外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年2月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円2月の推移】

2月のユーロ/円相場は118.375~121.391円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.9%下落(ユーロ安・円高)した。上旬はドイツの経済指標に冴えない結果が目立ち、ユーロ圏景気の脆弱さが意識されてユーロ/円は中旬にかけて売り優勢の展開となった。

しかし、中国で新型コロナウイルスの感染ペースが鈍化した一方、日本で感染の拡大が見られ始めると19日は円売り主導で急反発。20日には約1カ月ぶりに121.30円台まで上昇した。その後、イタリアでも新型ウイルスの感染が急拡大したことで下落したが、対ドルでユーロを買い戻す動きが強まったためユーロ/円は下げ渋った。

ただ、世界保健機関(WHO)が新型ウイルスの世界的危険度を最高レベルに引き上げた28日にはリスク回避の円買いが主導して118.30円台へと下落。下旬のユーロ/円相場はユーロ/ドルの反発とドル/円の反落に挟まれて方向感が出にくかった。

【ユーロ/円3月の見通し】

ユーロ/ドルとドル/円の「合成レート」であるユーロ/円相場は、方向感をつかみづらい展開が続きそうだ。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて金融市場が混乱する中、米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅な利下げ観測が強まっており、米利下げ観測はユーロ/ドルを押し上げる半面、ドル/円を押し下げる可能性がある。

一方で、金融緩和や感染拡大防止策などによって世界の金融市場が落ち着きを取り戻せば(特に株価が持ち直せば)円が売られやすくなる半面、低金利のユーロにも売りが入りやすくなろう。

また、新型コロナウイルスの感染拡大を中国サプライチェーンのリスクとして捉えた場合、相対的に対中貿易依存度が低い米国への打撃は小さく、ドイツおよび日本への打撃は大きいと言える。

当面のユーロ/円相場は不安定化が避けられそうにないが、一方的に下落する展開や、急激かつ大幅に反発する展開は見込みにくい。3月のユーロ/円相場は、2月の取引レンジ(118.375~121.391円)を概ね踏襲すると予想され、118円割れや122円超えの可能性は大きくないと見る。