現在も拡大を続けるCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)への対応策として、通勤や出社による社員の感染リスクを下げるために、政府や東京都は在宅勤務やテレワークを推奨しています。

とはいえ、テレワークは約40年前から始まっている手法であり、日本で初めてテレワークが導入されたのは1984年頃になります。現在は、さまざまなテクノロジーが提供されていますが、日本での企業における導入率は2割程度にとどまっています。その一方で、アメリカでの導入率は85%に達しています。

参考:テレワーク総合ポータルサイト (厚生労働省)

働き方改革やオリンピック対策として、テレワークが推奨されているにもかかわらず、日本でなかなかテレワークの普及が進まない理由はどこにあるのでしょうか。

それには技術的な課題というよりも、日本人の特性や意識が関係していると考えられます。多くの日本人のマネージャーは、テレワークによりチームのパフォーマンスが下がると感じています。これは日本人の仕事のやり方が、成果ではなく労働時間を重視していることに起因すると考えられます。

総務省の「テレワーク実践活用テキストブック」では、「テレワークによって管理者と離れて働くことになるので、従来型のマネジメント を変えていく必要がある」と指摘しています。テレワークを導入するには、まず経営層や管理者がこのような考え方や管理手法を変えて、社員を信頼することが重要になります。

実際、テレワークを導入している企業は、未導入企業の1.6倍、生産性が高いという調査結果があります。

昨今、多くの企業がテレワークの導入を検討していると考えられますが、この機会に生産性向上という働き方改革における本来の役割について再考されることをおすすめします。このような時期だからこそ、生産性の向上を見据えたうえで、テレワークにおける環境構築を検討することが肝要となります。

最初に、オフィスを離れたリモート環境であっても、社内と同等の環境を整える必要があります。この環境では、情報漏洩などに備え、セキュリティが担保されていて、かつ、必要なデータにアクセスできる状態であり、アクセスのスピードも確保されていることなどが必要となってきます。

このようなテレワークを可能にするテクノロジーの1つに、デスクトップ仮想化(VDI)があります。VDIとは、クライアントコンピュータのデスクトップ環境を仮想化して、サーバ側で処理を行う仕組みです。リソースを仮想化してデータをデータセンターに集中させることで、従業員がオフィスにいようと遠隔地にいようとも、どんなデバイスからでもデータや他のアプリケーションにアクセスできるようになります。

  • テレワークの6種類のパターン 引用:総務省「テレワーク実践活用テキストブック」

  • 仮想デスクトップ方式の仕組み 引用:総務省「テレワーク実践活用テキストブック」

VDIの能力を十分に引き出し、エンドユーザーのパフォーマンスをサポートして、生産性の向上に結びつけるには、ストレージ性能が大きく関わってきます。VDIの実行においては、大量のI/O(入出力)処理が発生するワークロードが多く、そのような状況で通常のデスクトップ環境と変わらず、いかにパフォーマンスを発揮できるかが重要になります。

例えば、業務開始時刻に多数の社員が一度に仮想マシンを起動し、サーバのデータ読み取りが集中するブートストームやログオンストームがあります。この時、サーバやストレージに大きな負荷がかかり、処理が遅くなることがあります。さらに、昨今の事情によってVDIへのアクセス負荷が飛躍的に増加しているため、ストレージに求められる性能も極めて高い傾向にあります。

そんな状況下においてもVDIのパフォーマンス低下を改善するため、ハイパーバイザー、ネットワーク、ロード バランサー、セキュリティといった多くの関連技術の改善が行われていますが、最も効果的な解決策として、信頼性の高いフラッシュベースのストレージの導入が挙げられます。

VDIにフラッシュストレージを導入するメリット

VDIにフラッシュストレージを導入するメリットには、以下のような点があります。

  1. 通信データのボリュームやエンドユーザーの数にかかわらず、迅速な処理が可能なため、あらゆる職種や業界での利用が可能となります。例えば、データ容量の多い映像や画像を扱う設計者やデザイナーでもスムーズな作業が可能です。

  2. 高速で一貫性のあるデータエクスペリエンスを体験できるため、テレワークにおいてもストレスを感じることがありません。

  3. インラインデータ削減機能の高い削減率により、余分なストレージを購入する必要がありません。

例えば、ソフトバンクは3万を超えるユーザーが利用するVDI環境を構築し、働き方改革を推進しています。コールセンターにもVDIを適用し、個人情報に関する情報漏洩リスクの低減を図っています。同社はVDIの運用においては業務に直接影響を与えるため、ストレージ性能がカギとなると考えていました。フラッシュストレージの導入により、ユーザーがデスクトップで行う業務のパフォーマンスを確保するだけでなく、運用管理者の業務負担を軽減し、運用管理の効率を向上させています。

VDIにフラッシュストレージを適用することで、優れたパフォーマンスを発揮する安定したシステム構築が可能となります。これにより、企業の生産性向上に貢献すると確信しています。

著者プロフィール

岩本 知博



ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社
SE本部 プリンシパル・システムズ・エンジニア

2015年10月にピュア・ストレージ・ジャパン株式会社に入社、プリンシパル・システムズ・エンジニアとして、本社開発担当と連携しユーザーからの要望を製品に生かす、フィールドと製品をつなぐ役割を担っています。2018年3月まではアカウント担当のシニア・システムズ・エンジニアとして、日本でのビジネスの立ち上げと、テクノロジーの普及に大きく貢献してきました。

ピュア・ストレージ・ジャパン入社以前は、ネットアップのストレージ・エンジニアとして、アプリケーションとストレージを組み合わせたソリューション開発と普及、またフラッシュ技術の導入を促進してきました。ネットアップ社入社以前は、日本オラクルのデータベース・エンジニアとして、データベース機能と他社機能を組み合わせた実機での検証を前提としたソリューション開発に従事しました。会津大学コンピュータ理工学部(学科)卒業。会津大学大学院卒業。