ニュースなどで「懲戒処分となりました」と耳にすることがありますが、懲戒処分にはいくつか種類があることをご存知でしょうか? そこで本稿では、「戒告」と「譴責(けん責)」という処分を中心に、懲戒処分の種類と重さの度合いについて解説します。
■「戒告」「譴責(けんせき)」とは
「戒告」「譴責」ともに、懲戒処分の一種です。
「戒告」の意味を調べてみると、「過失や非行などをいましめ注意すること」「行政上の義務の履行を催告する通知行為。代執行の一段階をなす」「公務員の懲戒処分の一種で、公務員の職務上の義務違反に対し、本人に将来を戒める旨の申渡しをする処分」などと記載されています。
一方「譴責」の意味は、「不正や過失などを厳しくとがめること」「懲戒処分のうち最も軽いもの。職務上の義務違反について警告し、将来を戒めること」「きびしく責めること。責めうながすこと。督促」などです。
いずれも、過失を犯した従業員に対し反省を促し、将来を戒めるために与える処分の一つになります。
■「戒告」と「譴責」の違い
両者の意味を比べてみると、戒告は単に「注意する」のに対し、譴責は「厳しく責めること」とあります。処分の違いとしては、戒告は口頭による注意のみであるのに対し、譴責は口頭による注意に加えて始末書などの書類の提出が求められます。「戒告」よりも「譴責」の方が重い処分となります。
いずれも、懲戒処分としては最も軽い方と位置付けられていますが、日常の業務において、従業員が何らかの過ちを犯した際には、その都度上司が「口頭で注意する」のは当然の行為です。そのため、「戒告」をわざわざ就業規則に載せる必要はないとしている企業も多く、そのような企業では、「譴責」が最も軽い懲戒処分となります。
■懲戒処分とは
ここで、懲戒処分についてお話ししたいと思います。
懲戒処分の意味を調べてみると、「職員として果たすべき義務や規律に違反した者に対する制裁処分。刑法で定めるところの刑罰とは異なるが、国家公務員法及び地方公務員法に規定がある」と記載されています。
おもに公務員に適応されるものとして書かれているようですが、一般企業における懲戒処分は、企業が定めている就業規則に違反した場合に科せられる罰則のことです。就業規則に違反した従業員に罰則を科すことで、どのような行動が問題なのかを全従業員に示し、企業内の秩序を保つことが懲戒処分の目的です。
懲戒処分の種類としては、軽い順から「戒告」「譴責」「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇・諭旨退職」(一定期限内に辞表の提出を求め、自己退職を勧告すること)などがあり、そして、最も重い処分とされるのが「懲戒解雇」になります。
懲戒処分の種類や基準は企業によって多少異なりますが、必ず就業規則に定められています。裏を返せば、企業は、就業規則にない規則違反について従業員を罰することはできませんし、就業規則に定められていない懲戒処分を科すこともできません。
どんな行動が問題とされるのかは、時代の流れとともに変化するものです。経営する側は、就業規則の内容を定期的に見直す必要があるでしょう。働く側は、自身の企業がどんな行動を規則違反としているのか、どんな懲戒処分が定められているのか、一度確認しておくとよいでしょう。
一般的な常識が身に付いていれば、懲戒処分を受けることはないでしょう。しかしながら、学校によって校則が違うように、全ての企業が同じルールに則って運営されているとは限りません。とくに、文化や価値観の違う外資系の企業では、ルールやマナーの基準が違うことも。自社の就業規則をきちんと確認し、懲戒処分を受けることのないよう注意しましょう。