子どもの病気、きょうだいや親への感染を防ぐには?

家族みんなが次々と感染症にかかってしまい、大変な思いをしたことがあるパパ・ママは少なくないでしょう。自分の病気とも闘いながら、子どもの病気の看病をする……とてもつらいですよね。

どうしたら、感染の拡大を止めることができるのでしょうか? 小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。

Q.冬から春にかけて特に家族感染しやすい病気は何ですか?

ロタウイルスやノロウイルスなどの嘔吐下痢症と、風邪などの気管支炎、そしてインフルエンザがあります。また、手足口病やマイコプラズマ感染症も家庭内で感染しやすいので、注意が必要です。

Q.病気の子どもを違う部屋に隔離するなどの対策は、やはり有効でしょうか?

隔離する前の段階で、既に家族間で感染しているケースも多いですし、1つの家庭内で、完全に隔離するというのは、かなり難しいことだと思います。同じ家の中で部屋を分けたとしても、家族が行き来することでウイルスが移動して、感染してしまう可能性があるからです。

感染症にかかって重篤になりやすいのは、免疫力が低い生後6カ月未満の乳児とお年寄りです。そういう人が近くにいる場合には、親戚の家など、一時的に別の家庭に隔離することができれば、感染を防ぐ効果は高いと思います。

Q.隔離できない時の有効な手だてはありますか?

まず、嘔吐下痢症の場合、嘔吐物と便にはたくさんのウイルスが含まれていますので、そこからの感染を絶つことが大切です。トイレは清潔に保つようにしましょう。

処理をする場合は、必ず手袋をして直接触れないようにしてください。嘔吐物は袋の中に密閉して処分し、服などに付着してしまったら、次亜塩素酸を希釈したもので、消毒しましょう。

Q.全ての感染症に有効な対策はありますか?

ウイルスは口や鼻から侵入するので、枕などのリネン類を清潔に保つことはもちろん、感染者が使ったタオルや食器は使わないほうがいいと思います。また、手に触れたウイルスが口や鼻から侵入するのを防ぐためにも、おもちゃを消毒するのは、一定の効果があるでしょう。ちなみに病院では、次亜塩素酸を50倍に希釈したものを、おもちゃにスプレーして感染対策を行っています。

さらに、忘れられがちですが、部屋の中の湿度を十分に保つことが重要です。ウイルスは湿気に弱いため、部屋の湿度が60~70%あれば、喉に付着するウイルスが減ると言われています。加湿器を使うのが便利だと思いますが、お鍋に水を張って沸騰させたり、ぬれたタオルを部屋にかけたりしても、効果があります。

Q.家庭内での感染に悩むパパ・ママに伝えたいことはありますか?

親が病気をしながらの看病はつらいですし、きょうだい間で感染すれば、看病の期間や対象が広がり、負担が大きくなるので大変ですよね。しかし一方で、子どもたちは病気にかかることで、免疫力を上げるという一面もあります。病気にかかればいいというわけではありませんし、防げるものは防いでほしいという前提はありますが、きょうだい間で感染することで、必ず子どもたちは強くなるのです。

どんなに防ごうと思っても、特にきょうだいを隔離して子育てしたり、病気の看病をしたりするのは、難しいことが多いでしょう。パパ・ママが無理せず、自分たちでできる範囲で感染対策をしてあげることが大切です。

※未就学児童の症状を対象にしています
※画像と本文は関係ありません

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。