では、「#再放送希望」というハッシュタグが飛び交うなど、日増しに大きくなる再放送を求める声に、テレビ局はどう対応していけばいいのか。

「再放送を求める声は、『テレビも仕事量を減らして感染予防すべき』『スタッフと出演者を守ってほしい』という思いがベースになっているだけに、テレビ局としては無視できないでしょう。スポンサー、芸能事務所、外部スタッフら関係者との調整は必要ですが、対応を間違えて人々の反発を招くと、共倒れになるリスクもありますから。今はビジネスの事情よりも、リクエストを募集してできる限りそれに応えるくらいの視聴者サービスを優先させて、テレビそのものが再評価してもらうほうが得策だと思われます」

現在は、あまり視聴率を追い求めてはいけない時期ではあるものの、「再放送はニーズがある割に結果が伴わない」というケースが大半を占めている。これは仕方のないことなのか。

「たとえば、『ロングバケーション』(フジ系)のリクエストが多かったら、木村拓哉さんと山口智子さんのリモート解説付きで再放送を見るとか、サッカーロシアワールドカップのリクエストが多かったら本田圭佑選手と香川真司選手のリモート解説付きで見るとか、今だから可能な付加価値をつけることで視聴率アップを図りたいところです。新たなコンテンツが制作できないときは、『名作を再放送でどう見せるか』が腕の見せどころですから」

■今こそ業界が変わるきっかけに

最後に、「テレビ業界にとって現在の状況は、どんな意味があるのか?」を尋ねてみた。

「ネット上には、『この逆境を機に、視聴率偏重で、ひな壇や街ブラに偏ったバラエティを見直してほしい』『もう忖度やコンプライアンスによる自主規制はしないでほしい』などの声が少なくありません。ふだんよりテレビを見られる時間が増えたことで、今の番組への不満や過去番組への懐古を感じやすくなっているのではないでしょうか。厳しい状況に置かれているのは間違いないですが、『ひずみが生まれている番組制作の形を見直す』『テレビから遠ざかっている人を呼び戻す』『個人視聴率の本格導入に対応する』など、さまざまな点でテレビ業界が変わるいいきっかけのようにも見えます」

●木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本程度のコラムを提供し、年間約1億PVを稼ぐほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組に出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。