が多いですね。筋肉の使い方がおかしいと、やはり痛めてしまうケースが多い。試しにやってみて痛みが軽減した、取れたという人も少なくありません。
Q: インナーマッスルを整えることが腰痛の解消にもつながるのですか?
A:インナーマッスルの前鋸筋が機能し、わきの意識が高まると表と裏、両面から体の筋肉が機能するようになり、体幹が安定して体を機能的に動かせるようになります。前鋸筋が機能すると股関節を動かすインナーマッスル「大腰筋」も使えるようになり、結果的に下半身が安定し、腰痛の改善にもつながります。
■腰痛改善!自宅・オフィスでできるワンポイントレッスン■
1.椅子に座って足を組む
2.左手は椅子の背もたれを持ち、右手は小指、薬指、中指を握ってピストルポーズをとる
3.体をひねって右わき腹を伸ばす。そのまま3回深呼吸をする。これを左右で行う。
*写真/山上忠、イラスト/中川原透
監修/体軸コンディショニング協会