近年、飲み会よりもボードゲーム会で親睦を深める若者が増えつつあるという。将軍になって戦争を指揮したり、社長になって事業を成功させたり、ゾンビの館から脱出したり、その種類と内容の幅広さは驚くばかりだ。ハマる若者が増えるのも頷ける。

  • さまざまなテーマや作り手の想いが込められた"お仕事ボードゲーム"の数々(写真:マイナビニュース)

    さまざまなテーマや作り手の想いが込められた"お仕事ボードゲーム"の数々

そんなボードゲームのなかに、ビジネス力アップを促す「お仕事ボードゲーム」があると聞いた。はたして、どんなボードゲームなのか。突撃ライター・モトタキが、合同会社ゲーミフィ・クリエイティブマネジメンツ代表・石神康秀氏と、プランニングアドバイザー・小野田 純二氏に協力してもらい、マニアックな世界を探訪する。

  • 合同会社ゲーミフィ・クリエイティブマネジメンツ代表・石神康秀氏(左)と、プランニングアドバイザー・小野田純二氏

今回は、本当にビジネス力が身につくのか、実際に"お仕事ボードゲーム"にチャレンジしてみた。

コミュ力が試される「ヒーローインタビュー」

  • コミュ力が試される「ヒーローインタビュー」

野球選手のヒーローインタビューのように"話を聞く"スキルを競うゲーム。本来なら複数人が一人に対してインタビューしていくのだが、今回は人数の都合で、記者モトタキと小野田氏のタイマンインタビューをしてみた。

  • インタビューを受ける小野田氏

インタビューのテーマは幾つか用意されており、サイコロを振って決める。テレビ番組の『ごきげんよう』のようだ。そして選ばれたテーマは「否定しないでほしいこと」。石神氏から「これは『ヒーローインタビュー』の中でも難しいテーマになりましたね」と解説が入る。

  • ゲーム開始直後、すぐさまモトタキ記者に対して「興味ない?」と減点カードを差し出す辛辣な小野田氏

プレイ開始の合図がなされるが、どうしていいかわからない。戸惑っていると、小野田氏から「興味ない?」のマイナスポイントのカードが差し出される。減点だ。

  • エンジンがかかってきたモトタキ記者の質問に、小野田氏は真剣な表情で答える。知られざるプライベートの一面も引き出せた

腹を決めて、ガンガン「否定されたくないこと」を聞き出していく。なあに、コツを掴めばインタビューならお手の物。プライベートの深い話までどんどんと質問で聞き出していく。

「テンポが良い」「深掘り」など加点カードでガンガン稼ぐ。最終的には、もっと聞いて欲しいのオファーカードもゲット。本来、このオファーカードを複数のインタビュアーで奪い合う楽しさもある。

  • さすがは本職のモトタキ記者、最終的には高得点を叩き出した

ビジネス的にも大事な「話の引き出し方」が可視化されたこのゲーム。人とコミュニケーションを取るのが苦手なビジネスマンこそ、ゲームに励んでスキルを磨いてほしい。

あなたの仕事スタイルがわかる「パシリの流儀」

  • 「パシリの流儀」

先輩の命令でパンをパン屋に買いに行くという、パシリをテーマにしたゲーム。「パン食べたいんだけど」というボドゲのリニューアル版とのことだ。いかにしてパシるのか。

先輩から欲しいパンの内容を伝えられるテーブルと、パン屋のテーブルがある。2つのテーブルは離れており、制限時間1分の間にガンガン走って行き来し、先輩の欲しいパンを見つけ出すというもの。

  • 先輩が食べたいパンの要望がかかれたカードをめくり、どんなパンがベストなのか考える

先輩の要望が書かれたカードは4枚あり、最初は1枚目だけがオープン。パン屋との間を駆け回ることで、どんどん要望を聞くことができる。パン屋には16種のパンが用意されており、それぞれ価格、甘み、ボリューム、定番の4つの数値がバラバラに振られている。先輩の要望に合ったパンを早く見つけ出すタイムを競うのだ。

