小さい頃から親や周囲の大人に「勉強しなさい」と言われ、受験勉強に励んだという人は多いと思います。一般的には、「学歴と将来の収入は関係する」と考えられていますし、社会に出れば、実際に学歴による収入格差を目の当たりにするかもしれません。では、学歴と収入は本当に関係があるのでしょうか。今回は、データを元にしながら、気になる学歴と収入の関連性について解説していきます。
学歴と収入の関係はどのくらいある?
学歴が収入に与える影響については、様々な意見があることでしょう。学歴で収入が決まる企業も多くある一方、実力主義の会社も存在しています。子どものいるご家庭では、教育資金を準備するにあたって将来の進路を想定するかと思いますが、学歴と収入の関係を判断材料の一つにしたことがあるのではないでしょうか。
それでは、両者の関連性を示すデータはどのようになっているのでしょうか。まずは、社会に出て初めての給料である初任給から見てみましょう。厚生労働省が発表している「平成30年 賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給」によると、学歴ごとの初任給は以下の通りです。
<男女計>
・大学院修士課程修了…23万8,700円
・大学卒…20万6,700円
・高専・短大卒…18万1,400円
・高校卒…16万5,100円
<男性>
・大学院修士課程修了…23万9,900円
・大学卒…21万100円
・高専・短大卒…18万2,900円
・高校卒…16万6,600円
<女性>
・大学院修士課程修了…23万4,200円
・大学卒…20万2,600円
・高専・短大卒…18万400円
・高校卒…16万2,300円
大学院修士課程修了と高校卒では、男性では7万3,300円、女性では7万1,900円といずれも7万円以上の開きがあることがわかります。また、全ての学歴において男女差がありました。なお、企業規模別では、大学卒の男女計の初任給は、大企業(常用労働者1,000人以上)が21万500円、中企業(同100~999人)が20万4,200円、小企業(同10~99人)が20万円という結果になりました。このデータから、学歴が高く、また、企業規模が大きいほど初任給が高い傾向になることが読み取れます。
次に、学歴ごとの賃金を見てみると、以下のようになっています。
<男性>
・大学・大学院卒…40万500円
・高専・短大卒…31万3,800円
・高校卒…29万1,600円
<女性>
・大学・大学院卒…29万100円
・高専・短大卒…25万8,200円
・高校卒…21万2,900円
男女間でも賃金に格差はありますが、男女それぞれの学歴によっても賃金に開きが見られます。大学・大学院卒と高校卒の賃金を比較すると、男性では10万8,900円、女性では7万7,200円の差があります。
学歴による生涯賃金の違いとは
学歴と収入の関係を改めて見てみると、データ上は初任給や賃金に明確な差が生じていることがわかりました。それでは、生涯賃金(ひとりの労働者が生涯にわたって得る賃金の総額)としてはどのくらいになるのでしょうか。労働政策研究・研修機構が発表した「ユースフル労働統計2018」のデータで確認してみましょう。就職から60歳の退職まで同一の会社に勤務し、退職金を含まない場合の生涯賃金は、以下の通りです。
<男性>
・大学卒…2億8,980万円
・高専・短大卒…2億4,830万円
・高校卒…2億5,470万円
<女性>
・大学卒…2億4,110万円
・高専・短大卒…2億350万円
・高校卒…1億8,590万円
以上は、一度も転職をせず、リタイアまで同じ会社に勤めた場合の生涯賃金です。しかし、近ごろでは転職が一般的になり、途中で勤め先が変わることも充分に考えられます。それでは、就職から60歳の定年までフルタイム勤務の正社員、転職をした場合(同じ企業規模で転職するものとする。退職金は含まない)はどうでしょうか。
<男性>
・大学・大学院卒…2億6,980万円
・高専・短大卒…2億1,340万円
・高校卒…2億910万円
<女性>
・大学・大学院卒…2億1,590万円
・高専・短大卒…1億7,630万円
・高校卒…1億4,830万円
転職をすると、男女とも全ての学歴で生涯賃金は低くなっています。また、転職をしない場合のデータで、男性の高校卒が高専・短大卒の生涯賃金を上回っているものの、その他では学歴が高いほど生涯賃金も多くなるという結果が読み取れます。同一の企業に勤め続けた場合、大学卒と高校卒では、男性で3,510万円、女性で5,520万円もの差があり、特に女性は生涯賃金に大きな開きがあります。その理由として、高校卒で働く女性は昇給の機会が少ない一般職などが多いためと考えられます。
収入を増やし豊かに生きるには
このようにデータのみで判断する限り、「学歴と収入は関係があり、学歴が高いほど収入も高くなる」と言うことができそうです。ただし、「自分は学歴が高くないから」と豊かに生きていくことをあきらめる必要は全くありません。収入が少なくてもコツコツ計画的に資産運用を続け、高収入世帯よりも貯金が多いという家庭も珍しくないのです。
それに、最近は副業が解禁されている企業も増えています。平日の帰宅後や休日の時間を副業に充ててみてはいかがでしょうか。給与の他からも収入を得るチャンスがあるため、「学歴が高くないからこれ以上収入アップは見込めない」と嘆く必要はありません。さらに、貯金するだけでなく投資でお金を増やすことも考えてみましょう。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、税制優遇が受けられる制度もあります。資産運用にうまく取り入れ活用してみましょう。
自助努力や工夫で収入は増やしていける
学歴と収入のデータだけを見ていくと、大卒・大学院卒が収入面で優遇されていることがうかがえます。しかし、副業や投資など、学歴に関係なく自助努力や工夫により、収入や資産を増やしていく手立ては色々とあるのです。それに、仕事は収入だけで成功が決まるものでもありません。学歴が収入に与える影響は今後も続く可能性がありますが、一つの側面に過ぎないということです。