万が一の災害に対する備えとして食糧を確保していたものの、いざ食べてみたら味気なかった……。そんな被災者の声をもとに、非常食は日々改良が重ねられている。今回は、最新の非常食から、これだけはおさえておきたいという逸品たちをピックアップ。調理も簡単で、栄養面も考慮してあり、なおかつ普段の食事と遜色ないおいしさが味わえる。そんな非常食の世界を知り、いざという時に心を安らげてくれるような食糧を家庭やオフィスに用意しておこう。
水を注ぐだけでおにぎりが完成!
お湯か水を注ぐだけでおいしいご飯ができてしまうアルファ米は、各メーカーからさまざまなバリエーションのものが展開されている。「にぎらずにできる 携帯おにぎり」もそのひとつだが、同商品は名前のとおり握らずしておにぎりができてしまうのだ。実際につくって食べてみることに。
握るという作業を一切していないにもかかわらず、このおにぎりっぷりは圧巻だ。そして何より驚きなのはその味。お米もちょうどいい食感で、どこを食べてもまんべんなく具材が混ざっている。今回はお湯ではなく水でつくってみたが、日ごろ食べているおにぎりと変わらない味わいと食べ応えで、十分な満足感を得ることができた。
災害時に不足しがちな食物繊維をパンで補給
非常食での生活が続くと、野菜を摂る機会もなかなかないために食物繊維が不足し、健康被害が出ることもしばしば。そんなときに、食物繊維をおいしく補給できるのが「せんいのめぐみパン」だ。
1袋にスティック状のパンが2本入っており、食物繊維の配合量は3,600mgを誇る同商品。レタス100gあたりに含まれる食物繊維の量は1,100mgと言われているため、食物繊維だけに限って言えばレタス1玉分と同程度だと考えることもできる。保存期間は5年間。
アレルギー対応の非常食も多数
オフィスなどでの備蓄を考える際、コストの削減ばかりを重視しがちになってはいないだろうか。もちろんそれも大事なことなのだが、忘れてはいけないのがアレルギーの存在。社員の命を守るために備えているはずの非常食で、安さを優先させた結果、アレルギーによる健康被害を出してしまっては元も子もない。アレルギーに対応した非常食のバリエーションも年々増えているため、備蓄用の食品を選ぶときには値段や味だけではなく、アレルギー対応か否かも判断基準に含めてみてほしい。
食欲がないときにもオススメできるやさしい味わいを閉じ込めた「にんべん【かつお節入り】だしがゆ」は、袋を開けてそのまますぐに食べられる。ラインナップは、鮪、昆布、小豆、鶏、鮭、トマト、カレーの7種類を用意。化学調味料、保存料、着色料は一切使用しておらず、鮪、昆布、小豆の3種は「特定アレルギー原材料27品目不使用」となっている。
非常食の中には、パッケージに「UAA製法」と記載されている商品がある。UAAとは「ウルトラアンチエイジング」の略であり、4層のアルミパウチなどを用いた独自の製法で長期保存を可能にしたものを指す。そして、手軽においしくさまざまな料理が楽しめるUAA製法の非常食にも、「特定アレルギー原材料27品目不使用」のものはいくつか展開されている。
お菓子の備蓄も忘れずに
先が見えず不安も多い避難生活では、甘いものが心を癒してくれることもあるだろう。これまで紹介したものと同様に、お菓子類に関しても「保管のしやすさ」や「食べやすさ」は重要なポイントだ。
1933年に発売されて以来、多くの人に愛されてきた「ビスコ」は、災害用保存食として好評を博しており、多くの自治体や病院、学校などで備蓄用の食糧に採用されている。同商品に対して幼児向けのイメージを持っている人もいるかもしれないが、シンプルで素朴な味わいは幅広い年齢層から支持を得ているとのこと。
チョコレートや飴を備蓄しておくのもいいが、保存という点を考えると「氷砂糖」は非常に優秀なお菓子だと言える。溶ける心配もなければ、品質の劣化もない。唾液の分泌を促すことで口やのどの渇きを潤す効果も期待できるだろう。
エネルギーは水と食べ物と「酸素」でつくられる!
災害時に水や食糧が重要であることは言わずもがなだが、「酸素」に着目している人はそう多くないはず。過度の緊張を強いられる避難生活では、呼吸が浅くなるため酸素不足になる可能性も考えられる。しかし、エネルギーの生成には、「水」と「食べ物」に加えて「酸素」が必要不可欠なのだ。
そこで紹介したいのが、消化管からの酸素補給を目的とした高濃度酸素リキッド「WOX(ウォックス)」。水分子によって酸素分子を包むという特殊な製法でつくられた同製品は、ただ飲むだけで効率よく体内に酸素を届けてくれる。
同商品は「スポーツ用品大賞2016」を受賞し、スポーツ選手の疲労回復やパフォーマンス向上をサポートするアイテムとして世に広まった。しかし、3年以上経過しても酸素が抜けない、-30~80℃の環境下でも保管可能であるなどのスペックを持つことから、防災用品としても活用され始めるように。実際に飲んでみると、特別変わった味がするということもなく無味無臭だ。酸素ボンベは火気厳禁であるため、災害時の使用には細心の注意を払わなければいけないが、同商品に関してはその心配も不要だと言える。
禁煙サポートアイテムとして発売された「酸素ミスト 吸引スティック」も要チェック。吸い口から息を吸い込むと、内部に充填されている高濃度酸素リキッドが加熱され、酸素を含んだ水蒸気が吸引できるという斬新なアイテムだ。場所を選ばず使用できるので、気分転換にもいいかもしれない。
非常食は、もはや通常の食事と変わらない満足感が得られるレベルにまで発展を遂げている。防災訓練などを行う際に、試食会を開催してみるというのもアリだろう。また、備蓄しておく食糧を選ぶときには、ただ単に栄養面を考えるだけでなく、今回紹介したような「お菓子」や「酸素」などの要素を交えながら、精神面の安定も促せるような配慮を施す視点を持ってみよう。
(取材協力:防災安全協会)
※価格はすべて税込