東京2020組織委員会は30日、国立競技場の向かいにあるJapan Sport Olympic Square内の「岸清一メモリアルルーム」にて第36回理事会を開催した。東京2020大会の開催時期をはじめとした、国民の関心事について現状が報告されている。

  • 東京2020組織委員会は30日、第36回理事会を開催した。岸清一は元IOC(国際オリンピック委員会)委員であり、日本における”近代スポーツの父”

    東京2020組織委員会は30日、第36回理事会を開催した

森会長が経緯を報告

冒頭、森喜朗会長から20分ほど、これまでの経緯について説明があった。そもそも当初、第36回理事会では理事たちに国立競技場を披露する予定だったという。しかしコロナの影響で難しくなり、また折しも東京2020大会の延期も決定したことから、急遽すべての予定を変更。当理事会は、大会延期についての状況報告と、今後の対応を議論する場となった。

  • 東京2020組織委員会の森喜朗会長

    東京2020組織委員会の森喜朗会長

IOCのトーマス・バッハ会長と3月22日に電話会談を行ったという森会長は「大会の中止はありえないということで合意した」ことを明かし、そこから延期も含めた複数のシナリオの検討に入ったと振り返る。しかし周知の通り、世界各国のウイルス感染に関する状況は日を追うごとに悪化していった。IOCからは「日本国内の措置が適切でも、世界から人が集まれば日本の安全を確保することは難しくなる」といった趣旨の意見も聞かれたという。

安倍晋三首相とバッハ会長の電話会談が首相官邸にて行われたのは3月24日のこと。東京2020組織委員会から森会長と武藤敏郎事務総長が出席したほか、橋本聖子大臣、小池百合子都知事らも同席した。

  • 東京2020組織委員会の武藤敏郎事務総長

    東京2020組織委員会の武藤敏郎事務総長

この電話会談では「アスリートおよび観客の健康と安全を守ることが最も重要である」との認識を共有した。そして安倍首相から”延期”の提案があり、バッハ会長もこれを100%承認する形で延期が決定している。「来年、遅くても夏までの開催を目指します。2021年の開催となりますが、大会名称は変わらず『東京2020(TOKYO2020)』にする、ということで確認がとれています」と森会長。

こうした動きを受けて3月26日には「新たな出発 東京2020大会実施本部」を設置した。「関係者、自治体を含めて皆さんに大変なご迷惑をおかけすることになりました。改めて各々の部門で積極的に、開催に向けた準備をお願いする次第です。当面の課題として、まずは『いつ開催するか』を早々に決めなくてはなりません。日程が、すべての調整の前提になります」と説明する。

  • 記者団が退席後、理事を交えての意見交換も行われた

    記者団が退席後、理事を交えての意見交換も行われた

最後に、森会長は「オリンピックの開催延期は史上初めて。私たちは新たな目標に向けて、かつてない取り組みに挑戦していくことになります。東京2020大会の開催は、人類がコロナに打ち勝った証になる。組織委員会の使命として、なんとしても開催を実現していきます」と結んだ。

一刻も早く開催時期を決めたい

森会長の挨拶後、記者団は一旦すべて退席。部屋では理事会が開催され、出席者間で意見交換が実施された。具体的には今後の方向性などについて説明し、議論したという。約1時間後、記者団が部屋に戻されると武藤事務総長、大会組織委員会の広報局 高谷正哲氏が質疑応答に対応した。

  • まずは理事会で出た議論の内容について報告する武藤事務総長

    まずは理事会で出た議論の内容について報告する武藤事務総長

その冒頭、武藤事務総長は理事会で説明した内容(ボランティア、チケット、関連イベントの取り扱いなど)について説明した。

ボランティアについては、必要なのべ人数がほぼ揃った状態だった。そこで来年の開催に際しても、基本的に役割・会場は現状維持でお願いしていくと説明。「開催時期、会場が決まりましたら、ボランティアの方々には速やかに参加意思の確認を行っていきます」(武藤事務総長)。

購入済みのチケットについては、原則として、そのまま使えるようにする。「延期で日程が変更したため、来場が困難になる方もいらっしゃるでしょう。また、実施会場が変更される可能性もある。そうしたケースを踏まえて、希望によって払い戻しにも応じていきたい」。なお4月から予定していた春季販売は見合わせ、6月以降に予定していた観戦チケットの発送も保留にする。整理券はがき抽選の取り扱いについては検討中とした。

オリンピック開催に備えたテストイベントについては、今後実施される予定だった18大会を一律で延期にした。来年の本大会開催に向けて準備する中で、状況を鑑みながら再検討していく。

大会の名称は東京2020(TOKYO2020)の利用を継続。これによりオフィシャルグッズ、エンブレム、マスコットなどの継続利用が可能となった。

聖火リレーについてはグランドスタートの延期を決定。日程、ルートについては基本的な枠組みを尊重しながら、新たなスケジュールで準備を進めていく。「関係者には引き続き聖火リレーの実施に向けて協力をお願いし、すでにランナーに決定している方には優先的に走っていただけるよう配慮していきます」(武藤事務総長)。

競技会場における”持ち込み禁止物品”についても説明があった。持ち込み禁止物品は22項目あるが、暑さ対策の観点から、大会初となる「飲料の持ち込み」が可となったという。

当選者の期待感を大事にしたい

チケットの払い戻しについて改めて聞かれると「まだ検討段階ですが、その方向性として、まずは大変な倍率で当選された人たちの期待感を大事にしていきたい。競技日程が変更する、会場が変更になる、という可能性もゼロではないので、状況に応じて払い戻しも検討していきます」。

どこに追加費用が生じそうか、については「コロナウイルス対策のための費用もそうですが、まず考えられるのは会場費ですね。今夏のスケジュールを抑えていたところ、大会開催が来年に延期になった。今夏と来夏の両方に、賃借料などのコストが発生する可能性がある。今後、議論を詰めていくのが大変な作業になると思います」。

ここで武藤事務総長は別件のため退席し、高谷氏が質疑応答に対応する。

追加の経費はどのくらいの規模になりそうか、(東京都、日本国、IOCなど)どこが負担すべきか、という質問には「延期の大方針が決まったばかりで、具体的にどうするか、検討しているところです。これまでの支出額、契約額を鑑みると相当程度の追加経費がかかるとの認識です。これが今、皆さんにお伝えできる精一杯のところ」と高谷氏。

  • 大会組織委員会の広報局 高谷正哲氏

    大会組織委員会の広報局 高谷正哲氏

コロナが1年以内に終息しなかったら、という質問には「延期が決まったときの記者会見でも会長がお話していましたが、いつ終息するかは、誰にも予想できないこと。我々としては、様々な専門家の知見などをいただきながら、開催時期が来たときにしっかり舞台を準備するというのがミッションだと思っています。そこに向かって、全力で進めていくということです」と回答した。

聖火の現状について聞かれると「現時点では組織委員会の管理下にあり、福島県内で保管しています。今後の公表時期、公開方法については福島県と調整中です」とした。