稲葉陽八段を角換わりの激しい切り合いの末破る。リーグ成績を3勝1敗とし、無敗の菅井竜也八段、藤井聡太七段を追走
第61期王位戦挑戦者決定リーグ白組(主催:新聞三社連合)の▲羽生善治九段-△稲葉陽八段戦が、4月8日に関西将棋会館で行われました。2勝1敗でまだリーグ優勝の目を残す羽生九段と、1勝2敗ですでにリーグ陥落が決まってしまっている稲葉八段の対決は、125手で羽生九段が勝利しました。10日に行われる菅井竜也八段-藤井聡太七段戦の結果次第では、羽生九段の自力優勝が復活します。
両者とも本局が今年度2戦目。年度初戦もこのカードで、羽生九段が制しています(竜王戦ランキング戦1組準決勝)。その対局では羽生九段が角換わり早繰り銀を採用しましたが、本局は角換わり腰掛け銀の将棋となりました。
両者4八金・2九飛型(後手は6二金・8一飛)に組む流行の形から、羽生九段が相手の攻めを呼び込んで激しい戦いに。稲葉八段は手にした桂を相手玉頭に打ち捨て傷を作ってから、△5九角と敵陣深くに角を打ち込みました。この角は左右両にらみの角で、3七の金取りと、玉頭を狙っています。
普通は金を取られてはいけないとしたものです。ひとまず受けるのだろうと思われたところで、なんと羽生九段の手は敵陣にのびました。金取りを無視して▲6三銀と打ち込んでいったのです。これが絶好のタイミングでの反撃でした。
この銀を取るのは、飛車金両取りがかかってしまうので駄目。先ほど打った角で金を取るのも、▲6二銀成で金を取られて、金の取り合いでも攻めている場所が違い過ぎてこれも駄目。羽生九段の成銀は稲葉玉のすぐ近くなのに対して、稲葉八段の馬は羽生玉と反対側にいってしまいます。よって稲葉八段は金を逃げましたが、自玉付近に相手の攻めの拠点を作られてしまいました。
銀を打ち込んだことに満足して、羽生九段は角を打って金取りを受けました。稲葉八段は角を切り飛ばし、手にした金を相手玉頭に打ち込んで激しく攻めます。と金を二枚作って羽生玉に迫りますが、羽生九段も先ほど打ち込んだ銀と、金を守るために打った角を軸に稲葉玉を寄せていきます。
この寄せ合いを制したのは羽生九段でした。羽生玉は守り駒が一枚もいない単騎の状況になってしまいましたが、逃げ出せる広大なスペースがあります。一方の稲葉玉は金銀が周りにいるものの、逃げ場が少なく、延命ができません。羽生九段は次々と玉を守る金銀をはがしていき、最後は稲葉玉を即詰みに打ち取りました。
125手で熱戦を制した羽生九段はリーグ成績を3勝1敗としました。最終局は菅井八段との対戦です。10日に菅井八段と藤井七段との3連勝対決が組まれており、もしここで菅井八段が勝利すれば、白組優勝の自力が復活します。もし藤井七段が勝った場合には、すでに羽生九段は藤井七段に敗れているため、最終局に勝利してもキャンセル待ちという状況です。