「営業は足で稼げ」という言葉があるように、日本では長いこと対面での営業が熱心に行われてきました。もちろん、対面営業の素晴らしい部分もあります。その場の空気を感じることができ、相手の表情もよく確認できます。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、営業スタイルにも変化が訪れそうです。

連続起業家として数々の企業を立ち上げるだけでなく、ビジネス・ブレークスルー大学で准教授も務める小林慎和さんが思う、「これからの営業スタイル」とはどんなものでしょうか。

「対面営業で挽回」は赤信号?

みなさんは、対面で一度も会わずに案件を受注したことがありますか?
みなさんは、対面で一度も会わずにモノを売ったことがありますか?

こんな問いから、スタートしてみたいと思います。

まさにいま、緊急事態宣言まで出たウィズコロナのなかでは、営業のための外出もおぼつかないことだと思います。必然的に、打ち合わせ(営業ももちろん)はほとんどすべてがオンラインに切り替わってきました。コロナ終息後のアフターコロナも、この傾向は恐らく変わらないでしょう。

「いまはウィズコロナだからオンラインで思うように営業が進まない。でも、コロナが終息したらまた対面営業で挽回しよう」

そう考えている人は、黄色信号――いや、赤信号が灯っているかもしれません。アフターコロナの世界でもオンラインが主流になると想定して、これからの準備したほうが賢明です。

では、なぜアフターコロナでもオンラインミーティングでの営業がベストなのかを考えてみましょう。ここでのポイントは、「自分が取り扱う商品は、質がいいからきっとオンラインでも売れるだろう」という視点で判断しないことです。あなたの競合他者の動きを想像した際に、実際にどうなるかで判断しなければなりません。

たとえば、競合他社が営業活動のすべてをオンラインに切り替えたと想定します。オンラインで売りやすい商品説明のPDFや、オンラインでも説明しやすい営業文句もしっかりと用意したとしましょう。その競合他社は、オンラインだけで営業を「網羅的」に展開し始めるに違いありません。

対面営業も活用していたときは、1日あたり3件しか営業に回れなかったのが、オンライン営業に切り替えることで商圏は日本全国に広がり、1日あたり9件のミーティングをこなせるようになる可能性があるからです。いや、実際にこなせるようになるでしょう。移動時間を省略できるメリットは、あまりに大きいのです。

つまり、対面重視の営業スタイルでは、営業効率で何倍もの差をつけられる可能性が出てきます。そうなると、みなさんの会社の経営陣はこう考え始めます。

「うちもすべてオンラインで効率化し、営業効率を2倍に引き上げよう」

このような展開が予想されるので、いますぐにオンラインでも受注できるような、営業スタイルへの変革が必要だと思います。

では、具体的にはどう変えたらいいのか? ここからは、4つのポイントに絞って説明していきます。

(1)服装「その場は自宅でも、スーツやビジネスウェアを着る」

オンラインミーティングでは基本的に上半身しか相手に見えません。それでも、プロダクトが信頼性を売りにしているものであれば、自宅からのオンラインミーティングでもスーツやビジネスウェアが理想だと思います。イメージするべきは、報道番組のニュースキャスターのような服装でしょうか。

少し派手目のスーツで、胸元のポケットにチーフを入れるのもいいですね。女性なら、ジャケットの胸元にお花のバッジなどをつけることも効果的ではないでしょうか。

もちろん、ITスタートアップなどカジュアルなスタイルの会社であれば、スーツではなくTPOに合わせた服装がマッチするはずです。

総括すると、リアルのミーティングよりも相手に見える部分が限られる分、オンラインミーティングのほうがファッションに気を配らないと、相手に与える印象はよくなっていきません。このポイントだけはしっかりとおさえておきましょう。

(2)背景「アイスブレークをつくる壁紙を意識せよ!」

意外に盲点なのが、オンラインミーティングのときにおける「あなたの背景」です。散らかった雑然とした自宅の部屋や、無機質な壁やドアが見えることはマイナスにしかならないでしょう。その対策として、壁紙に商品紹介ページやQRコードなどを載せることも考えられますが、あまりに営業が押し付けがましくなるのも考えものです。

そこで、海外の観光名所の写真、プライベートで自分が撮影したお気に入りの写真、映画のワンシーンや、好きなアニメ映画などを壁紙にセットするのは面白い試みだと考えます。最初の営業のアイスブレークをその壁紙の話題から始めることで、「つかみはOK!」とできるからです。

背景画像というのは、これまでの営業ではまったく考えてこなかった要素です。営業相手、または、営業説明しようとするプロダクトに応じて前もって準備しておく必要があります。

(3)営業資料「通信遅延を考慮した資料作成でミーティングに挑む」

実は、これまでの営業資料で使っていたようなPDFは、オンラインミーティングでは不向きの可能性があります。今年は5Gが話題ですが、ビデオ通話のオンラインミーティングでは、通信の遅延にはじまり、画像が映らない、固まって動かないというアクシデントはつきものです。

高画質の画像を多用した営業資料は、その危険性がさらに高まります。さらに、高解像度の画像によって心象をよく見せるためにしっかりとデザインされた資料は、その効果が発揮されません。

なぜなら、よほど注意をひきつけない限り、相手先がその高解像度の画像やグラフを完璧に見てくれている保障はないからです。オンラインの相手は、ミーティングをしながらブラウザでニュースを読んでいたりする可能性もあります。ですから、共有している画面は見られていない前提で話を進めるべきです。

いずれにしても、いままでのような営業資料は見直しが間違いなく必要です。文章のわかりやすさ、細かい画像やグラフは使わないということだけでなく、ファイルサイズを軽くすることで遅延対策を施すことも重要。そして、画面上で共有する資料がまったくなくとも、伝えたいことが伝わるような営業文句を考えてみてはどうでしょうか。

(4)ランディングページ「縦長はやめて、PC画面1ページに収める」

オンライン営業を想定して、営業ページ(ランディングページ)を用意しておくことは効果的です。会話の流れのなかで、チャットでそのURLを伝え、相手に、相手のパソコンのブラウザでアクセスしてもらう。これができれば、(3)で懸念した解像度などの画質の問題は解消できます。

ウェブ広告を活用して認知を広げるランディングページは、縦長デザインの傾向があります。上部に導入の画像があり、続いて3つ程度のサービスの特徴、その下に料金プラン、最後にお問い合わせフォームが続く。これがスタンダードなランディングページの構造です。この典型的な構造もまた、オンライン営業では不向きかもしれません。

その理由は、縦長のページだと、どこを見たらいいのか、どの部分を説明しているのかがわかりにくいためです。縦スクロールしなくても全体が把握できる、パソコン画面1枚に収まるページを準備することが効果的。そうすることで、どこを説明しているのかという補足を入れる必要もないし、聞いている相手も意識を集中させやすくなります。オンラインミーティング向けのランディングページを用意することが無難ですし、ベストではないでしょうか。

以上、アフターコロナの時代もオンライン営業は主流となるという視点で記事をまとめました。ここでご紹介した4つのポイントを意識しながら、「オンライン営業力」の向上にトライしてみてください。

構成:岩川悟(slipstream)