俳優の井浦新がこのほど、カンテレ・フジテレビ系スペシャルドラマ『BRIDGE はじまりは1995.1.17神戸』(来年1月15日21:00~23:18)で演じる役のモデルとなったJR六甲道駅復旧工事の現場責任者・岡本啓さんと対談した。
同ドラマは、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で、線路ごと崩壊するなど被害の大きかったJR六甲道駅をわずか74日で復旧させた男たちの実話に基づいた物語。当時、建設会社の奥村組に勤めていた岡本さんは、余震が続く中、命がけでがれきを撤去し、難工事を敢行した人物で、ドラマ内で井浦が演じる高倉昭のモデルだ。
JR六甲道での撮影中に井浦のもとを訪れた岡本さんは「ええ男やなぁ。ドラマの主人公の高倉昭と、実物の自分とはだいぶ違うなぁ」と笑顔を見せ、その後、大阪のカンテレ本社に移動して、約1時間にわたって対談。「当時の六甲道をみてどのような感情を抱いたんですか?」「非現実的な状況に、どう感じたんでしょうか」と役作りのヒントを探すかのように、当時の心情について尋ねる井浦に対し、岡本さんは「最初は信じられなかったですね。並大抵の壊れ方ではなかった。震度3や4の余震もあって、怖かったですね」と、つい最近のことを思い出すかように、当時の状況を詳細に振り返った。
「余震がきて建物が壊れたら、死んでしまうかもしれない」という命の危険と隣り合わせの現場で、昼夜2交代制で工事にあたった作業員たち。彼らの安全を第一に考えながら、岡本さんは「人の命がかかっているので、自分がリーダーであるという強い判断力、いかに強いリーダーシップをとれるかが大事やないかと思っていました。『東海道本線の大動脈をつなぐんや!日本の大動脈を自分らが握っているんや!』という思いでした」と使命感を力強く語り、その言葉を聞いた井浦は「強いリーダーシップですね…よしっ」とうなずきながら、高倉という役を演じるにあたっての決意を新たにした。
劇中では、岡本さんの心に刻まれている光景も再現。緊迫した工事現場で過酷な日々を過ごす中、ある日、六甲道駅前に1枚の垂れ幕が掲げられた。岡本さんは、24時間続く工事の騒音やほこり、夜間の照明に対する苦情の訴えだと思ったというが、その文字を見ると「『こうじのみなさま、おケガのないように』と、現場作業員に対する励ましの言葉だったんです。『工事の音は、復興の音や』と言われたんです。ホッとしましたね。いち早く作業を終わらせないといけない、と思いました」と、当時の心境を明かした。
そんな“六甲道駅”について、岡本さんは「24年前と同じ形で残っている。今もしっかり機能を果たしてくれていると思うと、いい仕事をさせてもらったなと感じています」と、感慨深げ。それを聞いた井浦が「今回お話してくださったことを生かして、自信をもってお届けできる『BRIDGE』を創り上げたいと思います」と伝えると、「男、高倉昭をお願いします!」と井浦へのエールと固い握手で対談を締めくくった。