半導体市場調査会社である米IC Insightsは12月5日付(米国時間)で、世界半導体貿易統計機関(WSTS)によって分類された主要な製品カテゴリに基づく2020年の成長率レポートの概要として、成長率が高い5つの製品分野を公表した。

もっとも高い成長率はNAND市場

2020年にもっとも高い成長率を記録することが期待されているのはNAND市場で、前年比19%増。また、DRAMも同12%増で3番目に高い成長率と予測されている。

2019年、これら2つのメモリ市場が完全な市場崩壊に陥り、それぞれ前年比27%減、同37%減と大幅な減速となったことを考えると、2020年にこれらの市場が2桁成長を達成することは驚きではないとIC Insightsでは指摘している。ちなみにDRAMは、WSTSが分類する33製品カテゴリ中、もっとも成長率の低い(マイナス成長率の)製品カテゴリとなる見込みである。

  • IC Insights

    2020年に成長率が高いと予想される半導体IC製品カテゴリ (出所:IC Insights)

NANDのアプリケーションとしては、モバイル用途が従来同様、比率が高いが、SSDが高密度かつ高性能なNANDの需要をけん引するものとIC Insightsでは予測している。また、モバイル、データセンター、クラウドコンピューターサーバー、自動車、および産業市場での5G接続、人工知能、ディープラーニング、仮想現実の勢いが増すにつれて、NANDとDRAMの成長が加速されることが予測されるという。

車載ロジックと組み込みMPUは堅調な成長

自動車に搭載される電子デバイスの数の増加は今後、さらに進むことから、IC Insightsでは自動車向け特殊用途ロジックのカテゴリは2020年も堅調な成長を記録するものと予測している。実際、自動車向け特殊用途ロジックと組み込みMPUは、過去3年にわたって成長率トップ5に入っている。

近年、自動車はいくつかのIC製品セグメントの成長ドライバーとして注目を集めているが、特に自動車用の特殊用途ロジック向けの成長率が高い。パフォーマンスを向上させ、安全性を高め、乗客の利便性を高める電子システムは、新車に引き続きオプションとして搭載されたり、安全分野などは義務付けられるなどの動きが進んでいる。さらに、自動運転の進歩と世界中での電気自動車の販売拡大により、新車1台あたりの半導体の平均搭載数自体も増加している。

  • IC Insights

    33製品カテゴリの成長率分布 (出所:IC Insights)

なお、IC Insightsでは、2020年は33製品カテゴリのうち26製品カテゴリがプラス成長を記録すると予測している。2019年は6製品カテゴリのみであることを考えると、対照的とも言える。しかも26製品カテゴリ中、5製品カテゴリが2桁成長となることが見込まれるほか(2019年は4製品)、2019年は17製品カテゴリが2桁のマイナス成長になると予測されるも、2020年にはそのような2桁マイナス成長の製品カテゴリは皆無となる見込みだという。

世界半導体市場統計(WSTS)が先に発表した2019年秋季予測によると、2019年のメモリ成長率は前年比33%減、2020年は同4.1%増と予測している。一方、今回のIC Insightsの予想では、NANDが同19%増、DRAMが同12%と2桁成長としており対照的である。これは、WSTSが過去の半導体市場トレンドに基づいて予測しているのに対して、IC Insightsは半導体メモリのアプリケーション市場の伸びに期待をかけて予測しているためであろう。