「老後に2000万円の資金が必要」。今年6月、金融庁の審議会で出された報告書の一部が話題を呼びました。「老後の生活は年金だけじゃ足りないの?」「2000万円も貯蓄なんてできない」などとさまざまな意見があがっていますが、実は購入したマイホームが老後資金の助けになることもあることをご存知でしょうか。

今回は人生100年時代に知っておきたい「住まいとお金の話」を考えていきましょう

メガバンクも取り扱う「リバースモーゲージ」とは?

そもそも、マイホームが老後資金の一助になると聞いてもピンとくる人はそう多くはないことでしょう。その仕組みが「リバースモーゲージ」なのですが、一般社団法人全国住宅産業協会の調査によると、「リバースモーゲージ」を名前だけでも知っていると答えた人は35%にとどまり、62%の人がよく知らないと答えています。

この調査の対象となっているのは、50代~70代。そろそろ老後の生活について本格的に準備を、という世代の認知度なので、若い世代はもっと知られていないかもしれません。

  • 2017年に一般社団法人全国住宅産業協会調査が発表した資料より、筆者作成

そもそも、リバースモーゲージはマイホームを担保にして、そこに住み続けながら金融機関または公的機関(地域の社会福祉協議会)などから融資を受けるというもの。借り入れ可能額は、自宅の資産価値に基づいて提示されます(融資可能なエリアや物件種別は、金融機関によって異なります。マンションは対象にならないこともあります)。

つまり、マイホームを担保に足りない老後資金の一部費用としてお金を「借りる」ことができる仕組みなのです。2000年代から日本でも取り扱う金融機関はありましたが、2010年代になってから主要メガバンクが相次いで扱うようになり、日本でも普及するといわれてきました。

生きている間はマイホームに暮らし続けることができ、死後に売却して精算します。また、タイプにもよりますが、利息は月々の借り入れた分だけで元本分は支払う必要はありません。生活資金だけでなく旅行や趣味、医療費など幅広い目的で利用することが可能です。

リバースモーゲージのメリットをまとめると、(1)住み慣れた家でそのまま生活でき、(2)老後資金などにあてることができ(3)死後に精算できる、というものです。老後資金に「2000万円必要なの?」と慌てる前に、こうしたマイホームを担保にしてお金を借り入れる仕組みがあると知っておくだけでも、安心することでしょう。

「リバースモーゲージ」のデメリットは?

もちろん、リバースモーゲージも完璧ではなく、さまざまなデメリット・リスクがあります。1つは長生きリスクです。本来であれば長生きは喜ばしいことですが、契約時に想定した借入期間より長生きしてしまうと、契約満了時に借り入れたお金の一括返済を求められることもあります。

2つ目が金利上昇のリスクです。リバースモーゲージではお金を借り入れているわけですから、景気の動向により金利が上昇すれば支払い利息が上昇してしまうことも。利息の支払いが増えるようであれば、受け取り総額が減ってしまうこと起こりえます。

3つ目は地価の動向に影響を受けるということです。仮に地価が下落してマイホームの担保評価額が下がれば、追加の担保が必要なこともありえますし、融資がストップすることも考えられます。金融商品である以上、こうしたデメリットやリスクを理解して借り入れを行うとよいでしょう。

人生100年といわれる今、漫然と「貯金は定期預金で」「みんなが買っているからわが家もマイホームを」という選択をしていると、いざというときに対処できなくなってしまいます。住宅購入時はいざというときに売却しやすい物件か、賃貸は可能か、リバースモーゲージは利用可能か、また将来的な地価の動向なども多角的に考慮するのがよいでしょう。

また、何事にもメリットもあればデメリット、リスクもあります。総合的に理解したうえで、判断・選択するとよいでしょう。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得