  • いつになく真剣な表情で、先輩の要望を頭に入れるモトタキ記者。まるで本当に怖い先輩に言い寄られているよう……

記者モトタキの挑戦は、1度目こそ先輩の要望2つを聞いただけで成功。しかし2度目はちょっと外してしまう結果に……。若くないのだ、もう走りたくないのだ。それでギャンブルをしたのがよくなかった。

  • またも真剣な表情でパンを選ぶモトタキ記者

  • さまざまな種類のパンが揃っているので、先輩が欲しいものを見つけ出すのはなかなかの難易度……

このボードゲームでは仕事の仕方のタイプを把握することができる。じっくりと要望を聞く人は、全てを指示しないと動けないタイプ。逆に要望をそこそこに聞いてパンを買ってくる人は、直感と行動力に頼るタイプ。プレイすることで、自分に必要なこと、欠けていることがわかる。

営業力のある人が勝つ「ザ・タイヤ転がし」

  • 「ザ・タイヤ転がし」

続いては、タイヤメーカー「ミシュラン」の元営業マンが作った作品「ザ・タイヤ転がし」。新人に営業を教えるためにはどうすべきかを考え、自らのノウハウを注ぎ込んだのが同作品だという。

  • 本職のやり手営業マンが作っただけあって、その内容は実に本格的

営業に大事なのは、スピードと情報量。それを常に意識することで有利な状況を作り、交渉をスムーズに進めるのが一番。そう定義して作られた同ボードゲームは、ゲームが強い人ではなく、実際に営業力の高い人の勝率が高いとのこと。

4人のプレイヤーは、それぞれ4つのタイヤメーカーが割り当てられ、異なるラインナップの「タイヤカードデッキ」が与えられる。場には合計12枚の「ニーズカード」が伏せられており、これがお客様の案件。各「ニーズカード」には、"どこのメーカーのタイヤが欲しい"、"何社分のタイヤが欲しい"、"冬タイヤが欲しい"、"これぐらいの価格の物が欲しい"などの要望が書かれており、プレイヤー同士で交渉しながらニーズを満たす「タイヤカード」を納品していくのだ。

  • 真剣な面持ちで、自社のタイヤ(持ち札のタイヤカード)を見つめ、在庫を確認する3人

ゲームは3R。1Rごとの制限時間内に、プレイヤーは思い思いに営業をかけていく。ひとつのニーズに対して、ひとつのタイヤを納品すれば1ポイント。またニーズ内容が複数のタイヤメーカーにまたがるものの場合、それを取りまとめればさらに2ポイントが配される。「次は譲るから、このニーズにはうちが納品したい」などと交渉したり、はたまた強引に取りまとめをしたり、営業力を駆使してゲームを進めていき、最終的に得点が高いプレイヤーの勝利となる。

  • ゲームが進行するにつれ、「ここの納品は私が」「いやいや、先ほど取りまとめをされてましたよね? ここはうちが」「でも、お客様のニーズはうちのタイヤを……」とたびたび揉める3人。リアルさながらの白熱した営業バトルが繰り広げられる

実際にやってみると、案件の内容をすばやく把握しなくてはいけない、スピード感についていけない、ここは譲ってここは譲らず……と、頭がいくらあっても足りない。

白熱するビジネス交渉バトルが繰り広げられるので、傍観しているだけでも面白い。みんなと協調して上手く取りまとめるのが得意なのか。ガンガンと強引に営業していって一人勝ちを狙うのが得意なのか。実用的な営業力が問われるゲームとなっている。

今回、お仕事ボードゲームを実際にやってみると、ビジネスにおいて自分がどんなタイプなのか、何が足りていて何が足りていないのかを把握でき、そして必要なスキルを身に付けることもできる。もちろん、ゲームだから面白味もあるので、楽しみながらビジネス力アップを図れる。まさに一石二鳥と言えるだろう。