私の一皿を出したいから選んだ働き方「自分の店」

-ご主人は今の仕事についてどのように思っているのでしょうか

「店をやれば?」と言ってくれたのは、主人なんです。今、私が楽しくブッダボウルの店を出して、本も出版できたことに「良かったね。幸せだね」と言って、応援してくれています。

主人は、私が作る料理は「名前がない料理」と思っています。彼にとって料理は「唐揚げ」とか「生姜焼き」などの家庭料理で、名前が付いているものなんです。でも、結婚してからは私が作る「名前がない料理」を食べてくれるようになりましたし、私も彼が好きな「名前がある料理」を作ることができるようになりました。

彼は、本当の意味での「おいしい」をわかっている人です。だから好みの料理が違っていても大丈夫。私とブッダボウルのことを認めてくれていて、作る料理に細かい口出しはしません。

だから、私がブッダボウルで使っている、例えばコリンキーという野菜があることは知らないんです。「うちのまりちゃんが作るブッダボウルはこれで良し」という感じ。男の人は、このくらいがちょうど良いですよね(笑)。

仕事をしている私を応援してくれると同時に、「身体には気を付けて、無理をしないでね」とも言います。東京に来る前の私を、知らないはずなんですけどね。

-パン屋だった頃が大変だったに関わらず、次も自分の店を開いたのはなぜなのでしょう

前の店を閉めてから、他の店にメニューを出したり手伝ったりしていました。他人の店に所属したわけなのですが体調を崩してしまって、リハビリのように始めたのが今のマリデリなんです。

自分ではない誰かの店で新しい一皿を入れようとしても、雇われというか、サラリーマン的な料理になってしまいます。脳の動き方が変わってしまうのか、「私の一皿」が出てこなくなってしまうんです。「やっぱりダメだな」と思い、自分の店を始めようと決めました。

自分で店をやるということは、うまくいくもいかないも自己責任です。でも、私はそっちの方が楽なんです。自分で自由にできることが、私にとっては心地良い働き方だと感じています。やっぱり自分が好きなようにやりたいんですね。

全てが自己責任であるという自由 - ブッダボウルは「パートナー」

-一人で店をやっていくということに不安はないのでしょうか

確かに、一人でやるということは、自由だけど責任も自分で取るということです。でもそれは、何かあっても自分で考えて解決すれば良いだけのこと。誰かと一緒にいたら、そういうわけにはいかないですよね。その人のことも考えて判断して行動しなければなりません。

それに、誰かを雇うということは、その人が生活できる給料を払わなければならないと私は思っています。料理業界によくある、まかないだけの弟子とか見習いは嫌なんです。それならば店を大きくしないで、のんびり一人で自由にやっていた方が、気が楽ですね。

締めるのも緩めるのも自己責任。今週頑張ったら来週つらくなるかなとか思っても、待っているお客様がいるから週4日は頑張ろうと思う。必ず開いているって、思いの他重要なんです。そうしたら、遠くからわざわざ来てくれる人がいて、通ってくれる。うれしいですよね。大変だと思うこともあるけど、これが私の自然体なんです。

-前田さんにとっての自然な働き方が、自営業であるマリデリなのですね

自営業はばくちで安定性がないという人がいますが、それがダメという人には向いていない働き方です。少額でも固定収入が欲しいという人は、自営業ではなく企業で働いた方が良いと思います。

でも、他の店で手伝っていたときに感じたのですが、時給や給料は大変です。どれだけ働いても働いた時間しか稼げませんし、収入に上限があります。

もちろん自営でも、日によっては「これしか稼げてないの?」というときもあります。でも、自分の頑張りようでどれだけでも稼げるという夢と希望があります。やりがいがあって、喜びと楽しみもあります。

「今日はあの人が来るからマフィンを焼いておこうかな」とか、私のワクワクが今日の私のお皿になります。そのワクワクが、お客様にも伝わり広がっていく。毎日が不思議で新しい発見があって、とても楽しいですね。

-最後に、前田さんにとってブッダボウルとは何ですか?

「パートナー」です。

野菜の力を信じてお皿に載せていくと、今日のおいしい一皿になってくれます。体調が悪いなと感じることがあっても、その日の新鮮な野菜たちが頑張ってくれるから、力をもらうことができるんです。

自然体で仕事ができると、毎日は楽しくなります。いつも行く八百屋さんの、あのネパール人の笑顔にも、元気をもらえますしね(笑)。

終わりに

「本の中のブッダボウルは、そのときの感性で作ったものばかり。ご家庭で作れるものばかりですよ」と、前田さんは笑う。しかし、マリデリのブッダボウルは、前田さんにしか引き出せない野菜のエネルギーに満ちている。唯一無二のおいしさなのだ。

プロとして好きを仕事にする働き方を選択した前田さんは、生活スタイルの中にマリデリを置いている。その伸びやかで丁寧な生活が、ブッダボウルという一皿となり、食べる者への癒しとエネルギーとなっていると感じた。

『ブッダボウルの本』(著:前田まり子/百万年書房)

ブッダボウルは、アメリカ西海岸発、食のニューウェイヴ。一言で言うと「菜食丼」ですが、見た目が美しく、ヘルシーで、栄養バランスも優れていることから、ファッションモデルやクリエイターの間で話題になっています。日本でも食や健康への感度の高い人たちの間で人気急上昇中。
※本書掲載レシピはすべて、自宅キッチンで簡単に作れるものばかりです。
詳しくはこちら

イベント情報

『ブッダボウルの本』発売記念! ブッダボウルのお料理教室を開催します。野菜をもっと美味しく、もっと楽しみたい方のために。ご自宅で簡単にできる、究極の菜食レシピを伝授いたします!

●講師:前田まり子(『ブッダボウルの本』著者)
●日時:9月16日(日)11時から14時半まで(当日は10時45分にお越しください)
●場所:大岡山食堂
東京都大田区北千束3-25-10 グランドヒルキクヤ1F TEL.03-6421-8213
●参加費用:7,000円(著者サイン付き『ブッダボウルの本』、食材費、会食費込み)

※キャンセル料について
1週間前まではキャンセル料はかかりません。開催日の4日から6日前は半額、それ以降は全額となりますので、ご注意ください。

お申し込みは百万年書房HPより。