あえてシンプルな作りに

ロングライフなビジネスカーでもあるため、デザインは「シンプル イズ ベスト」を目指した。ここで重視したのは“一目で日本車と分かるデザイン”だという。感覚的に表現すれば、「センチュリー」や「クラウン」などのビジネスシーンで活躍するトヨタ車が持つ独自の世界観だろう。質感は高いが、過度なきらびやかさを抑えたフォーマルなスタイルだ。この考えを反映し、内外装は落ち着いた色のみの設定となっている。

  • トヨタの「グランエース」

    外装色はホワイトパールクリスタルシャイン、シルバーメタリック、グレーメタリック、ブラックの4種類。内装はシートがナチュラル・ベージュとブラック、天井がフロマージュとブラックから選べる(画像は「G」)

グランエースのユニークな点は、あえて採用していない機能があることだ。例えば、リヤウインドウが開閉できない固定式となっていたり、大きくて重い大型のリヤゲートが手動式になっていたりする。しかし、これは単なる簡素化ではなく、より広い室内を確保するための作戦のひとつでもあるのだ。

窓に開閉機構を付けると当然、ドアの厚みが増す。同様に、テールゲートの電動化もゲートの厚みに直結する。つまり、機能を増やすと室内の広さを圧迫してしまうのだ。もちろん、厚みが増えただけ車幅を拡大すれば問題は解決するが、日本の道路事情を考慮すると、これ以上のサイズアップは適当ではない。そんな判断だ。ただ、テールゲートに関しては利便性を考慮し、電動化や操作性の向上などを検討しているという。

  • トヨタの「グランエース」

    テールゲートの開閉が手動なことには理由があった

グランエースの背の高さにも秘密がある。ハイルーフではなく2m以内に収まる標準ルーフとなっていることだ。車内における移動のしやすさや乗降性を高めるなら、背は高いほうが有利なのだが、駐車場などの高さ制限を考慮した結果、この全高としたそうだ。ただし、この点でも、ドア開口部をなるべく広く確保できるよう、ルーフの接合方法を変更するなどの改良を加えたという。

「グランエース」はまだまだ進化する!?

初期受注だけで950台と、年間販売目標を大きく上回る好調な滑り出しを見せるグランエース。アルファードなどの高級ミニバンと比較すると、豪華さでは一歩ゆずるが、あらゆる面で考え抜かれたクルマだと感じた。とにかく、広さという武器を存分に活用した快適性については、アルファードなどの高級ミニバンに比べても圧倒的に高い。まさに、プロフェッショナルの相棒と呼べるクルマだ。

  • トヨタの「グランエース」

    大きくて室内が広く、数々の工夫が詰まった「グランエース」はまさに、プロフェッショナルの相棒たりうる“働くクルマ”だ

ライバルのメルセデス・ベンツ「Vクラス」と比較する場合は、何を重視するかで勝敗の判定が分かれそうだ。おそらく、快適性ではいい勝負となる。コストパフォーマンスではグランエースが有利だ。一方で、Vクラスの持つ華やかさをグランエースは持ち合わせない。この点は、さすが高級車メルセデス・ベンツだと思わせる雰囲気がある。

ただ、グランエースはまだ誕生したばかりなので、今後は市場の動向などをフィードバックし、育てていくことが重要となる。トヨタが「グランエース」というブランドを一流の送迎車まで引き上げられるかどうかが、勝負の決め手となりそうだ。

  • トヨタの「グランエース」
  • トヨタの「グランエース」
  • トヨタの「グランエース」
  • 「グランエース」の「プレミアム」

  • トヨタの「グランエース」
  • トヨタの「グランエース」
  • トヨタの「グランエース」
  • 「グランエース」の「プレミアム」

  • トヨタの「グランエース」
  • トヨタの「グランエース」
  • トヨタの「グランエース」
  • 「グランエース」の「G」