渋谷駅に新たな地下空間が誕生する。広場として、多くの人が行き交う公道としての空間だ。11月1日、渋谷区は渋谷駅東口地下広場を一部供用開始する。
この広場は渋谷駅街区土地区画整理事業の一環として整備された。一部供用開始に先立ち、10月30日にオープニングセレモニーと内覧会が行われた。
■にぎわいが創出される渋谷川の下の空間
セレモニーで挨拶した渋谷区長の長谷部健氏は、「渋谷の中でも、渋谷川の下ということでスペシャルな空間であり、通路だけでなくカフェスペースなどができたことで、にぎわいのできる場所になるのでは」と話す。
都市再生機構東日本都市再生本部の本部長、田中伸和氏は、「渋谷ではわかりづらさという問題と、渋谷川の治水の問題をかかえていました。これをわかりやすく安全な街にということで、基盤整備と合わせて再開発を行っています」と説明、「今後も再開発は続き、事業としても道半ばなので引き続き尽力したい」と抱負を述べた。
東急執行役員渋谷開発事業部長であり、渋谷駅前エリアマネジメント代表理事でもある東浦亮典氏は、今回の空間整備を「都市の利便性と安全性を確保できる基盤整備」とし、「ハードだけでなくソフト面からもまちづくりのあり方を考えてきました。情報発信もできるように、広告収入の一部をまちづくり事業に使えるようにしています」と説明する。
来賓として挨拶した渋谷区議会副議長の岡田麻里氏は、「区議会は渋谷の魅力を向上させるために力を尽くします」と述べ、東京大学の名誉教授である内藤廣氏は、「川をどうするか。ここの問題が解けないとうまくいかない」と語り、「ここで負けていてはだめでした」と過去を振り返った。渋谷・東地区まちづくり協議会の代表幹事を務める小林幹育氏は、「大正の頃まで泳げた渋谷川の地下にいるということは、大変な発展だと思います」と感慨深く話していた。
■いかにして渋谷川の地下につくったのか
ところで、出席者らも語った渋谷川の問題とは何だろうか? もともと渋谷川は、現在よりも35m西側にあったという。それを170mにわたって、2015年に現在の位置に移設した。渋谷川はコンクリートのボックスカルバートで水を流すようにし、施設としての位置づけも河川から下水道になった。
ボックスカルバートで流路を整備し、その下に地下構造物をできるようにした。これも、土地区画整理事業の一環である。先に新しい川をつくり、水を流してから元の川をふさいだ。その下に通路を作れるようにし、渋谷の土地不足に対処した。
地下広場の下には、2020年度の完成をめざして地下貯留槽の整備が進められ、水害に強いまちづくりをめざすという。こうした土木上の工夫により、渋谷川の下に自由自在に構造物ができるようになった。
■東口地下広場が結節点に
こうしてできた渋谷駅東口地下広場は、安全で快適な歩行空間となるだけでなく、鉄道・バスといった多様な交通機関の結節点となることをめざす。この広場ができることで、交通機関どうしの乗換えもしやすくなる。
地下1階のフロアには、渋谷駅周辺で不足していたコインロッカーや、都営バス定期券発売所兼案内所(都営バスグッズも販売される)を設け、地上のバスターミナル利用者の利便性を高める施設が備わっている。
渋谷区立渋谷駅東口公衆便所には、「@cosme」によるパウダールームが設置され、インタラクティブミラーなどで化粧直しなどがやりやすくなっている。トイレ自体も、入口で男女を分けることなく、渋谷区らしく多様性を尊重するものとなっている。
地下2階には情報発信型カフェ「UPLIGHT CAFE」を設置。同カフェの飲食物だけでなく、「PUFFZ」のスイーツも味わうことができる。
この東口地下広場におけるにぎわい施設は、渋谷区から都市再生特別措置法にもとづき指定を受けた一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメントが許可を得て設置し、その収益でまちづくりを行っている。
11月1日から12月31日まで、「HELLO neo SHIBUYA」と題し、「SHIBUYAまちびらき2019」が開催される。地下広場のオープンだけでなく、渋谷スクランブルスクエアなどがオープンし、その中で誰もがたのしい渋谷をめざすというものだ。
渋谷の街は駅を中心に再開発が進み、人の動きも便利なように動線がつくられる。その人の動きが、街のダイナミズムを生むことになるだろう。