日本人であれば全ての人(成人)が加入する仕組みになっている国民年金。何らかの事情で支払いが滞っていた、これまで支払ってこなかったという方もいるかもしれません。

どれくらいの期間、保険料を支払っていれば、年金を受給することができるのか。今回は、国民年金を受給するために必要な「受給資格期間」について解説します。

  • 国民年金をもらうために必要な「受給資格期間」って何?

「受給資格期間=10年」を満たせば年金がもらえる

「受給資格期間」とは、国民年金(老齢基礎年金)を受け取るために必要な年金の加入期間を指し、日本では10年としています(平成29年8月より施行)。10年以上、国民年金に加入していれば、年金が受け取れるということになります。

国民年金の加入期間とは

国民年金の加入期間には、「全額納付」と呼ばれる"保険料を納付していた期間"に加え、経済的な事情から、以下のような「保険料免除制度」を利用していた期間も含まれます。

保険料免除制度
・全額免除
・4分の3免除
・半額免除
・4分の1免除

そのため、例えば保険料を全額納付していた期間が5年間であっても、保険料免除制度を利用していた期間が5年以上あった場合には、年金を受け取ることができます。そしてこの期間については、一部年金額にも反映されます。

また、納付猶予、学生納付特例など「保険料納付猶予制度」を利用していた期間も加入期間に含まれるので、受給資格期間に算入することが可能です(追納がない場合、年金額には反映されません)。

年金加入期間=
保険料納付済期間(保険料を納付した期間)+保険料免除期間(保険料の全額又は一部が免除される期間)

受給資格期間に算入できる特別なケース

さらに、この2つを合算した期間が10年に満たない場合でも、「合算対象期間」と呼ばれる以下のようなケースに該当した場合、受給資格期間に算入することができます(ただし、年金額には反映されません)。

合算対象期間の例(一部)
・昭和36年4月以降の厚生年金保険加入期間のうち、20歳前と60歳以後の期間
・海外居住の日本人で、国民年金に任意加入できたのに任意加入しなかった期間(昭和36年4月以降20歳以上60歳未満の間)
・サラリーマンの妻で、国民年金に任意加入できた期間なのに任意加入しなかった期間(昭和36年4月から昭和61年3月までの間で20歳以上60歳未満だった人)
・厚生年金保険の脱退手当金を受けた期間のうち、昭和36年4月以降の期間

年金の受給資格期間が足りないと思い込んでいる人も、よく確認してみると、年金を受給できる可能性があるので注意が必要です。年金(公的年金)というのは、本人が請求しないと受け取ることができません。無年金者で心当たりのある方は、一度お近くの「街角の年金相談センター」に足を運んでみてはいかがでしょうか。

保険料の支払い期間で年金受給額はどう変わる?

それでは、受給資格期間を満たした場合、保険料を支払っていた期間によってどれだけ受給額が変わってくるのでしょうか。

年金受給額の計算式
「満額時の年金受給額」×【「保険料納付月数」+「全額免除月数×4/8」+「4分の3免除月数×5/8」+「半額免除月数×6/8」+「4分の1免除月数×7/8」】÷「加入可能月数(480月)」

例えば
・保険料納付月数が300月(25年)
・全額免除月数が36月(3年)
・半額免除月数が24月(2年)
の場合は

「77万9,300円(平成29年度における満額時の年金額)」×【「300月」+「36月×4/8」+「24月×6/8」】÷「480月」=54万5,510円

となり、65歳から年間54万5,510円の年金を受け取れるということになります。

受け取り開始時期などで受給額が変わることも

現在、年金受給の開始時期は65歳が基本ですが、より早く開始したい場合は、本人が希望すれば、60~64歳からでも受給が可能です。これを「繰り上げ支給」といい、本来の年金額よりも減額された額を一生受給することができる制度となっています(1カ月早めるごとに0.5%の率が減額。最大30%減額)。

一方、66歳~70歳の間で受給開始時期を遅らせることを「繰り下げ支給」といいます。こちらは、本来よりも増額された額を一生受給することができます(1カ月遅らせることに0.7%の率が増額。最大42%増額※昭和16年4月2月以後生まれの場合)。

年金の納付期間が短い場合、付加保険料を上乗せして納めることで受給額を増やすことも可能です。みなさんのライフスタイルに合わせて、考えてみてくださいね。

※写真と本文は関係ありません

著者プロフィール

塚本泰久
ツカモト労務管理事務所 代表社会保険労務士。
関西地区を中心に、地域に密着した事務所を目指しています。会計事務所出身であるという視点から、企業の宝である人財と企業会計のバランスに重点を置くことで、より強い企業の体制作りをサポートしています。「ツカモト労務管理事務所