生物のオス・メスの見分け方に関する書籍を手掛けた筆者。サンシャイン水族館で開催している「性いっぱい展」(~11月4日)には思わずニヤリとさせられています。今回は、生き物好き目線で、展示の見所をディープにガイドします。

  • 皆さんもきっとお好きなはず

性いっぱい展が想定外の大ヒット中

池袋のサンシャインシティ屋上にある都会のオアシス、「サンシャイン水族館」。少しなまめかしい展示と、仕掛けが満載の「性いっぱい展」が話題になっています。

展示のテーマは多様な生き物の「性」。タブー視されやすい繁殖や交尾、求愛行動などを扱っていますが、ユニークでポップな演出が幅広い世代にウケているよう。「普段は照れくさくて話題にしづらいけれど、正しい知識を学べるので良い」と家族連れがやって来て、また男性お一人様の来場も少なくないらしい。

つまり、単なるお色気コンテンツとしてだけでなく、「性」にきちんと興味を持ってもらっているようで、水族館スタッフは嬉しそう。触ったり映像を観たりしながら学べる「おさわりBOX」や「のぞきBOX」などが特に好評。ラブラブカップルはもちろんのこと、「お互いを意識しているのにあと一歩が踏み出せない」という2人のデートにも良さそうです!

超ユニークな水の生き物の繁殖戦略

ご存じのように、繁殖こそ、あらゆる生物の究極的な目標。水の中や水辺の生き物の繁殖には、さまざまな困難があります(もちろん、陸上動物も苦労しますが!)。厳しい環境でも確実に子孫を残すため、種ごとにユニークな繁殖方法を進化させました。

サンシャイン水族館で見られる種類を中心に、水の生き物たちの個性豊かな性&繁殖エピソードをご紹介します。

コウイカ

コウイカのオスは長い腕を巧みに使い、ハート形にしたり鋭いトゲのような形にしたりして、メスに見せつけます。色素を操り皮膚の色をさまざまに変化して身を守る特技を活かして、求愛時も激しい体色変化でメスにアピールするのが特徴です。

  • 体色を変えて保護色になるのもお手の物 提供:サンシャイン水族館

アオリイカ

オスは、精子の入ったカプセルをメスにねじ込んで交接します。食材として流通するメスのイカの中に、オスの精子カプセルが残っていることがあり、人間が食べると口の中をケガする危険があります。

  • アオリイカの交尾(交接)はなかなかユニーク 提供:サンシャイン水族館

アオリイカの産卵とコウイカの交接

スミレナガハナダイ

すべての個体がメスとして生まれ、群れの中で強い個体がオスに性転換します。幼い個体やメスはオレンジ系ですが、オスは鮮やかなピンク系の色になり、湿布を貼ったような四角い模様も出ます。そして、オスは複数のメスを従え、ハーレムを作るそうです。

  • カラフルで美しく観賞魚としても人気 提供:サンシャイン水族館

クマノミ

スミレナガハナダイとは異なり一夫一妻制。イソギンチャクと共生し、同じイソギンチャクに住む個体の中に序列があり、最大のメスとオスがペアで繁殖。メスがいなくなると、オスがメスに性転換し、繁殖します。オスは多くのメスにアピールする必要はなく、スミレナガハナダイのように派手な見た目になりません。

  • 性転換をする魚として有名なクマノミ 提供:サンシャイン水族館

コモリガエル(ピパピパ)

オスは受精卵をメスの背中に埋め込み、メスは背中で卵を育てます。卵はメス親の背中でオタマジャクシになり、子どものカエルになってから外に出てきます。

背中にびっしり卵が並んだカエルや、親の背中の穴から飛び出してくる子カエルは、見た目ちょっとグロテスクですが、効率的に子育てをするための繁殖方法だとか!

  • なかなかグロテスクだが尊い命の営みだ 提供:サンシャイン水族館

オタリア・カリフォルニアアシカ

オタリアはミナミアメリカアシカという別名の通り、アシカの仲間。カリフォルニアアシカとオタリアは、「鰭脚類(ひれあしるい)」というグループに属する生き物。どちらもオスはメスよりも体が大きくがっしりとし、性器の内部に陰茎骨という骨がある。体が大きく生殖能力の高いオスが複数のメスを独占し、「ハーレム」を作って繁殖するのが特徴です。

  • かわいい顔の海獣だが繁殖はリアル 提供:サンシャイン水族館

ケープペンギン

多くのペアが生涯同じ相手と添い遂げますが、中には浮気や同性愛に走る個体も見られます。水族館で生まれ人が育てた個体は、ペンギンよりも人間のほうが好きになってしまうケースがあるそう。くちばしが太く、がっしりしたオスがメスによくモテるみたいです。

  • 基本的に一途だがそうでない子も!?

「性いっぱい展」を10倍楽しむ方法

このように、なかなか見ごたえのある「性いっぱい展」。水族館のさらなる楽しみ方を聞いてみました。

「生き物を一瞬見て終わりにせず、1つひとつの水槽を数分かけて見てみるのがおすすめです。オスとメスの関係性など、それぞれの生き物の生態などじっくり見てみると面白いですよ。大水槽『サンシャインラグーン』でも、それぞれに興味深い行動を見せてくれます。水族館スタッフへの質問も大歓迎です!」

夜のサンシャイン水族館「性いっぱい展」
開催期間:9月27日(金)~11月4日(月・振休)
※10月17日(木)は休業
営業時間:18時30分~22時(入場は閉館の1時間前まで)