会社員の多くは毎年1回、健康診断を受けている。30代、40代と年齢を重ねるにつれ、運動不足や過度の飲酒・喫煙などがたたり、返ってきた結果に愕然とするケースも増えてくることだろう。
複数ある項目の中で、多くの人が引っかかってしまうものの一つとして「血圧」があげられる。普段から塩分の多い食品や濃い味つけの食べ物を食べていると、どうしても高血圧になりがちだ。
高血圧はくも膜下出血や脳出血といった重篤な疾患のリスクファクター。世界保健機関(WHO)は、少なくとも脳卒中による死亡の51%、心臓疾患による死亡の45%は高血圧症が原因だと推定しているため、普段から血圧が高めと診断された人は、毎日の食事に注意を払う必要がある。
そんな人たちにお勧めな食材がこのほど、海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にて紹介された。具体的には、バナナやホウレンソウ、サツマイモといったカリウムを豊富に含む食べ物を摂取すると、高血圧の予防になるとのこと。最新の研究は、有益なミネラルは利尿薬と同じような効き目があるとしている。
血圧と食事習慣の関係を研究した南カリフォルニア大学のアリシア・マクドノー博士は、「血圧を下げるために既に確立されている方法としては、ナトリウムの摂取を控えることがあります。しかし、食事からのカリウム摂取量増加が、高血圧に対し重要な影響を与える可能性を示唆する証拠もあります」と語る。
研究者グループが患者の尿サンプルを分析したところ、ナトリウム摂取量に関係なく、カリウム摂取量が多ければ血圧が下がっていた。齧歯(げっし)類動物での研究を分析したところ、研究者たちは動物の体がナトリウムを使い、体内のカリウムを制御していることを見出した。
「食事でカリウムを大量に摂取すると、腎臓がより多くの塩分と水分を排泄するのです」とマクドノー博士は語る。
しかし、食事で多くのカリウムを摂取するためには、意識して努力しなければならない。「もし典型的な西洋食を食べていれば、摂取できるナトリウムは多くカリウムは少ないです。だから高血圧を発症する機会が格段に増えるわけです」とマクドノー博士は語る。
ちなみに米国医学研究所は2004年、血圧を下げるためには成人ならば毎日最低でも4.7gのカリウムを摂取すべきだと報告。この量をバナナに置き換えると11本分に相当し、1.5カップの黒豆を食べるとほぼこの目標量を達成できるという。
五訂増補日本食品標準成分表によると、カリウムは野菜では切り干し大根(3,200mg)、果実類では干し柿(670mg)、いも類では里芋(640mg)などに豊富に含まれている(すべて可食部100gあたりの数値)。血圧が高めな人たちは、毎日の食事で高カリウム食品を上手に摂取してみるといいのかもしれない。
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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。