日本最大のSUVブランド? メルセデス最新モデル3台を乗り比べ!

日本で最も多くのSUVをラインアップする自動車メーカーがメルセデス・ベンツだということをご存じだろうか。“ゲレンデ”こと「Gクラス」をはじめ、「GLS」「GLE」「GLC」「GLA」、さらには電気自動車(EV)の「EQC」まで、その顔ぶれは多彩だ。

同社SUVの中でトップ、いわゆる「松」といえるモデルがGクラスであることは疑う余地がない。ラインアップの真ん中あたりに位置するミドルサイズの「GLE」はさしずめ「竹」、よく売れる「GLC」は「梅」といっていいだろう。今回、山梨県内で開催されたメルセデス・ベンツ新規モデルラインナップ試乗会にて、メルセデスSUVの松・竹・梅を乗り比べ、それぞれの持ち味を体感してきた。

「Gクラス」など3台の最新メルセデスSUVを乗り比べた(本稿の写真は原アキラが撮影)

「松」は究極のオフローダー「Gクラス」

1979年のデビュー以来、四角いボディーデザインはそのままに、最新のパワートレインを取り入れながら進化を続けてきたGクラス。軍用車両としてNATO軍に制式採用されたという経歴からも分かるように、堅牢なボディーと四輪駆動による強力な走破性が魅力であることは、皆さんもご存知の通りだ。2018年にはフルモデルチェンジして内外装を刷新したが、「W463」という型式に変更はなく、あくまで大幅なマイナーチェンジであるとメーカーは主張しているようだ。その現行モデルで最も注目を集めているのが、最新の直列6気筒クリーンディーゼルエンジンを搭載して2019年4月に日本デビューを果たした「G350d」だ。

伝統の四角いボディーを継承する「Gクラス」の最新モデル「G350d」

搭載する排気量3.0リッターの直6クリーンディーゼルエンジン「OM656」は、基本設計をガソリン直6の「M256」と共有する「モジュラーコンセプト」で誕生。最高出力286ps(210kW)、最大トルク600Nmを発生する。従来型より低いエンジン回転数(1,200～3,200rpm)から最大トルクを発生するため、2.5トンの重いボディーにもしっかりと対応。ちなみに、ゼロヒャク加速(停止状態から時速100キロまでの加速)は7.4秒と十分に速い。

ボディサイズは全長4,575mm、全幅1,860mm、全高1,970mm。こんな見た目だが、十分に速いクルマだ

高い位置にあるドライバーズシートによじ登るように乗り込むと、そこにはメルセデスの最新モデル同様、2枚のディスプレイを横に並べ、1枚のように見える大型スクリーンが鎮座している。「Sクラス」のようなステアリングや上質なレザーシートも相まって、同社の最高級モデルであることが感じ取れるインテリアだ。

乗り込むのは少し大変だが、室内はメルセデスの最高級モデルであることを物語る上質さだ

プッシュボタン付きのドアノブを握ってドアを開けた時の音は、筆者のマイカーでもある「W124型」などと同種の「チャッ」という開閉音。「これこれ!」と1人喜んでしまった。ドアを閉めてエンジンに火を入れると、「ガチャッ」という大きな音が車内に響き、ドアにロックがかかる。ディーゼル音は、新型になって遮音が徹底されたおかげでほとんど気にならない。室内の静粛性が高いからこそ、施錠の音が大きく聞こえるのである。

遮音が徹底された室内

他モデルと同じスタイルになったコラム式変速レバー(9速AT)を「D」に入れて走り出すと、先代で感じられたラダーフレームによるトラックのような乗り心地は大きく改善していて、落ち着いた挙動と直進性をもつ上質なクルマに変身したことにすぐ気が付いた。フロントサスペンションを従来のリジットからダブルウィッシュボーンへ、ステアリングをボール&ナット式からラック&ピニオン式(乗用車によく使われる)へとそれぞれ変更したことが、効果を発揮しているようだ。

こうした洗練が、従来のGクラスの魅力でもあったある種の懐かしさをスポイルしているところはちょっと寂しいものの、やはり、きちんとした走りを実現することは、自動車メーカーとして当然の務めである。背の高い四角いボディーやLEDでデザインした丸目のヘッドライト、ボンネット左右前端の出っ張ったウインカーライト、大きく張り出した四輪のフェンダー、左ヒンジの横開きリアゲートに取り付けられたスペアタイヤなど、現代の安全基準をクリアしつつもノスタルジックなデザインをキープしたあたりは、ファンにはたまらないポイントだろう。1,192万円というプライスタグのG350d。究極かつ唯一無二のオフローダーだ。

