大阪・心斎橋から続く御堂筋。ルイ・ヴィトンやカルティエ、ロレックスといった高級ブランドショップが建ち並び、ゼニスといったツウ好みの腕時計専門店も存在する。さしずめ、東京でいったら銀座だが、車道や歩道が広く銀座のようなごみごみした感じはない。

有名ブランドショップが並ぶ御堂筋

そんな高感度な通りにTAKAMI BRIDALが、結婚式に関するランドマークとして「THE DRAPE」(ザ・ドレープ)をオープンした。ただTHE DRAPEは、式場というワケではない。式で着用するドレスや和装の貸し出し、式のプランニング提案などを行う。式そのものは提携する式場を紹介し、そこで挙げてもらうことになる。

JPR心斎橋ビルに入居するTHE DRAPE
ウエディングドレスはもちろん、カラードレスもある

なお、THE DRAPEを運営するTAKAMI HOLDINGSは、1923年に京都で創業された高見株式会社が改名した老舗。ブライダルコスチュームやフラワー、レストランなどを手がけている。

では、その老舗がなぜTHE DRAPEを立ち上げたのか。そこには、ある危機感が関わっている。それは、結婚式の需要が減少していること。結婚式にはドレスのほか会場、料理、フラワー、演出など出費が多岐にわたる。それを避けるため“スマ婚”で済ますカップルが増えてきた。式を挙げないという選択肢を選ぶ方々も多い。TAKAMI HOLDINGSがクロスマーケティングとアニヴェルセル総研のデータをもとにまとめた統計によると、2007年の挙式率は84%だったのが、2016年には64%にまで下がっているそうだ。

そして何よりも、人口が減少傾向に入っていることにも危機感がある。ブライダル業界全体が戦々恐々としているといっても過言ではない。

そこで、より魅力的な式を挙げてもらおうと、TAKAMI BRIDALが立ち上げられた。結婚式の需要は減っているが「一生に一度だから、贅沢な衣装を着たい」(人によっては複数回?)という欲求は根強い。より高級な式を演出するための拠点といえるのだ。

8月後半に行われたTHE DRAPEの内覧会に招待された。これまで御堂筋は何回か歩いたが、街並みを観察することはなかった。ただ、今回は“高級志向”というのがひとつのテーマだったので、どんなショップがあるのか観察しながら歩いた。そして冒頭で述べたようなブランド店の存在に気づいたというワケだ。事実、御堂筋を選んだのは高級ブランドショップが並び、関西でもっともハイセンスな場所であるためここに出店したと、TAKAMI BRIDALの酒井淳二氏は話す。

THE DRAPEの店内には衣装が数多くそろえられていた。ウエディングドレスはもちろん、カラードレス、和装など、式で着用するありとあらゆる衣装が用意してある。

あでやかな和装も用意
男性用の衣装もそろっている

この品ぞろえの多さに感心した。それは、結婚式を行う前に、婚約者と“衣装を選ぶ楽しみ”を生むことになる。式本番の前に衣装を選ぶという楽しみも味わえるというワケだ。両親など参列者用の衣装も用意されているので、たった一度しか着用しない衣装を購入せずに済み、経済的な負担も減る。

そして、少なくなった“お色直し”の促進にもつながる。ウェディングドレス、和装、カラードレスといったように、ひととおりの衣装を借りて、一生に一度の式を盛り上げる。

内覧会当日は、いかにも高感度という演出がなされていた。メインゲストはファッションモデルの石田ニコルさん。彼女がウエディングドレスを着用し登場した際、内覧会に参加していた女性の記者からため息がもれた。残念ながら、筆者は彼女のことを知らなかったので特に感慨はなかったが、確かにモデルさんらしいスタイルに目を奪われた。そして各フロアにもモデルさんが配置され、内覧会に華を添えていた。

ゲストとして登場した石田ニコルさん
ウエディングドレス姿の石田さん

結婚式需要が低下するなか、果たしてTAKAMI BRIDALの戦略は功を奏するのか……。「式を挙げない」という風潮に少しでも歯止めがかかればと思いながら、新幹線で東京に帰った。

(並木秀一)