「ふるさと納税」でイメージするのは、豪華な返礼品。「自治体は、あれで儲かっているのだろうか? 」「収支でマイナスになるのでは? 」といった疑問をお持ちの方も多いのではないだろうか。ふるさと納税総合サイトを運営するトラストバンクが、6月26日に開催した新規事業に関する記者説明会の中で、こうした疑問についても回答した。
過度な返礼品競争の実情
冒頭でも触れた通り、自治体による「過度な返礼品」競争という側面が目立ちがちな、ふるさと納税。トラストバンク 代表取締役の須永珠代氏は「本来は、地域間の税の格差を是正するための制度。地域にお金が落ちなくてはいけない。制度の趣旨にそぐわない返礼品は、弊社の運営サイトでも掲載しないようにしている」と説明する。同社では掲載基準をつくり、専門部隊がサイトを循環、違反する品を見つければ自治体に削除依頼をしているという。
どんな返礼品が違反と見なされているのだろうか。具体的には、地域と関係ない外国製品(ワインなど)、換金性の高い品(パソコンや商品券など)、スーパーで購入できる日用品(本社が東京など別の場所にある)などを問題視している。ちなみに総務省でも、こうした問題に対応すべく通知を出した。それによれば、返礼品の上限金額は寄附金の3割程度であること、また地場産品であること、などが明記されている。しかしこの通知には強制力がないのが実情だ。
もっとも、問題のある返礼品の数は、全体からすればわずか。須永氏の肌感覚では、契約位する1,300の自治体の一部(10とか20くらい)で、それも当該自治体が用意する返礼品の、ほんの一部分だという。返礼品が豪華すぎて収支でマイナスになる自治体のあるのでは、といった疑問には「損失を出している自治体はない」と須永氏。続いて、寄附金の内訳のおおまかなイメージも示した。それによれば、「自治体の税収」と「お礼の品代」が大きな部分を占めているようだ。
ふるさと納税も、モノからコトへ
地域の活性化に、寄附金が重要であることは事実。そこで同社では、ふるさと納税の本来の趣旨に立ち返るべく「ガバメントクラウドファンディング」事業(以下、GCF)の強化を行っていく。これは、ふるさと納税制度を活用して自治体の課題をより速やかに解決していこうというものだ。
従来のふるさと納税制度では、返礼品ありきで寄附を募っていた。GCFでは、自治体は人々の関心・共感を呼ぶプロジェクトに対して寄附金を募る。寄附者は、自らの意志で寄附金の使い道を指定できる制度になっている。例えば埼玉県宮代町では、江戸時代から地域の人たちに親しまれてきたホタルの自生する山崎山の自然を、後世の子どもたちに残すプロジェクトを立ち上げた。整備費用として500万円を募ったところ、1,000万円近い寄附金が集まったという。
トラストバンクでは、このGCFを2013年に開始。取り扱うプロジェクト数は、2018年には300件にまで達すると予想されている。須永氏は「モノからコトへ、ということが言われる時代。自治体でもお礼の品から寄附金の使い道へ、という流れができつつある」と説明する。
今回新たな試みとして、複数の自治体が抱える課題について全国の自治体に呼びかけ、賛同を得た自治体と協力して解決に取り組む”広域連携型のGCFプロジェクト”を立ち上げる。トラストバンクが主導するもので、手始めに「動物愛護」「高校魅力化」といったテーマで9月にもスタートさせる方針だという。ゆくゆくは、地域が抱える課題を政府(ガバメント)に匹敵するほどの影響力で解決していけるまで、このプラットフォームを成長させていきたい考えだ。