不易流行のスタイルが熱狂的なファンを喜ばせ続ける「Gクラス」

「竹」の「GLE」は3列シートを標準化した上質なSUV

現行モデルで4代目となる新型「GLE」は、1998年にデビューした「Mクラス」の後継車だ。ミドルサイズのプレミアムSUVとしての特性はそのままに、先代モデルに比べて大幅に拡大した室内スペースが特徴。3列シートを全モデルで標準化し、定員が7名となった。

室内スペースが大幅に拡大した新型「GLE」

試乗した濃いブルーの「GLE400d 4MATIC スポーツ」は、最高出力330ps(243kW)、最大トルク700Nmの直6クリーンディーゼルエンジン「OM656」を搭載。2ステージターボチャージャーにより、低回転域から高回転域までの全域でトルクフルな走りを見せた。「9G-TRONIC」オートマチックトランスミッションと連続可変トルク配分の四輪駆動システムの組み合わせが、あらゆる場所へ静かに、快適に大型ボディーを運んでいく。

ボディサイズは全長4,930mm、全幅2,018mm、全高1,795mm

エクスリテアはメルセデス・ベンツのデザイン思想である「Sensual Purity」(官能的純粋)を具現化したもので、2本のパワードームを備えたボンネット、エッジやラインが少なく面を強調したサイドビュー、長いホイールベースと短いオーバーハング、特徴的なリアクォーターガラスなどが目を引く。

メルセデス・ベンツのデザイン思想「Sensual Purity」を具現化したエクステリア

インテリアは12.3インチ2枚を1枚のガラスでカバーした横長のディスプレーと、4つの四角いエアベントが水平に並ぶセンターコンソールがGLEらしいところ。標準装備となった3列目シートは、小さいながらもいざという時に頼りになる存在だ。

水平に並ぶエアコンの吹き出し口が「GLE」らしい

走りはディーゼルによる低速域からのトルク感と、直列6気筒によるスムーズな回転上昇がとても気持ちいい。大きな車体で背も高いが、これであれば、ワインディングを駆け抜けることさえも得意技とすることができる。音声認識の「MBUX」やテレマティクスサービス、インテリジェントドライブなど、最新装備は満載だ。勝手に格付けをしておいて申し訳ないが、これはもう、上質すぎる「竹」なのである。1,109万円という価格が問題なければ、超オススメのモデルだ。

「梅」はメルセデスSUVで最も売れる「GLC」のクーペモデル

メルセデス・ベンツのSUVで、2018年度に最も売れたのが「GLC」だそうだ。ベストセラーのCクラスと同等の安全・快適装備を備えながら、高いアイポイントと乗用車的な乗り心地、取り回しのよさなどが評価されたのだという。今回試乗したのは、2019年10月にマイナーチェンジしたクーペモデルの「GLC300 4MATIC クーペ」。なだらかなルーフラインによるクーペフォルムと大径タイヤによるSUVらしい存在感を両立したモデルである。

クーペフォルムとSUVらしさを両立した「GLC クーペ」

搭載するのは2.0リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンで、ツインスクロールターボと可変バルブリフトシステム「CAMTRONIC」により、従来モデル「GLC250 4MATICスポーツ」よりもパワーアップした最高出力258ps(190kW)、最大トルク370Nmを発生する。前後31：69と後輪寄りに駆動が配分する固定トルク型4MATICが9速ATと組み合わさる走りは、今回試乗したようなワインディングロードにぴったり。鼻先の軽い4気筒エンジンにより、軽快な旋回性能を楽しむことができた。

ボディサイズは全長4,740mm、全幅1,890mm、全高1,600mm

クーペスタイルのSUVは今まさにブームの真っ盛り。当然ながらライバルも多いが、後席の利用が少ないユーザーであれば、よりスタイリッシュなクーペを選んで間違いない。こちらもMBUXやテレマティクサービス、インテリジェントドライブなどは全て最新式。ダッシュボードに単独で設置される10.25インチワイドディスプレイという構成は前モデルと変わりないので、そこだけが少し古さを感じてしまう。価格は807万円となっている。