新型コロナウイルスの感染拡大は世界経済と日本経済を直撃しています。各国は相次いで外国からの入国を制限、国内での外出禁止や移動制限に踏み切り、世界の株価は連日のように急落し続けています。

日本でも企業活動や日常生活に大きな影響が出ています。このような状況から、一部ではイベントの自粛解除や学校再開などの動きが出ています。しかし大都市を中心に依然として感染者が増えており、専門家会議が19日の提言で指摘しているように、あるときに突然爆発的に患者が急増する「オーバーシュート」のおそれがあるなど、まだまだ拡大防止の手を緩めることはできません。

したがって、現時点ではあくまでも感染拡大の抑制が最優先であるべきでしょう。経済的な打撃の原因がコロナウイルスの感染拡大である以上、それはやむをえないことだと思います。そのうえで、実際に大きな経済的な打撃を受けている業種・企業や個人を手厚く支援する、その次に経済全体を回復させるためのマクロの経済対策という組み立てが必要です。

この観点から言うと、日本政府がとってきた一連の対策は大筋において適切だったと評価されるものだと思います。しかし当初から多くのメディア、特にテレビのワイドショーは、クルーズ船での検疫に始まって、PCR検査、イベント自粛要請、小中高校の臨時休校など、政府が重要方針を打ち出すたびに、そのほとんどを批判してきました。

たとえば、安倍首相がイベント自粛の方針を打ち出したとき、「やりすぎだ」と非難する一方で、「自粛は無責任」と、とにかく批判するという雰囲気でした。小中高校の一斉臨時休校に対しては、ある県の知事が「唐突だ、場当たり的だ」と強い口調で政府を批判し、「安倍首相は実態を知っているのか」と言って休校を拒否する市長もいました。メディアはこうした声を大きく扱っていました。ところがこの市長は、市内の保育士の感染がわかると急きょ市内の学校を休校するという迷走を見せました。こうした一部自治体首長の態度には危機意識と当事者意識の薄さを感じざるをえません。

  • 新型コロナウイルスへの政府の対応

    新型コロナウイルスへの政府の対応

海外からも当初は、日本に対しクルーズ船での対応を批判する声が高まりました。しかし欧米各国はどちらかと言えば「対岸の火事」のように見ていた印象で、そのためか、自国内での感染拡大が始まったときには初期対応が遅れ、あっという間に感染者が急増しました。今度はそれを挽回しようとして誰でもPCR検査を受けられるようにしたことなどから、イタリアなどでは多くの人が病院に殺到して医療崩壊が起きたと報じられています。今では感染者数も死亡者数も日本をはるかに上回っています。

このような世界の現状を見ると、これまで日本が取ってきた対応策は個別には不備や不十分なところがあったものの大筋では適切であり、一定の効果を上げていると言えるのではないでしょうか。日本の場合、PCR検査数自体がまだ少ないという現状を差し引いても、感染者数が諸外国に比べて低い水準を維持していると言えますし、医療崩壊は起きていません。

そして何より重要なことは、死亡者数とその人口に対する割合が諸外国よりはるかに少ないことです。検査できていない感染者が相当数いる可能性があるとしても、コロナウイルスで亡くなった人の数ははっきりわかるわけですから、現時点では明らかに日本では爆発的な感染がある程度抑えられていると見ていいでしょう。