予防接種のスケジュールを決めるときに、初めてその病名を知る人も多いであろう「ロタウイルス」。任意接種であるものの、接種期間が限られているのもあって、受けるかどうか悩むこともあるかもしれません。
そもそも、ロタウイルスとはどのような病気なのでしょうか。そして、感染予防としてできることは? 小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。
Q.ロタウイルスとはどのような病気ですか?
ウイルス性の胃腸炎で、その多くは突然の嘔吐と発熱で始まります。米のとぎ汁、またはヨーグルトのカスのような水っぽく白い下痢が出ることが多く、「白色嘔吐下痢症」と言われることもあります。
患者の70~80%は発熱を伴い、発熱による熱性のけいれんや肝機能障害、脳症などをまれに合併することもあります。重篤になると入院の必要がある場合もあるので注意が必要です。回復までにかかる期間は、大体1週間ほど。ノロウイルスと同様の症状が見られますが、ロタウイルスの方が子どもの患者が多く、重症になりやすいという特徴があります。
Q.病気にかかったら、どのような治療を受けるのでしょうか?
ロタウイルスの場合は特効薬がないため、対症療法をするしかありません。治療としては、脱水を防ぐため、点滴を行うなどして、症状の緩和を目指すことになります。
激しい嘔吐や下痢がある場合、水分を十分にとることができないと、脱水症状を引き起こすことがあります。特に赤ちゃんや子どもは、体に占める水分の量が多いので、気をつけるようにしましょう。
Q.家庭でもできる看病の方法はありますか?
とにかく水分補給を怠らないようにしてください。例えば1時間に5ccでも10ccでもいいので、スポイトを使って水分を口に含ませてあげるといいでしょう。乳児の場合は、母乳を飲ませてあげてもかまいません。
ポイントは、少量ずつ、回数を重ねて、水分をとらせてあげることです。ロタウイルスは胃腸炎なので、一度に多くの水分を与えてしまうと、子どもが吐いてしまうことがあります。
Q.ロタウイルスは任意の予防接種ですが、受けた方がいいですか?
ロタウイルスは感染しても免疫ができないので、一生のうちに何回もかかってしまうことがありますが、最初の感染時は特に重症化することが多いです。特効薬はありませんので、重症化を防ぐためにも、ワクチンの接種が非常に有効と言えます。
ロタウイルスのワクチンは、接種できる期間が限られているので、忘れないうちに速やかに受けるようにしましょう。任意接種のため金銭的な負担もありますが、私としては、接種をお勧めしたいと思います。
Q.ロタウイルスの感染を予防するために、他にはどんなことができますか?
石鹸での手洗いやうがいを徹底することで、外出した際に付着したウイルスの多くを落とすことができます。また、ロタウイルスは患者の便や嘔吐物など、ウイルスに汚染されたものに接触することなどから発症しますので、感染した疑いがある場合には、周囲への感染を防ぐために、処理の方法に気をつけましょう。
乳幼児でオムツを処理する必要がある場合は、必ず手袋をしてください。そして、ビニール袋に入れるなど、密閉した状態で適切に廃棄することが重要です。嘔吐物などで汚染された衣服などは、必ず次亜塩素酸の消毒剤を使って洗浄する必要があります。
症状が回復しても、およそ1週間は大量のウイルスが便に出ていると言われているので、十分に注意しましょう。
※未就学児童の症状を対象にしています
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竹中美恵子先生
小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。