朝日杯準決勝で敗れた千田翔太七段を藤井七段が破って、2年ぶり2度目の対決が実現
4月3日に東京・将棋会館にて第33期竜王戦3組ランキング戦(主催:読売新聞社)の準決勝、▲藤井聡太七段-△千田翔太七段戦が行われました。結果は75手で藤井七段の勝利。決勝戦では師匠の杉本昌隆八段と対戦します。
藤井七段は過去に千田七段とは3度対決があり、藤井七段が先手の際には矢倉、後手の際には角換わりという戦型になっています。本局は振り駒の結果、藤井七段が先手に。今回も前例と同じく、矢倉の将棋となりました。
前回はともに矢倉に囲い合う、脇システムと呼ばれる戦型でしたが、今回は藤井七段が急戦策を採用。双方玉を囲うことなく戦いが始まりました。千田七段が8筋の歩を角で交換した手に対して、藤井七段は最強の手段で対応。相手の攻めを引き付けるだけ引き付け、その攻め駒を責める強い受けを繰り出しました。
ここまで強気な対応をされると、千田七段も切り込むしかありません。角損ながら敵陣に竜を作り、相手の飛車との働きの差を主張します。この竜が暴れまわる展開になれば、角を失ったコストを回収できます。
しかし、この目論見は藤井七段の次の一手で瓦解。5八の金を一つ引く▲5九金が絶妙手でした。2八の飛車の横利きがスーッと遠く8筋にまで通り、▲8八飛と相手の竜にぶつける手が可能に。千田七段としては、角を失ってまで作った竜を一手で消されてはたまりません。本譜は藤井七段の金を桂で取った後、竜を逃がしましたが、藤井七段の飛車もガラ空きの8筋を通って敵陣に成り込める形になってしまいました。
飛車成りの権利を得た藤井七段でしたが、すぐには成り込みません。歩成りからと金で銀を取って、飛車成りが詰めろになるように下準備。流石の繊細な手順です。千田七段は矢倉囲いの中に玉を逃がして粘ります。金銀3枚の囲いに入城して、しばらくは安心かと思いきや、▲2四桂が激痛の一打でした。矢倉を上下から攻略するお手本のような一着で、強固に見えた矢倉囲いが一瞬にして弱体化してしまいました。
自玉に受けがないとみた千田七段は藤井玉を寄せようとしましたが、がっちりと受けられて勝負あり。攻めが続かない形になってしまった上、自玉は風前の灯火で投了もやむなしでした。本局は▲5九金~▲8八飛というカウンターが見事に決まった、藤井七段の会心譜だったと言えるでしょう。
この勝利で藤井七段は決勝に進出。そして2組昇級を決めました。さらに、ランキング戦での連勝を19にのばしています。決勝も勝って3組優勝を果たせば、史上初の4期連続優勝です。
その決勝戦の相手は、なんと師匠の杉本八段。2年ぶり2回目の師弟対決がこのような大舞台で実現するとは、誰が予想したでしょうか。第19期以来の決勝トーナメント進出がかかる杉本八段としても負けられない戦い。前回の対決では千日手指し直しの末に藤井七段が勝利していますが、それに勝るとも劣らない熱戦が期待されます。